デルタ株拡大、アフガン情勢の混迷 「感染ゼロ戦略」を断念した 豪ドル円の行方は?
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デルタ株拡大、アフガン情勢の混迷
「感染ゼロ戦略」を断念した豪ドル円の行方は?
バイデン政権の失策
アフガン戦争については、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
タリバン復権アフガン戦争終結で激震?
https://real-int.jp/articles/930/
いまは、コロナウイルスやアフガニスタン情勢など、世界で混乱が起きているので、リスクオフで株が落ちるなど、AだったらBということではないこともあります。物事が複雑に絡み合っているため、もの凄く大きい出来事が起きるかもしれません。
アフガニスタンの首都カブール陥落は 、1975年のサイゴン陥落を想起させます。サイゴン陥落以降の50年の歴史は振り返っておいたほうがよいでしょう。
バイデン氏に政権が移ってからまだ8か月ですが、今回のことでバイデン氏の評判は落ちています。
本来であれば、西側は連携してアフガニスタンからの撤退にあたらなければならないのですが、イギリスのボリス・ジョンソン氏がバイデン氏に連絡を取ろうとしたら36時間も連絡が取れなかったことが新聞でも報道されました。バイデン氏は、どうしたらよいか判断できなかったので、電話に出られてなかったという説が出ています。
また、カブール空港では米軍に協力したアフガニスタンの人が脱出しようとして混乱していますが、タリバン側からすると、「 西側はもっと良い避難計画を立てられたはずだ。混乱はタリバンの責任ではない。」と言い方をされています。
アフガニスタンからの米軍の撤退期限は8月31日になっているので、今後数日が命運だと思います。
バイデン支持率の急降下
世論調査は割と民主党寄りで、バイデン氏の支持率が高く出る傾向があるのですが、中立のRasmussenでもDisapprove(支持しない)ほうが多くなっています。 USA Todayという民主党寄りの新聞でも、バイデン氏を支持しないほうが高くなっていてこれは驚きです。
また、 副大統領のカマラ・ハリス氏はインドネシアとシンガポールを歴訪していて、こんな状況の時に何をやっているんだという批判もあります。
米ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏は、「駐留米軍の撤収は、バイデン米政権が初めて直面した外交上の危機となった。」と言っています。
ジャクソンホールへ米10 年債利回り-day
アフガニスタン情勢のほかにも、今週は重要なジャクソンホール会合があります。
ここではパウエル議長が出席して、そこでアメリカのテーパリング(金融緩和の縮小)が報道され、金利が上がってドルが上がるのではないかと言われています。
アメリカではインフレで、ビックマックも、マンションも、中古自動車も物価が上がり、金融緩和の縮小をしなければならない状況になっていました。ただ、ここにきてアフガニスタン情勢やデルタ株の拡大で情勢が悪化したことで、金利がどんどん下がってきています。
米10 年債利回り-day
シティバンクで長年ドル円の金利をやっていたアメリカの友人は、10年債の金利は1.126%がダブルボトムになっている可能性が高いと言っています。
なぜ、為替のところで金利のことを言うかというと、ドル円と金利の相関性が非常に高いからです。10年債金利が上がってくると、ドル円も上がってきています。金利が1%から上がってきたところから、ドル円も110円にあがってきました。
ドル金利が下がっている時にはあまり反応しませんが、上がるとあっという間にドル円も上がるということが多いです。
アフガニスタン情勢もあるので、ジャクソンホールでは大きな動きはないかもと言われていますが、念のためパウエル議長の動きには注意しておいたほうがよさそうです。
主要通貨の10年債利回り
今週、リスクオンになっている要因はもうひとつ、オセアニアです。オーストラリアの金利は2%近くまであったのですが、そこから1.19%まで下がっています。
豪ドルと密接に結びついている鉄鋼石も、先週崩れだして一時140ドル割れとなりました。先週はアフガニスタン情勢もあったので、金利が下がって、豪ドルが下がったという流れでした。
RBNZの金利据え置き(OIS では0.5%の利上げ予測)
ニュージーランド(NZ)では0.5%利上げの予定でしたが、コロナ感染者が1名出たことによりロックダウンしたので、金利も据え置きとなりました。ニュージーランドのアーダーン首相 は「Delta is a game changer.」と言っています。
これまでの「covid zero戦略」を続けていると、いつまでたってもロックダウンを続けていないといけないわけで、これだと経済はまわりせん。
デルタ株の前までは、オセアニアのcovid zero戦略はうまく回っていました。デルタ株以降、戦略を変更し、covid zeroではなく、ワクチン接種率でロードマップを書き直すなど、違った戦略を取るのは当然のことだと考えます。
オーストラリアのモリソン首相は、「covid zero戦略」を止めると宣言し、一気に豪ドルが上がりました。ニュージーランドドルもコロナ戦略を転換するだろうということで、ともに上昇。豪ドルが上がると、リスクオンになって株まで上がってきたので、この戦略の変更は世界中が注目しています。
豪ドル円に注目
AUDJPY week
アメリカ10年債の金利は、仮にダブルボトムの1.126%を割れても1%を割れることはないと思っています。為替や株はオーバーシュートしますが、金利はそんなにオーバーシュートしません。
NZは今回は金利を上げるのを止めましたが、コロナが拡大しなければ10月に0.5%に上げるのは決まっています。それも既に織り込んでいるので、NZドルに対しては強気ではないです。NZは小さな国なので、アメリカからインフレが輸出されてくるとすごく困るので早めに利上げをしようということです。
カナダも同様で、カナダが金融緩和縮小を急いだのは、アメリカからインフレが入り込んでくるので、先にやってしまおうということです。
日本にいるとピンと来ないと思いますが、僕がシンガポールに住んでいた時、家賃は上がったり下がったりしていて、インフレになると物価は一気に上がっていました。日本は低位で上がらない状態が20年以上続いているので麻痺していますが、海外はインフレになります。
今のインフレ率から考えると10年債金利は低いので、結局上がるだろうと思っています。仮に10年債金利とドル円の相関が高ければドル円は落ちないでしょう。
オーストラリアも感染者ゼロ作戦を止めて、 モリソン首相 は 「国の焦点は、感染者数よりも入院率(hospitalization rates )に移す必要がある」とコメントしています。 豪ドルは見直されて、豪ドル円も上がるだろうと考えています。
77円はなかなか越えなかったのでのですが、越えてからは77円より上にいます。先週78円を割れたところで、メルマガにも書いたのですが、たぶん落ちないだろうということで先週金曜日から豪ドルを買い始めて、月曜日にCovid zeroを止めると言ったので買い増しています。
アフガニスタン情勢はわからないところがあるので、週末は大きくリスクは取れないですが、それを除くと豪ドルは先週でボトムダウンのセリングクライマックスで上がるだろうと思っています。
色々な事件があって消化しきれていないですが、ニュースで大きく相場が動く可能性があるので、チャートだけでなくファンダメンタルズも追いかけていったほうが大きなチャンスを掴める可能性もあるでしょう。