ECB理事会を終えて 緊急措置であるPEPPを継続する意味
前回の記事はこちら
ECBのテーパリングはどうなる?欧州の金融政策の行方
https://real-int.jp/articles/946/
予期していたよりもタカ派と感じた私
ラガルド総裁の記者会見を終え、最初に私が感じたのは、予想よりもタカ派度が高い理事会だったということでした。
インフレも労働市場も景気回復についても、予想より強いと語り、特にインフレについては「サプライチェーンの逼迫が予想以上に長期化し、賃金が予想以上に引き上げられれば、モノの価格の上昇圧力は当初の予想よりしつこいものとなるかもしれない」そうです。
賃金上昇率が鍵?
これはユーロ圏に限ったことではなく、私自身も現在のインフレ上昇が一過性のものであるか?より恒久的なものとなるのかは、今後の賃金上昇率が最も注目されるべき要因だと考えています。
その意味でも、英国ではBrexitなどの特殊要因により、既に賃金が上がっており、油断は禁物です。それと比較すると、ユーロ圏はそこまでひっ迫感はないのかもしれませんね。
テーパリングではなく再調整
今回の理事会を前に、8月のインフレ率速報値が3%となったことを私は重視しており、ラガルド総裁をはじめとするハト派勢がどういう対応を示すのか非常に気になっていました。
結果としては、「Q4はPEPP( パンデミック緊急購入プログラム )の購入を減額する。ただし、これはテーパリングではなく、再調整という認識だ。」ということでした。当然、テーパリングという単語は使うはずがないでしょうから、ここは想定内ですね。
乱高下のユーロ/ドル
ユーロは最初、声明文の1番最初に書かれていた減額の部分に食いつき上昇し、その後すぐ下落に転じています。
どうして下落に転じたのか?いろいろ説はありますが、Q4に減額するということは、PEPPの1兆8500億ユーロの枠がまだまだ残るということです。つまり、場合によっては2022年3月の期日を延長し、「細く長く続ける魂胆」が見え隠れしているとマーケット参加者は受け止めたのかもしれません。
PEPPを延長する必要性は全く感じない
これはあくまでも私個人の意見ですが、ラガルド総裁の言葉を借りれば、ユーロ圏経済は今年の年末時点でパンデミック前のレベルに戻るそうです。そうであれば、緊急措置であるPEPPを継続する意味は、なくなります。
先ほど、「細く長く続ける魂胆」と書きました。もしかしたら、ECBはPEPPを予定通りに2022年3月に終了したとしても、APPの増額という選択肢を取る可能性があるのかもしれません。
もちろん、これについては12月の理事会で協議されるのでしょうが、なんとなくハト派理事達が「最後の安全弁」としてるAPPをPEPPの代わりに使ってくる気がしてなりません。
その場合、大きな問題となるのは「財政ファイナンスに抵触しないか?」この点に尽きるでしょう。
12月は面白い会合になりそうです。
2021年09月10日 のイーグルフライ掲示板より抜粋しています。