「メイントレンド」に徹する
西原宏一著 『30年間勝ち続けたプロが教えるシンプルFX 』(SPA!BOOKS)より一部抜粋しています。すべてを読みたい方は、こちらをご覧ください。
市場のメイントレンドにいかにうまく乗っていくか
市場のテーマには息の長いものと短いものがあります。息の長い市場のテーマは為替市場に「メイントレンド」を生み出します。
僕が銀行のプロップディーラー時代から強く意識していることで、皆さんにもぜひ心がけていただきたいのが、「市場のメイントレンドにいかにうまく乗っていくか」ということです。
アナリストであれば、「市場のメイントレンドは何か」を言い当てるだけでいいのでしょうが、僕らディーラーは市場のメイントレンドに乗って儲けないと意味がありません。
プロップディーラーにとって、相場観が外れ損失を被っても、トレーディングで損失を出すことは誰にでもあることなので資金管理さえちゃんと行えば問題にはなりません。シニアトレーダーとして次に儲けてくれるであろうと、銀行のマネジメントも考えてくれるからです。
ところが、相場観は当たっているのに調整局面で持ちこたえられず、大きく儲けられなかったとなると、プロップディーラーとしては大問題です。彼はトレーダーではなく、アナリストであると烙印を押されるからです。アナリストではなく、トレーダーであるのは皆さんも同じでしょう。
メイントレンドが本当に終わったのか?テーマとしての賞味期限が切れたのか?
「ユーロ圏債務危機」の最初に、ギリシャの粉飾決算というテーマが浮上したのが2009年。翌年、ユーロ/米ドルは夏にかけて約3000pipsほど下落しました(図3)。非常に大きな下落で、今になってチャートを見れば、「ひたすら売っておけばよかっただけ」の簡単な相場に見えます。
しかし、あとから見れば一本調子で下げている相場でも、途中途中には上昇する局面も多々あり、そうした反発局面ではユーロ上昇を示唆するニュースや「そろそろ危機が収束するのでは」といった見通しが広がってきます。
メイントレンドが本当に終わったのか?テーマとしてのユーロ危機は賞味期限が切れたのか?その判断次第で収益は大きく変わります。
メイントレンドが終わっていないのであれば、上昇局面は戻り売りの絶好機になりますし、賞味期限切れなのであればボジションを決済して利益確定しなければいけません。
メイントレンドが収束したのか、継続しているのかを判断するために、僕たちはチャートを分析し、そしてファンダメンタルズを分析するわけです。
図3でいえば3000pipsの下落途中、何度かの反発がありながら1ユーロ1.18ドルで下げ止まりメイントレンドは反転しました。
ユーロ危機が収束したわけではないのは、その後、ユーロ危機第二幕といったかたちで再燃したことからも明らかですが、このときは市場のメイントレンドが欧州から米国へと移行したからです。
2010年夏に、バーナンキFRB議長がカンザスシティ連邦準備銀行の主催するジャクソンホール会議で行った講演で、追加緩和であるQE2導入をほのめかし、その瞬間から、市場の関心がユーロ危機から「いつQE2へと踏み切るか」へ移っていったためです。
ユーロの売り材料そのものには大きな変更がなくとも、より新鮮で大きな材料であり、ドル売りにつながるQE2というアメリカ側の材料へ、移り気な為替市場がテーマを乗り換えたのです。
個人投資家の「ノルマがない」という強み
僕の場合は日々収益をあげないといけないので、メイントレンドが下落であっても短期的な売買で買いから入ることもありますが、プロではない皆さんには「ノルマがない」という強みがあります。
メイントレンドが下降ならばひたすらショートし、反発局面では様子を見ながら戻り売りの機会を待つ。メイントレンドが上昇ならばロングに徹して、反発局面では押し目買いや買い増しの機会を待つ。
こうした、メイントレンドの波に乗ることだけを考えていくと、利益効率をあげられるのではないでしょうか。