FXのロスカットで大損しないために!リスクを回避する方法とは?
この記事では、FXのロスカットとは何か、ロスカットで大損してしまう人の特徴、ロスカットで大損しない方法などを解説しています。堅実に資産を増やしたい人は、ぜひ役立ててください。
今回のポイント
- ロスカットとは、FX会社によって強制的に決済される仕組み
- ロスカットルールはFX会社によって違う
- ロスカットで大損しないためには、資金管理・損切り・メンタル管理が重要
- ロスカットにならないために、FX会社の自動注文機能も活用しよう
FXのロスカットとは?どんなときに発動される?
FXではロスカットという言葉をよく聞きます。ここでは、FX会社が強制的に行うロスカットの仕組みとは何か、どのようなときに発動されるのか具体的な例を挙げながら紹介します。
FXのロスカットとは
FX会社は、会社の利益を守るため、また利用者が大きすぎる損失を被らないために、一定水準まで含み損が増えたときに強制的に決済する仕組みを設けています。これが「ロスカット」です。
FXでは現物株の取引などと違い「レバレッジ」をかけられるため、想定と逆方向に相場が動いたとき、預けた資金以上の損失が出ることがあります。日本のFX会社では最大25倍のレバレッジ取引が可能です。つまり、4万円の資金があれば「4×25倍=100万円」に相当する通貨の取引ができます。そのため、あまり大きなレートの変動がなくても、資金以上の損失が出ることもめずらしくありません。
しかし、ロスカットがあることによって、ほとんどの場合、入金した証拠金以上の損失は出ないことになります。ただ、急激にレートが変動した場合はロスカットの発動が遅れてしまい、預けた資金以上の損失が出ることもあります。
※「ロスカット」は、トレーダーが任意に損失を確定させることにも使われる言葉です。この記事では、FX会社が損失を確定させることをロスカット、トレーダーが行うことを「損切り」として区別します。
ロスカットの仕組み
ここでは、ロスカットの仕組みを理解するうえで知っておきたいキーワードを紹介します。
必要証拠金:
FX会社に取引用の資金として入金したお金のこと。この金額に応じて取引可能額が決まる。たとえば、最小取引単位1万通貨のFX会社で、25倍のレバレッジをかけた取引をするのに必要な証拠金は「為替レート×1万通貨×4%)」(※4%=1÷25)
有効証拠金:
口座の残高にトレードによって生じた評価損益を反映した証拠金のこと。
証拠金維持率:
必要証拠金に対する有効証拠金の割合(有効証拠金÷必要証拠金)のこと。証拠金維持率が一定の水準を下回るとロスカットが発動または執行される。
ロスカットが発動されるケース
ロスカットが発動される基準は、FX会社やレバレッジによって異なります。仮に、レバレッジ25倍のときに証拠金維持率の50%のときに、ロスカットが発動されるケースを解説します。
- レバレッジを25倍かけ、1ドル100円のときに「100円×1万通貨×4%=4万円」の必要証拠金を入れて1万通貨のドルを買う
- 思惑に反して、1ドル100円→98円となってしまい、「(100円-98円)×1万通貨=2万円」の含み損が出る
- 有効証拠金は「4万円-2万円=2万円」となり、証拠金維持率は「有効証拠金÷必要証拠金=2万円÷4万円=50%」となる
- ロスカットが発動される
ロスカットで大損しないための注意点
ロスカットのルールはFX会社によって異なるので、思わぬ大損をしないように取引前に内容をしっかり確認しておきましょう。ロスカットについて注意すべきポイントを紹介します。
FX会社によってロスカットの基準が異なる
ロスカットの基準は、証拠金維持率の20~100%とFX会社によって幅があります。そのため、自分が取引するFX会社の基準を把握しておきましょう。レバレッジや加入プランによって違うこともあります。また、有効証拠金だけでなく、純資産(FX会社に預けたお金すべて)を含めて計算されてロスカットを発動する会社もあるので、しっかり確認しておくことが必要です。
ロスカットは想定以上の損失にならないように、投資家を保護する役割もあります。証拠金維持率を100%にしているFX会社では、急激なレートの変動がない限りは、預け入れた証拠金以上の損失が出ることはありません。しかし、価格の急激な変動によりロスカットが間に合わない場合は、追加で損失分を支払うことになります。
そもそも、ロスカットが発動されるということは、リスクの取りすぎが原因の場合がほとんどです。ルールや基準を確認しておくことは大事ですが、あくまで最悪の場合に備えるためと考えておきましょう。証拠金維持率がいつも気になるようなトレーダーは、いずれ大損してしまう可能性が高いといえます。
追加証拠金を要求されるケースもある
ここまで、ロスカット「発動」という言葉を使ってきました。ロスカットが発動されてから執行されるプロセスもFX会社によって違います。
多くのFX会社は、利用者が証拠金維持率を維持できなくなると「追加証拠金を入れてください」という催促メールを送信します。追加証拠金とは、証拠金維持率が一定の水準まで下がったときに、FX会社から要求される証拠金のことです。「追証(おいしょう)」と略した言葉を知っている人もいるでしょう。通常、この追加証拠金を翌取引日までに入れれば、ロスカットは執行されません。逆に期限内に追加証拠金を入金しなかった場合、強制的に決済となります。
証拠金維持率が100%を切ったタイミングで、ロスカットが自動執行されるFX会社も多くあります。「いきなり執行なんて不親切だ」と思う人もいるでしょう。しかし、追加証拠金を毎日入れて、大損をさらに膨らませてから退場するトレーダーも少なくありません。「つい熱くなってしまう」というような人は、こうしたFX会社を選んでおくのも一つの方法です。
ロスカットで大損してしまう人の特徴
ロスカットで大損してしまう人はどのような特徴があるのでしょうか。これから紹介する特徴にあてはまった人は、何らかの対策を取りましょう。
FXの勉強をほとんどしていない
FXのロスカットで大損しないためには、レバレッジの仕組みやロスカットルールなどの基礎知識を学ぶ必要があります。特に初心者の場合は資金管理の知識が重要です。
一般的には、投資用の資金に対して、1回のトレードで取ってよいリスクは5%以内です。もっとリスクを減らしたいなら2%以内に収めましょう。ここでの資金はレバレッジをかけた資金ではありません。現実に失ってもよい金額で計算することが重要です。
そのほか、チャート分析やトレード手法、心理学などを継続的に勉強しましょう。レバレッジのかけすぎの他に大損してしまいやすいのは、事前に損切りの理由が決まっていないケースです。たとえば、安いというだけで買って含み損になったら、損切りする理由はどこにもありません。そのため、ロスカットされるまでずっと持ち続けてしまいます。
しかし、ルールを作ったのにそれを守れないなら、心理学や統計学、行動経済学など、トレードと違う分野にも目を向けてみましょう。大損の本質的な理由を考えたり、自分の性格に合った投資スタイルを作ったりすることも大切です。
損切りをしないまま保持してしまう
大損の原因を突き詰めると、以下の2つのケースが多いといえます。
- 「絶対に損をしたくない」という気持ちが強く、損切りのタイミングを逃してしまう
- あらかじめ基準を決めていたにもかかわらず、損切りラインを超えても損切りできない
このような場合は、損切りを先延ばしにしてしまいます。それどころか、平均購入単価を有利にしようとポジションを増やしてしまうこともあるでしょう。そのため、ロスカットのリスクをさらに高めてしまうのです。こうした大損を回避することは、資金を増やす大前提といえます。
相場に損切りは付きものです。世界的な投資家のジョージ・ソロスは成功の秘密を「私が人より優れている点は、私が間違いを認められるところだ」と語っています。また、ラリー・ウィリアムズは上記のようなトレーダーを「ヘッドライトを浴びて凍り付く鹿」に例えています。損切りは資金を守る唯一の方法であるとポジティブに考えましょう。
根拠もなくエントリーをする
FXに慣れてくるとトレードが楽しくなり、根拠もないのにエントリーをしてしまう人もいます。これは「稼げる機会を逃したくない」という投資家心理が原因です。根拠もなくエントリーして稼げるほど相場は甘い世界ではありません。想定とは逆の方向に動いてしまうことがほとんどでしょう。逆行するのは普通のことなので、損切りすれば問題ありません。しかし、いい加減にエントリーしているので、撤退の戦略がまるでないことが大損してしまう本当の理由です。
気ままなエントリーから生じる結果は、ほぼ全てのトレーダーに共通しています。ひとつは先ほど紹介した「損切りをしないまま保持してしまう」状態に陥ることです。もうひとつは、損切りした後に負けを取り戻そうとして、「根拠もなくエントリーをする」状態になることです。
はじめはちょっとしたお手付きだったのかもしれません。しかし、たった1回の根拠のないエントリーが致命的なトレードにつながったり、数多くの無駄な取引を引き起こしたりすることはとても多いのです。
FXをギャンブルと考えている
FXは元手資金以上に取引できて大きな額を稼げることから、ギャンブルと考えている人も多くいます。特に、海外のFX会社ではレバレッジが何百倍もかけられるので、宝くじ感覚で一発当てようとする人もいるようです。
しかし、幸運にも大きな利益を数回出せたとしても、相場分析や資金管理をせずに直感だけで取引していれば、大損は「するか・しないか」ではなく「いつするか」の問題です。結局、ロスカットで大損してしまい、トレードから撤退する人たちが多いことは、少し投資経験を積めば誰でも知るようになるでしょう。
投資がギャンブルだというのは、確かにある意味当たっています。しかし、個人投資家に勝機のある数少ないギャンブルといえるでしょう。たとえば、競馬は胴元(JRA)に25%も稼ぎを取られてしまいますが、FXでは手数料(スプレッドやスワップポイント)込みで数%にすぎません。
また、法則性や再現性という点でも、他のギャンブルよりずっと高いといえるのではないでしょうか。少なくともFXは、プロが長年生計を立てられるポーカーのように、確率的な優位性のある投資対象といえるでしょう。
相場が荒れているときにエントリーをする
相場が荒れているときにエントリーすると、ロスカットにより損失が大きくなる可能性が高くなります。このようになる状況は一概には言えませんが、戦争やテロ、重要な経済指標の発表、自然災害など、自国や世界の経済に大きな影響がある出来事が起きたときです。
現在の機関投資家や金融機関などはプログラムやAIによる売買が主流なので、重大な情報が流れると、あっという間に注文が執行されます。そして、それが他のプログラムやAIのトリガーになることもあります。個人投資家が気づいたころには、大きくレートが動いた後であることもしばしばです。
さらに、レートが大きく変動して注文が殺到すると、FX会社はそれらをさばききれないために、スプレッドを拡大する傾向があります。これにより、ロスカットに引っ掛かってしまうことも考えられます。
そのため、相場が荒れているときには、エントリーをせずに落ち着くのを待つことも大切です。前もってスケジュールが発表されている要人発言や経済発言がある場合、相場急変のリスクを避けるためにポジションを解消したり、新規エントリーを控えたりしましょう。
ロスカットで大損するのを回避するには?
ここからは、ロスカットで大損しないために具体的に実践するべきことを紹介します。
レバレッジをかけすぎない
レバレッジを高くすると、ロスカットの基準となる証拠金率が下がるため、ロスカットが発動されやすくなります。以下の表に、最大レバレッジ25倍・資金10万円におけるレバレッジと証拠金維持率を示します。レバレッジが倍になると、証拠金維持率が半分になっていることがわかるでしょう。取引額も多いので、小さな変動でもロスカットが発動するリスクが高まります。
一般的には、FXビギナーはレバレッジ2~3倍から始めるのが安全とされています。特に、相場が急変しているときは、これぐらい低いレバレッジにしておきましょう。そうすれば、急激にレートが変動しても、いきなりロスカットになってしまうリスクは低いといえます。
投資スタイルによっても、レバレッジの調整が必要です。スワップポイント狙いの投資では、長期運用によって大きな出来事に遭遇する可能性が高いので、レバレッジを低めに設定しましょう。逆に、デイトレードやスキャルピングなどの短期取引では、レバレッジを高めにしても、適切な損切りをすれば比較的安全です。
損切りを徹底する
損切りを徹底することで、ロスカットで大損するリスクを回避することができます。あらかじめ許容できる損失限度額を決めておき、その金額をもとにトレードしましょう。「含み損」が大きくなる前に損切りをすることで、資金を大きく減らすことなく利益を着実に積み重ねていけます。
ただし、損失限度額から逆算して損切り価格を決めるのはおすすめできません。その代わりに取引量で調整しましょう。サポートラインやレジスタンスラインから損切りするレートを決めてから最大損失額を計算し、取引量(レバレッジ)を決めることが重要です。
相場は個々の資産状況と無関係に動いているので、根拠のあるレートで損切りしなければ、資金を増やすことはできません。資金が少ない場合は、1,000通貨単位で取引できるFX会社を選んではどうでしょうか。取引量が調整しやすくなります。
逆指値注文をする
逆指値注文とは、今のレートよりも下がったら売り、上がったら買うという注文を入れておくことです。つまり、損切りの予約注文のようにも使えます。損切りがうまくできない場合は、エントリーした際に逆指値注文を入れておくことも一つの方法です。
逆指値注文を入れておけば、急な価格変動によるロスカットにも備えられます。たとえば、トイレに入っている間に、トランプ大統領が重大コメントをTwitterにつぶやくかもしれません。また、自然災害によって停電してしまう可能性もあります。一度注文を入れておけば、FX会社のシステムが可動している限り、自動で損切りしてもらえます。
FXのロスカットで大損しないための注文方法
FX会社では、成行注文や指値注文以外にも、リスク管理に使える注文方法があります。ロスカットで大損しないために、便利な注文方法を覚えておきましょう。
IFD注文
IFD(イフダン)注文とは、新規指値注文と決済注文をセットで注文できる方法です。たとえば、1ドル112円のときに、110円で買いの指値注文をするとともに、100円で売りの逆指値注文を入れることができます。
この場合、100円の注文が損切り注文になります。注文が執行されると同時に損切り設定ができるので、チャートを見られない場合にも安心です。万一、IFD注文をしたことを忘れてしまっても、大損することはありません。
損失を防ぐ観点からは関係ありませんが、IFD注文にはもうひとつの使い方があります。110円で指値注文すると同時に111円で利益確定注文を入れる方法です。ただ、この場合、予想と違ってレートが下がり続けてしまった場合、損失が拡大していくので注意が必要です。チャートを監視できるときだけ活用しましょう。
OCO注文
OCO(オーシーオー)注文とは、2通りの注文を出しておき、片方が約定したら片方を取消にできる注文方法です。ロスカットで大損しないために活用できるのは、決済注文にOCO注文を使う方法です。
たとえば、1ドル110円で買いポジションを持っているときに、120円に利益確定のための指値を入れ、105円に損切の逆指値を入れておきます。常にレートを確認できない場合には、OCO注文を入れておくのが基本です。特にFXの初心者は注文を入れる癖を付けておきましょう。
なお、OCOによる新規注文は、それぞれに「指値」と「逆指値」の両方を注文できるため、バリエーションが豊富です。「買指値+買逆指値(損切り)」「売指値+売逆指値(損切り)」「買指値+売指値」「買逆指値+売逆指値」が注文できます。
「買指値+売指値」は主にレンジ上下限のエントリーに、「買逆指値+売逆指値」はレンジブレイクアウトのエントリーに使います。注文執行後は、大損しないように別途損切り注文を入れましょう。
IFO注文
IFO(アイエフオー)注文は、IFDとOCOを組み合わせた注文方法です。3つの注文をセットにして注文します。たとえば、1ドル110円で新規の買い指値(または逆指値注文)をしておき、それが執行された後の利益確定を115円、損切りを108円と設定しておけます。
これなら入口と出口の戦略が同時に設定できるので便利です。エントリーを検討していたレート近くに接近したときにIFO注文を出しておけば、その後チャートを確認したり注文を設定したりする必要はありません。慣れてくればスマホ注文なども十分可能なので、チャートをチラっと見る程度しか監視できないような人におすすめです。
トレール注文
トレール注文は、一定の値幅で逆指値注文に追従(トレール)していく注文方法です。たとえば、1ドル105円で買い注文を出し、1ドル100円で売りの逆指値注文を入れます。トレール注文では、5円がトレール幅になります。
買い注文執行後にそのまま下落してしまった際に、100円で損切りになるのは逆指値注文と同じです。しかし、買い注文が執行された後、100円まで下がらずに105円を超えてくると、トレールが発動して上昇に追従するようになります。
たとえば、106円に達した時点では、決済執行価格が106-5=101円に移動します。同様に、110円になればトントンの105円に、115円に上昇すると110円にトレールされて5円の利益が確定します。つまり、注文価格より価格が順行すれば、最初の損切より小さな損失で済ませられるか、トレンドに合わせて利益を守ることが可能です。
多くのトレーダーは、これに似たトレール注文を手動で行っています。それを自動で注文できるのは、とても便利といえるでしょう。ただし、目立った高値・安値にトレールすることはできないので、手動に比べて精度が低いというデメリットがあります。機能しているトレンドラインや移動平均線などがある場合はそこまでの値幅をトレール幅にするなど、活用方法を研究してみてはどうでしょうか。
ロスカットで大損しないためには資金管理が重要!
FXでのロスカットとは、一定基準以上の証拠金維持率が保てなくなったときに、FX会社が決済注文を発動または執行することをいいます。FXでロスカットが発動されると、大きく資金を失ってしまうリスクが高いといえます。
ロスカットを回避するためには、資金管理と損切ルールを徹底するとともに、メンタルのコントロールが大切です。損切りのタイミングを逃さない便利な注文方法もあるので、上手に活用していきましょう。