FXでレバレッジをかける危険性とは?リスクを抑えて効率的に運用しよう!
★今回のポイント!
- レバレッジを大きくすると、利益だけでなく損失のリスクも高まる
- レバレッジをかけすぎると、急激な為替変動などでロスカットが間に合わないことがある
- レバレッジと上手に付き合うには、資金管理とトレードルールが重要
FXでレバレッジをかけた取引をする危険性とは?
FXでレバレッジをかけると、どのような危険性があるのでしょうか。1回のトレードで大きな損失を出したり、FX会社によって強制決済させられたりする前にリスクを知っておきましょう。
損失が大きくなりやすい
レバレッジとは「てこの原理」の意味で、手元資金の何倍もトレードできる仕組みです。大きな利益が期待できる反面、予想とは逆の方向に相場が動くと損失も大きくなります。
証拠金10万円で1ドル100円のときにドルを買った後、1ドル99円に下がった場合に、レバレッジによる損失の違いをまとめたのが以下の表です。
レートが1%動くと、レバレッジ1 倍では証拠金の1%しか減りませんが、レバレッジ10倍では10%、レバレッジ20倍では20%も減ることがわかります。レバレッジには、このような特徴があることも知っておきましょう。
株において信用取引は、一般の人が手を出してはいけない危険なものといわれていました。それでも、レバレッジは最大約3.3倍に過ぎません。一方、FXにおいては日本では最大25倍ものレバレッジをかけられます。はじめての投資がFXであることもめずらしくなくなってきましたが、リスクについてはしっかり理解しておきましょう。
ロスカットのリスクが高まる
レバレッジをかける際に預ける必要証拠金は、為替レートによって変動します。たとえば、1ドル100円のときに、レバレッジ1倍でドルを1万通貨買うのに必要な証拠金は100万円、10倍かければ100÷10=10万円です。
ポジションを取った後は、為替レートの変動によって含み損または含み益が発生します。この損益が反映された証拠金は「有効証拠金」と呼ばれます。
有効証拠金=口座残高+評価損益
有効証拠金を必要証拠金で割ったのが証拠金維持率です。
証拠金維持率(%)=有効証拠金÷必要証拠金×100
FX会社は、この証拠金維持率が何%に下がったらロスカットが発動するか、それぞれルールを決めています。日本では100%か50%が一般的です。
証拠金維持率50%でロスカットになるFX会社で、口座資金のすべてを証拠金にして10万円で1ドル100円のときにドルを買った例を考えてみましょう。この場合、ロスカットになる有効証拠金はレバレッジに関なく、5万円になったときです。
たとえば、レバレッジ10倍なら100万円にあたる1万通貨を買っているので、5円×1万通貨=5万通貨でロスカットが発動します。レバレッジに応じてロスカットになるレートの違いを以下の表に示します。
FXのレバレッジで借金が発生する危険性もある?
ロスカットの仕組みによって、FXでは基本的には預けた証拠金を超える損失は発生しません。しかし、まれにロスカットの発動が遅れることがあり、特にレバレッジを大きくかけていた場合、借金が発生する危険性もあります。
急激な為替変動によりロスカットが間に合わないケース
急激な為替変動が起こると、ロスカットの発動が間に合わない危険性があります。たとえば、注文が殺到して取引相手がいない場合や、FX会社の注文スピードが間に合わない場合、スプレッドが広がった場合などいろいろなケースがあるでしょう。
「ロスカットのリスクが高まる」のところでも説明したとおり、レバレッジをかけるほど、ロスカットが発動するまでの値幅が狭くなります。そして、ロスカットが発動されるはずだった価格と約定された価格の値幅がさほど離れていなくても、損失が大きく拡大する可能性もあるのです。
2015年のスイスフランショックでは、わずか数分で1ユーロ=1.20フランから0.86フランと30%近くの急落が起こりました。1ドル100円が数分で70円になったと想像すると、そのすさまじさがわかるのではないでしょうか。多くのトレーダーが証拠金を上回る損失となり、追加証拠金(追証)を求められる事態になりました。
システムトラブルにより決済できないケース
為替相場の急変により注文が殺到した場合に、FX会社のサーバーがシステムダウンしてしまうトラブルも起こりえます。システムトラブルが発生すると、ロスカットが発動されず大きな損失となる危険性があります。
過去にはFX会社のシステム異常のほか、サイバー攻撃によってサーバーがダウンしたケースもありました。まれなケースですが、大手といわれるFX会社でも発生しているため、リスクとしては想定しておかなければなりません。ただし、過去にはFX会社が責任をとり、損失が補償されたケースもあります。システムトラブルによって損失が発生した場合の補償内容を確認しておきましょう。
FXでレバレッジの危険性を回避するには?
FXで着実に資金を増やしていくためには、レバレッジを正しく活用することが必要です。ここではレバレッジによるリスク回避のポイントを紹介します。
レバレッジを高く設定しない
シンプルに考えるなら、「レバレッジをかけるほどリスクが高くなる」としてもかまいません。ですので、特に初心者のうちは、レバレッジを低く抑えることが大切です。最大でも10倍、できれば3~5倍程度に抑えると低リスクです。レバレッジのリスクをゼロにしたい場合は、1倍で取引すれば、手数料の安い外貨預金とほぼ変わりません。
レバレッジで考えると実感がわかない場合は、そのレバレッジで取引したときに、損失がいくらになるのか、大体でよいので計算してみましょう。もし10回連続で負けた場合に生活に支障が出たり、夜も眠れない状態になったりする額なら、レバレッジをかけすぎている可能性が高いです。
損切り注文を入れておく
いくらレバレッジを低く抑えても、損切りのタイミングを逃してしまえば、想定した損失よりずっと大きくなることがあります。現物株式の買いなら、いわゆる「塩漬け」にして放置することもできなくはありません。しかし、レバレッジをかけたトレードでは、その前にロスカットが発動してしまいます。
基本的に、ロスカットが発動されるということは、口座資金が大幅に減ることを意味します。エントリー前には、ロスカットラインよりかなり手前に必ず損切りラインを決めておき、少額の損を受け入れましょう。損切りを徹底するためには、逆指値で損切の注文を事前に入れておくのが効果的です。
「損切り価格を移動する」「ナンピン(ポジションを増やして平均購入単価を調整すること)する」「損切りを外し、価格が反転することを祈る」などの行為は損失を増やす可能性があります。こうなる傾向がある人は、逆指値注文を確認した後、チャートを見ないようにしたほうが安全です。
為替変動が激しいときはトレードしない
為替変動が激しいときは、損失を出す危険性が高まります。このような状態では相場参加者全体が冷静さを失っているため、テクニカル分析やファンダメンタルズ分析の定石が機能せず、不規則な動きになりやすいからです。
為替変動が激しくなる要因としては、金利の変動や要人発言、経済指標の発表などがあります。雇用統計や各国の中央銀行の会合、選挙など、事前にスケジュールがわかる場合もあるので、日ごろからニュースやSNSなどで情報収集することが大切です。
ただし、為替変動が激しくても、経済指標の発表後にある程度時間が経過すると、変動幅が大きくても規則的な動きになることがあります。ボラティリティ(価格変動)はトレーダーにとって収益の源泉です。これがあることで、損小利大が実現できるのです。
もし、このようなチャンスにロスカットを恐れるあまりトレードできないなら本末転倒です。レバレッジを常に大きくしていると、動きがあって簡単なトレンド相場で怖くてトレードできなくなる可能性もあります。
根拠のないポジションは持たない
FX取引に慣れてくると、勝てる根拠がないのにポジションを持ちたくなる人もいます。いわゆる「ポジポジ病」です。もしFXを始めたばかりで、パソコンやスマホを開くやいなやエントリーしたくなるなら、ギャンブル依存症に似た症状といえるかもしれません。
また、プロスペクト理論によると「人間は損失が出ているときほどリスクを好む」と考えられています。もし負けが続いた後にこのようになるなら、そのような傾向が強く出ている可能性があります。
相場は常に取引に優位な状況とは限りません。損失となる危険性を回避するためには、根拠のないポジションは持たず、優位な状況でのみエントリーすることが大切です。
週末のポジション持ち越しを避ける
FXでは、週末と週明けで相場が一変することがあります。そうなると、ギャップ(前取引日の終値よりも当日の始値が高く、または安く寄り付くこと)が生じ、大きな損失になる危険性があります。週明けの相場を予想できないときは、週末に決済しておいたほうが無難といわれるのはそのためです。
特にデイトレードをしたものの、損切りにも利益確定にもならなかったので、そのまま放置するようなことはやめたほうがいいでしょう。デイトレードの損切り幅とは比較にならない大きなギャップ(窓)が生じるリスクがあるからです。
中・長期運用の場合でも、相場を予想できない場合は一旦ポジションを解消しておき、週明けに様子をみて再度エントリーします。また、週末に逆方向に同量のポジションを立てる方法(両建て)もあります。
FXでハイレバレッジをかける場合に心がけたいこと
レバレッジが高いほど、大きな損失を出すリスクが高まるのは間違いありません。しかし、そのなかでも、リスクをコントロールできる要素はあります。ここでは、ハイレバレッジでトレードする際に心がけておきたいポイントを紹介します。
自分のトレードルールに従う
トレードにおいては、損失額は事前に自分のルールで決められます。ハイレバレッジの取引でも、自分のトレードルールに従うことができれば、リスクを抑えられる可能性が高いです。
利益確定ポイントだけでなく、許容できる最大損失額や損切りポイントをあらかじめ決めておきましょう。もし、レバレッジをかけすぎて、納得できる損切りポイントで損切りできないなら、レバレッジを落とすことも検討しなければなりません。
また、勝率や損益率を計算し、トータルで勝てるようにすることも大切です。特に、過去の連敗数やドローダウン(一時的に最大資産からの下落率)を知っておくことは重要です。優位性の高いトレードをしていても負けてしまうことはあります。そうした確率的な負けに耐えてトータルで資金を増やせるのか、レバレッジやトレードルールをチェックしましょう。
注文方法を使い分ける
ハイレバレッジの場合、損切りをためらったことが命取りになることがあります。特に時間軸が短いデイトレードやスキャルピングなどの手法でハイレバレッジをかける場合は、注意が必要です。
ハイレバレッジをかけるなら、ポジションを持った時点で、FX会社の自動注文で損切りを入れておくのが賢明です。以下のような注文方法を利用しましょう。
Ø IFD注文:新規ポジションのための指値または逆指値と一緒に、この注文が執行された後の損切注文を設定しておける。利益確定の注文も可能だが、ハイレバレッジの場合は損切りを設定しておこう。
Ø OCO注文:ポジションを持っているときに、利益確定の指値注文と、損切りの逆指値注文をセットで注文できる。含み益が出ている場合は、損切りの逆指値を、最低限確保したい利益確定のラインに引き上げることも可能。どちらかが執行されれば、注文は完了となる。
Ø IFO注文:IFD注文とOCO注文を合わせたような注文方法。新規ポジションのための指値または逆指値と一緒に、この注文が執行された後の利益確定の指値と損切りのための逆指値を設定できる。
海外のFX会社は避ける
日本のFX会社のレバレッジは、日本の法律によって最大25倍と決まっています。一方、海外のFX会社にはレバレッジ規制がありません。200倍や400倍、なかには1000倍のレバレッジをかけられる業者もあります。しかし、レバレッジの倍率を上げすぎると、大きな損失を出す危険性も高まるため、十分注意が必要です。
ただし、海外のFX会社は通常「ゼロカットシステム」があります。つまり、預けた資金以上の損失が生じない(追証が発生しない)ルールが採用されています。このため、ギャンブルトレードをするために海外のFX会社を利用する人は後を絶ちません。
海外のFX会社には、以下のように日本のFX会社にないデメリットもあります。
・信託保全の義務がない(出金トラブル、FX会社の倒産などが起こっても自己責任)
・出金手数料と税金が高いことが多い
・日本語に対応していない
そのため、特に投資初心者は日本のFX会社を選ぶことをおすすめします。
メンタルトレーニングをする
ハイレバレッジでは取引額も大きくなるため、メンタル面を鍛える必要があります。つまり、自分のトレードルールに従い、買ったあとも負けたあとも、冷静に淡々とトレードを続けていくメンタルが必要です。ハイレバレッジのトレードの資金変動は激しいですが、一喜一憂せず、トータルで利益を出すことに集中することが求められます。
お金を前にした人間には「プロスペクト理論」が働くことが知られています。FXに置き換えると「含み益より含み損に敏感に反応する」「すぐに利益確定したくなる」「含み損または損失が出ると、それを回避しようとしてより大きなリスクを取る」というものです。
ハイレバレッジにおいてはメンタルが揺さぶられるため、こうした不合理な行動が表れやすいといえるでしょう。こうした傾向は意志力によって克服するのは難しいので、ルールを守ることを習慣付けるしかありません。寝る前に歯磨きをするのに強い意志を必要としないように、ルーチンのようにトレードを完結できるようになるのが理想です。
レバレッジをかけて効率的に資金を増やすには?
レバレッジをかける目的とは資金効率を高めることです。ここでは、リスクをコントロールしつつ効率的に資金を増やすポイントを紹介します。
通貨ペアを選ぶ
レバレッジをかける場合に注意しなければならないのは、予想外の損失が出てしまうことと、不規則な動きで損切りになったりポジションが解消されたりすることです。そのため、以下のような条件の通貨ペアが向いています。
Ø スプレッドが狭い:不利な価格で約定して予想外の損失が出てしまうことが少ない。また、スキャルピングやデイトレードでは取引コストを抑えられやすい。
Ø 流動性(取引量)が高い:一度トレンドが発生すると、一方向に堅調に伸びやすい。
逆に、以下のような通貨ペアはリスクが高いため避けたほうが無難です。
Ø 値動きが激しい:EU離脱によって不確定要因が多いポンドや政情不安定な新興国の通貨は大きな損失につながる可能性がある。大きな利益が出る場合もあるが、素早い判断が求められるので初心者には不向き。特に、流動性が低く、値動きが激しい通貨ペアは避けたほうがよい。
初心者の場合は、米ドル/円、ユーロ/円から挑戦してみましょう。スプレッドが狭く、流動性も非常に高いのが特徴です。逆に、ポンド/円は不向きです。また、スワップポイント狙いの長期運用は別として、トルコリラ/円やメキシコペソ/円、南アフリカランド/円もレバレッジをかけた短期取引ではリスクが高いといえます。
レバレッジの倍率を決める
レバレッジは、「取引金額÷証拠金」で決まります。たとえば、10万円の証拠金で100万円の取引をする場合はレバレッジ10倍です。「レバレッジ○倍で取引する」というような設定はFX会社にはないので、自分の余剰資金やトレードスタイルに応じて自分で倍率をコントロールしていきます。新規注文を発注する際に「余力が足りません」などと表示されたことのある人は、要注意といえるでしょう。
ただ、取引ごとにレバレッジの倍率から逆算するのは少し面倒です。「この証拠金で何万通貨所有すると、レバレッジはいくら」といちいち考えなければなりません。もっと簡単なのは、損切り価格をいくらにするか考えて、そこからリスクを取ってもよいレバレッジ(取引する通貨量)を決める方法です。
レバレッジは個人の資金の事情なので、相場で優位性のあるトレード戦略を立てることとは根本的に関係ありません。損切り価格からレバレッジ倍率を決めたほうが、簡単なうえに勝率が高いトレードをしやすくなるでしょう。
利益確定・損切りポイントを決める
資金管理を徹底するためにも、エントリー前に利益確定と損切りのポイントを決めておきましょう。特に、短時間で売買するスキャルピングやデイトレードをする場合は、瞬時に判断する必要があるため、あらかじめルールを決めておくことが重要です。秒単位のスキャルピングなどでないかぎり、エントリーと同時に損切り注文を入れましょう。
エントリー前に利益確定と損切りのポイントを決めることは、リスクリワードを意識したトレードができる点でもメリットがあります。たとえば、損失が10pipsで利益が20pipsなら、リスクリワード比は1:2です。トレードする場合には、最低でも1:1、理想的には1:2以上が良いとされています。もし、1:1以下ならエントリーするべきではありません。
ただし、リスクリワード比は大きくなるほど勝率が悪くなり、ドローダウンも大きくなります。レバレッジを大きくする場合には、リスクリワード比が高すぎないかチェックすることも必要です。
レバレッジの危険性を理解してリスクを抑えたトレードを!
FXのレバレッジは、資金効率をアップさせる効果もあれば、損失を拡大させてロスカットを発動させることもある諸刃の剣です。投資初心者の場合、3~5倍程度に抑えて資金を守りつつ、トレードスキルを高めていくことをおすすめします。
為替変動が激しい通貨ペアや、重大な経済指標などの発表前後、週明けへのポジション持ち越し、信託保全がない海外のFX会社などを避けるのも無用なリスクをなくす方法です。損切りルールを徹底するために、FX会社の自動注文機能を活用するのもよいでしょう。
ハイレバレッジをかける場合は、こうした工夫を取り入れながら、しっかりとリスクコントロールすることが必要です。