米労働市場でも供給制約が起きている
雇用者数は増加しているが、なおコロナ前の水準を約500万人下回る
7月の米雇用統計によれば、非農業雇用者数は94.3万人増と前月(93.8万人増)に続き、2か月連続の大幅増加になった。業種別には娯楽・宿泊業が38.0万人増と急増し、政府部門も24.0万人増となった。失業率は5月の5.8%から6月は5.9%とやや上昇していたが、7月は5.4%と低下し、雇用増加と見合った動きになった。
米国の雇用統計には、事業者に対して雇用者数や賃金の動向を調査する事業所調査と一般家計に対して就業・失業の状態を調査する家計調査があり、家計調査はサンプル数が少ないため、やや統計の精度が低い。
6月は事業者調査による非農業雇用者数が93.8万人と大幅増加したが、家計調査による就業者数は1.8万人減少、失業者数が増加し、失業率も上昇していた。6月は、いわば統計誤差による失業率上昇だったと言える。
今回の7月統計では、事業所調査による非農業雇用者数同様、家計調査による就業者数も104.3万人増と大幅に増加、失業率が大幅に低下して、景気の強さを示す数字になった。
ただ、2か月連続の雇用者数急増になったとはいえ、雇用者数の水準はなおコロナ前の2019年末の水準を510万人下回っており、元通りになっているわけではない。
FRBが金融緩和を続けているのは、その雇用を元に戻すためだ。そして、雇用が元通りになっていないのは、労働者に対する需要が少ないわけではなく、供給面に問題があるためだ。
経済活動再開に伴い、求人が急増している(図1参照)。これは労働需要が増加していることを示す。
ところが、実際に採用されている人はさほど増えていない。供給面での制約があるためだ。労働需要が増加しているのに労働供給が少ないため賃金が上昇している。7月の時間当たり賃金は、前月比0.4%上昇(6月も同0.4%上昇)し、前年比では4.0%上昇した。
失業保険上乗せ措置は撤廃されつつある、コロナ忌避による非労働力化は高水準
労働市場における供給制約の原因は2つ。
1つは、失業保険給付上乗せ措置だ。低賃金労働者の場合、失業保険上乗せ措置により、働いた場合の賃金より失業保険の方が多くなり、働く意志が阻害されている。
バイデン政権は、3月の追加経済対策で週300ドルの失業保険給付上乗せを9月まで延長することを決めた。
ただ、共和党は失業保険給付上乗せ措置が、労働者の仕事への復帰意欲をそいでいると批判を強めており、共和党が知事を務めるテキサス州、オハイオ州など多くの州政府は、上乗せの早期撤廃を決めている。
バイデン政権が決めた上乗せ措置延長の期限である9月を待たずに、徐々に失業保険給付上乗せ措置は撤廃されている。それが最近の雇用増加に結び付いているとも言われる。
供給制約のもう1つの要因はコロナ忌避だ。感染への懸念から職場復帰をためらっている人、あるいは子供の保育施設の閉鎖などによって就業できなくなっている人などが多く、それが労働供給を抑制している。
感染懸念などから復職できない、あるいは復職をためらっている人々の動きは「非労働力人口」の数字に現れる。
2021/8/10の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。