木曜日に向けて注目の動きは?
1.木曜日に向けて スコットランド総選挙
木曜日はいろいろなイベントが英国で実施されます。
まず最初はスコットランド総選挙。英テレグラフ紙によると、出口調査結果の発表はないようですので、大きな動きが出るのは、金曜日の昼くらいでしょうか。
英国連合王国の将来が掛かっているという意味では、木曜日のイベントの中でも最重要イベントとも言えます。と言うのも、スタージョン首相率いるSNP党は、どうしても議会の過半数(65議席かそれ以上)取りたいでしょうし、それが達成できれば、スコットランド独立に向けた2回目の住民投票実施に向けて動けるからです。
ただし、あくまでも中央政府(ボリス)がYESと言うという条件付きですが、SNP党の議席数が多ければ多いほど、中央政府が仕方なく認めるか?スコットランド政府が英最高裁に判断を求めるかの動きが続くでしょう。
逆に、SNP党が65議席に届かなかった場合・・・ これはある意味、予想外すぎて困ります。
ポンドの動き
SNP党が過半数議席獲得=ポンド売りになると私は思っています。
ただ、65議席ギリギリ過半数か?それとも、69議席以上獲得して、本当にスコットランドの有権者は独立したいんだな!ということが伝わってくるような数字になるのかで、ポンドの動きにも差が出ます。
「スコットランド独立=ポンド売り」というのは、英国連合王国の分裂という意味でネガティブなのですが、イングランドのトレイダーの間では、中央政府が「金銭的に養う国」がひとつ減るので、長い目で見ればポンドにはポジティブという、至極全うな意見もあります。
もしSNP党が65議席取れなかった場合、これはポンドにポジティブでしょうが、SNP党が取れなかった議席を、どの党が獲得したかで、反応は違ってくると思います。もし保守党が予想以上にスコットランドで善戦すれば、ポンドにはよりポジティブになると考えています。
或いは、SNP党は65議席以下となっても、緑の党と連立を組むのであれば、ともに独立賛成政党同士ですので、住民投票実施の方向で動きだすでしょう。
2.木曜日に向けて 補欠選挙と地方選
2つ目は、イングランドでの地方選、ロンドン市長選、補欠選などについてです。個人的には注意点は2つ考えています。
まず最初は、イングランド北東部のHartlepoolでの補欠選挙。
木曜日のイングランドでの選挙は地方選ですが、Hartlepoolだけは国政ですので、やはり注意したいです。世論調査結果が正しければ労働党から保守党に議席が移ることは確実ですので、ボリスが抱えている政治危機への注目が若干弱まることにもなるかもしれません。
もう1つは、ロンドン市長選です。
これは私がロンドンに住んでいるから という訳ではなく、例えば金融街:シティーや金融サービスに積極的な市長が誕生すれば、ポンドにはポジティブになる可能性があると考えているからです。
ただ、スコットランド総選挙ほどポンドを動かす要因にはならないでしょう。
3.木曜日に向けて 英中銀Super Thursday
最後は、木曜日の英中銀Super Thursdayです。ある意味、これが1番予想しづらいです。
マクロ経済予想
まず最初の注意点は、3ヵ月に一度のマクロ経済予想 「四半期金融政策報告書」で、GDPやインフレ率、失業率がどのくらい改善されるか?
経済/労働市場の緩み
次は、声明文と総裁/副総裁の記者会見での現時点での英国経済/労働市場の緩みについての言及。
ちなみに1番最新の3月18日MPCで発表された声明文では、
https://www.bankofengland.co.uk/monetary-policy-summary-and-minutes/2021/march-2021
「The LFS unemployment rate rose to 5.1% in the three months to December, but it is likely that labour market slack has remained higher than implied by this measure.
労働市場の緩みは、失業率の数字で表わされている以上に深刻であると考えられる」
と書かれています。明日の声明文でのこの部分の表記が変わっているかが、重要でしょう。
テーパリング
そして、最も大きな関心事は、テーパリングの発表の有無でしょう。マーケット参加者にとっては、「カナダの次」を探す作業ですが、英国に住む私達にとっては、若干ニュアンスが違います。
と言うのは、今年2月4日のSuper Thursdayで、ラムズデン副総裁は、「年末までには資産購入プログラム(QE)を完了する可能性が高い。年内のどこかの時点で、国債購入ペースを遅くする必要がある。」と警告しているからです。
https://www.reuters.com/world/uk/boes-ramsden-says-track-complete-qe-programme-by-year-end-2021-02-04/
繰り返しになりますが、年内に購入ペースを遅らせることになると副総裁自ら仰っているので、英中銀にとってのテーパリング発表は「もし」ではなく、「いつ」と受け取れます。
そして、国債購入枠 8750億ポンドのうち、7980億ポンド使用済み (残りは770億ポンド)であれば、今まで通りのペース(約180億ポンド/月)で購入を続けていたら、年内に終らせるというより、夏の終わり/秋までに終ってしまい、数合わせが出来ません。
そのためロンドンから見える景色は、「テーパリング=タカ派の政策」という決め付けは危険で、「そろそろやらないと数合わせ(年末までに終了)が出来なくなる」という数字の問題に感じています。しかし、世界中の投資家にとっては、やはり「テーパリング=タカ派」という発想になるのは仕方ないでしょうね。
いろいろ書きましたが、もし今回のSuper Thursdayでテーパリングを発表するのであれば、①でご紹介したマクロ経済予想では、テーパリングを裏付ける強い数字になるはずです。そしてその数字が強くなるということは、金融政策引き締め時期を探る動きにも繋がるでしょう。
そして②でご紹介した声明文での「経済/労働市場の緩み」も徐々に縮小しているというニュアンスの文言に変更されていないと、辻褄が合わなくなるように思います。
あとは、インフレ見通しに関する言及ですね。アメリカやヨーロッパのように、「一時的要因によるインフレ上昇」であり、来年に入れば落ち着いてくるのか?今後もこの傾向が続くのか?そのニュアンスにも注意したいと思っています。
ポンドの動き
英国に住む我々が考えるような「年末までの数合わせ」としてのテーパリングであれば、ポンドにはニュートラルですが、やはりマーケットは、「カナダの次」という見方をするでしょうから、発表があればポンドにはポジティブに受け止められるでしょう。
マクロ経済予想の改善も、ポンドにはポジティブ。逆に、マクロ経済予想があまり変化していなかったり、これだけワクチン接種が進んでいるにも関わらず、英中銀が景気先行き見通しに自信を示さない場合は要注意かもしれません。
テーパリングについての発表は、個人的には50/50だと考えています。