FXのスワップ運用とは?稼ぐコツや通貨ペアの特徴、注意点などを紹介
この記事では、スワップ運用で稼ぐコツや通貨ペアの特徴、リスク・注意点などを紹介します。スワップ運用を始める際の情報のひとつとしてお役立てください。
今回のポイント!
- FXのスワップ運用で稼ぐには、スワップポイントの大きさとリスクのバランスが大切
- スワップ運用に使える「サヤ取り」「ドルコスト平均法」を知っておこう
- スワップ運用では、マイナススワップポイントや急激な価格変動などのリスクもある
スワップ運用なら毎日コツコツ稼げる!
FXで利益を上げる方法には、価格変動を利用して売買することで差益を得る方法と、スワップポイントを受けとる方法があります。スワップポイントとは各国の政策金利(中央銀行が設定する短期金利)の金利差によって発生する利息のことです。たとえば、メキシコペソの金利が7.2%で日本円が0.1%なら、「7.2-0.1=7.1%」の年利でスワップポイントが取引日ごとに発生します。
ただし、実際はFX会社の手数料や方針によって、これより低い割合が設定されています。FX会社では、1万通貨あたり1日いくらという形でスワップポイントの金額を公表しているので、複数のFX会社を比較してみましょう。スワップ運用とは、このスワップポイントを日割りで毎日受けとることで、コツコツ利益を増やす投資スタイルです。一般的に、発生したスワップポイントはすぐに受け取れ、再投資や出金ができます。
FXのスワップ運用で稼ぐコツ
ここでは、FXのスワップ運用で稼ぐコツを紹介します。長期運用ならではのポイントもあるので、短期トレードの経験がある人も確認しておきましょう。
通貨ペア選び
スワップ運用で利益を出すには、 金利の高い通貨ほど有利です。1日あたりに発生するスワップポイントが大きい通貨ペアに注目してみるのもよいでしょう。しかし、スワップ運用においても、当然ながら価格変動の影響を受けるため、価格の安定性は重要です。 スワップ運用による利益以上に価格変動で損失になる場合もあるからです。
価格の安定には市場の需給関係が正常に働くだけの取引量がなければなりません。投機的な売買の影響を受けないためにも、一定以上の取引量がある通貨ペアを選んだほうが流動性リスク(迅速に取引が成立しないリスク)は減ります。
また、国の経済・政治の安定も大きく影響します。金利の高い通貨は政情不安定な新興国であることが多いため、このカントリーリスクには注意が必要です。新興国の金利が大きい理由は「今後の成長が見込まれる」ということが理由のひとつです。しかし、実際には政情不安定な国に投資する人が少ないため、金利というプレミアムを付けて外貨を獲得しているケースも多々あります。つまり、実体に即していない金利で取引されていることがあるのです。
金利差以外にも、FX会社選びが大切です。各社の競争によってスワップポイントは異なるため、比較して有利なほうを選びましょう。
高金利通貨で右肩上がりの通貨ペアが見当たらない時期には、スワップ運用はできませんので、ご注意ください。
長期的な運用
スワップポイントをコツコツ貯めるには、長期間ポジションを保有することが必要です。スワップ運用では、数週間~1年程度、場合によっては数年間ポジションを持ち、利益を増やしていくことが大くなります。一般的には、投資は長期になるほど得られる利益が増えますが、スワップ運用においては大きなトレンドが終わったところでポジションを閉じます。
一方、長期になるほど損失の額(損切り幅)も大きくなるのは避けられません。また、通貨ペアの金利が変わり金利差がマイナスになれば、マイナススワップポイントとしてその分の利息も支払わなければならないので要注意です。
長期的な運用では、各国の経済指標や国際情勢などを分析する「ファンダメンタルズ分析」が重要になります。ポジションを持って終わりというのではなく、日々、国内外の情勢のチェックをしていきましょう。 少なくとも各国の政策金利の変更があるかどうかはチェックしておく必要があります。 投資初心者はファンダメンタルズ分析のスキルを身に付けるための勉強も欠かせません。
売買のタイミング
FXでは価格変動のリスクがあるため、スワップ運用においても売買タイミングが重要です。外貨を買う場合、「できるだけ安いときに買い、高くなったところで売る」という基本はスワップ運用でも同じです。「スワップポイントの利益が入ってくるから」などと皮算用して売買タイミングを軽視すると、価格変動の損失がスワップポイントの利益を上回ってしまうかもしれません。
運用中は経済や政治のニュースをチェックし、為替相場の急変に気を付ける必要があります。国の選挙や経済指標の発表など時期が決まっているイベントは、事前にリスクを避けることも可能です。チャートを定期的にチェックするのもよい方法です。1日1回程度、数年単位の運用の場合は1週間に1回程度、価格と値動きを分析するだけでも変化の兆しがわかります。
FXのスワップ運用に適した通貨ペアは?
スワップ運用をする際は、金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を買うことがポイントです。ただし、新型コロナウイルスの影響により、各国の金利には大きな変化が起きました。ここでは、2020年8月時点における代表的な通貨ペアの状況について解説します。
米ドル/円
米ドル/円はスワップ運用でも人気の通貨ペアでした。2020年1月時点では、円の政策金利がマイナス0.1%で、米ドルの政策金利が1.75%であったためです。米ドルの通貨の信頼性は高いうえ、日本の預貯金よりも大きな金利が得られることもあって、米ドル/円でスワップ運用している個人投資家も多くいました。
しかし、新型コロナウイルスの影響によって、2020年3月から米ドルの政策金利は0.25%で推移しています。金利の低下によりスワップ狙いの運用は厳しい状況といえるでしょう。日本円との金利差はほとんどなく、長期保有するには価格変動リスクも高い状況です。
オーストラリアドル/円
オーストラリアドル/円も、かつては高いスワップポイントが狙える人気通貨ペアでした。しかし、2020年8月時点での政策金利は過去最低の0.25%に下がり、スワップ運用での魅力は少ない状況です。
今後の見通しは不明ですが、スワップ運用に適した環境になったら、オーストラリアドル/円とニュージーランドドル/円の組み合わせで「サヤ取り」を検討してはどうでしょうか。チャートをみると、一目で連動性がわかるはずです。乖離が広がったタイミングを見計らってポジションを取ります。その後の動きがどうであれ、再び相関度が高くなったときに決済すれば、利益を出すことが可能です。スワップポイントで好条件が重なれば、より大きな利益が出る可能性もあります。
ニュージーランドドル/円
先進国でありながらスワップポイントが高いことから、個人投資家から人気だったのがニュージーランドドル/円です。アイネット証券の「ループイフダン総選挙」という、一部のFXトレーダーの間ではよく知られた投票でも、2018年に取引したいと思う通貨で第1位に選ばれています。
しかし、残念ながらニュージーランドの中央銀行であるRBNZ(NZ準備銀行)は、2020年8月時点で0.25%の金利を据え置いています。のみならず、将来的にマイナス金利を検討していると公式に発表しました。マイナス金利になるかどうかはわかりませんが、少なくともスワップ運用をするべき時期ではないことは確かです。今後の動向を見守りましょう。
カナダドル/円
カナダは地理的にも、経済的にもアメリカとの関わりが強く、米ドルに影響を受けやすい通貨です。米ドルに類似した動きをすることから、米ドル/円を取引していれば用が足りると考えているトレーダーも多いのではないでしょうか。実際、カナダ関連の情報はアメリカに比べると非常に少ないといえます。
カナダドルの2020年8月時点の政策金利は0.25%です。年初では1.75%と高い金利だっただけに、スワップ運用の成績が落ちた投資家も少なくありません。しかし、もともとは高金利の通貨だけに、今後、金利が上昇する動きがあれば、スワップ運用の対象になるでしょう。
トルコリラ/円
トルコリラ/円は、高金利通貨ペアの代表です。リスクを取れる個人投資家にとって魅力的な通貨ペアのひとつといえます。2020年8月時点でも金利差は8.15%と高いので、スワップポイントだけみれば、スワップ運用が十分可能です。
ただし、相場の急変によるリスクが高いことは他の新興国と変わりません。実際、2018年8月にはトルコリラは急落しており、対応が遅れた投資家のスワップポイントの利益を軽く吹き飛ばすほどでした。
メキシコペソ/円
メキシコペソ/円の金利差は2020年8月時点で4.60%です。年初の7.35%に比べると下がりましたが、スワップ運用としてはまだまだ人気の通貨ペアです。価格が低いため、少ない証拠金で取引できることも、個人投資家にとっては魅力的ではないでしょうか。
たとえば、1万通貨をレバレッジ25倍で取引する場合、米ドル/円では4万2,500円ほど必要ですが、メキシコペソ/円では22分の1程度の1,950円ほどで済みます(2020年9月現在)。少ない資金であっても、ドルコスト平均法を使ったり分散投資したりできるメリットがあるのです 。
ただ、トルコリラや後で紹介する南アフリカランドなどと同じく、先進国に比べて価格が不安的な面があります。スプレッドを原則固定としているFX会社であっても、突発的な相場急変の場合はスプレッド(売値と買値の差)が広がる可能性があるので注意が必要です。
2020年2月から3月にかけては3割近く下落、6月にも1週間で1割近く下落するなど激しい動きも続いています。スワップ運用は動きが落ち着いた後でも遅くはないでしょう。
南アフリカランド/円
南アフリカランドの政策金利は、2020年7月時点で3.50%です。日本円との金利差は3.60%となっており、スワップ運用に適した高金利の通貨ペアとして人気があります。金やダイヤモンドをはじめとした鉱物資源が豊富なこともあり、将来的にアフリカ経済の中心になるのではないかと予想されています。長期運用として、スワップポイントだけでなく為替差益も狙える魅力的な通貨ペアといえるでしょう。
しかしながら、新型コロナウイルスの影響により価格は下落しました。この背景には世界経済の縮小のみならず、「国家的災害事態」を宣言するほどの感染拡大があります。また、南アフリカ準備銀行により、3月に1%、4月に1%、5月に0.5%、7月に0.25%の段階的かつ急速な利下げが進んだからです。2020年8月現在は感染者がピークアウトしたという報道もありますが、今後も急激な価格変動に注意が必要です。
為替リスクを抑えながらスワップ運用で稼ぐ方法
スワップポイント狙いで金利差が大きな通貨ペアを選ぶ場合、価格がそのままなら、一般的な預貯金よりもずっと大きな金利を得られることになります。価格変動リスクを押さえながら運用する方法はないのでしょうか。
サヤ取り
サヤ取りとは、相関性がある2つの通貨ペアで売りと買いのポジションを同量持つことをいいます。こうすれば、片方が下がっても、もう片方が上がる可能性が高いため、価格変動をプラスマイナスゼロにして、スワップポイントの差分を利益にできます。
もうひとつのサヤ取りの仕方は、FX会社によって違うスワップポイントの差を利用する方法です。同じ通貨ペアでスワップポイントが異なる2つのFX会社を選び、それぞれ売りと買いのポジションを同量持ちます。
サヤ取りのメリットは、損失が出にくく、コツコツ利益を積み上げられることです。一方、サヤ取りをするには2倍の資金が必要なので、資金効率が悪いデメリットがあります。また、価格変動を相殺したとしても、スワップポイントの差分がマイナスに転じてしまい、損失が生じるリスクは防げません。同じ通貨ペアを取引する場合は期待できる利益がかなり小さいうえ、FX会社のスワップポイントの設定が変われば、損失に転じることもあります。
ドルコスト平均法
ドルコスト平均法とは、事前に決めておいた資金を一定間隔で同じ投資対象に分割投資する方法です。たとえば、100万円の資金がある場合、1カ月おきに10万円ずつ同じ通貨ペアのポジションを増やしていきます。このようにすれば、購入価格を平均化できるため、為替変動リスクを抑えられるのがメリットです。
ちなみにドルコスト平均法の「ドル」はアメリカ人の呼び方で特に意味はなく、一定額の資金という意味です。イギリス人はポンドコスト平均法と呼びますが、日本人はアメリカ式で呼んでいます。
いずれにしても、スワップ運用は長期運用となるため、ピンポイントで最適なエントリータイミングが見極めにくい面があります。そのため、ドルコスト平均法を活用するのは、為替リスクを抑える方法のひとつです。
ただし、リスクを分散しているからといってレバレッジをかけすぎると、ロスカットのリスクが増えます。基本的にドルコスト平均法とは、長期的に経済成長すると考えた通貨を一定期間購入し続けた後、長期保有しようとする戦略です。途中で損切り、ロスカットになってしまってはドルコスト平均法のメリットが生かせません。
FXでスワップ運用する際の注意点
長期投資と聞くと、日本人は何となくリスクが低いと考える傾向にあるようです。しかし、先にも述べたように、期間が長いほど損切り幅は広がります。また、予想外の大きな出来事に遭遇するリスクが高まるのも確かです。ここでは、長期運用のひとつであるスワップ運用の注意点を解説します。
為替変動のリスクがある
価格変動により、スワップポイントで貯めた利益以上に損失が出る可能性もあります。たとえば1万通貨の豪ドル/円を1年間保有して、スワップポイントの平均が1日50円だったとしましょう。すると、スワップポイントは50円×365日=1万8,250円です。一方、この間に仮に価格が80円から75円に下落したとすれば、損失は5万円になります。トータルではスワップポイントを上回り、3万円超の損失となってしまうのです。
金利の高い新興国の通貨は、特に為替変動リスクも高いため注意が必要です。長期運用でも日々レートをチェックしましょう。複数の通貨ペアを保有して分散投資するのも、為替変動リスクを抑える方法のひとつです。
金利変動のリスクがある
ポジションを保有した時点では高いスワップポイントであったとしても、金利低下によってスワップポイントが少なくことがあります。また、ペア通貨の金利上昇によりマイナスに転じることもあるのです。
政策金利は一定ではないので経済状況によって変動します。実際、新型コロナウイルス感染拡大により、各国は経済対策として利下げに動きました。2020年8月現在、それによって大幅に金利差が縮小したりマイナススワップポイントが発生したりする状況も発生しています。
「○○ショック」と呼ばれるような事態は滅多にないように思うかもしれませんが、10年単位でみれば当たり前のように起きています。長期保有の場合、国の金利政策が大きく転換する時期に遭遇するリスクも想定しておくべきです。
損切り幅が深くなりがち
スワップ運用では、長期間ポジションを保有するため、相場予測が外れた場合の損切り幅が大きくなりやすいのがデメリットです。しかし、これは長期保有によって大きな利益幅が見込めることや、継続的にスワップポイントを受けられることの裏面に過ぎません。
特にスワップポイント狙いの場合、所有していることによる利益であるインカムゲインを目的としています。長く所有すること自体が、利益の源であるはずです。このため、レバレッジを高くしすぎず、ロスカットのリスクが低くなるような資金管理が重要です。
もちろん、思惑が外れた場合、傷が深くならないうちに仕切り直す必要もあります。どうなったら自分が間違っていたと判断するのか、エントリー前や保有後の推移をみながら、含み損が増えすぎない位置に損切りポイントを決めましょう。
精神的なストレスになる
口座資金が増減することは、トレーダーにとってストレスに感じます。特に含み損が出ているときは感情がネガティブになりがちです。「ポジションを持っていると精神的に落ち着かない」「思ったとおりにレートが動かないと怒りや悲しみを強く感じる」という人は、長期保有は向かないかもしれません。
エントリーや決済に関しては精神的なストレスは少ない面があります。ゆっくり判断できるため、衝動的に売買してしまうリスクが少なく、根拠を持ったトレードになりやすいはずです。
ただし、積極的に売買をしていないと退屈に感じる人や、結果が出るのが数カ月後~数年というスパンであることにストレスを感じる人もいるでしょう。このような場合、スワップ運用はできませんが、スイングトレードやデイトレードなど期間が短いスタイルに移るのも一案です。
FXでスワップ運用をする場合は注意点も把握しよう!
FXのスワップ運用は、外貨預金の延長上のように簡単に思えるものの、注意すべき点もいろいろあります。通貨ペアやFX会社を選ぶこと、価格変動や金利変動のリスクを抑える投資スタイルの確立、資金管理のルール設定など、初心者が取り組まなければならない内容は少なくありません。
とはいえ、リスク管理の基本さえ押さえておけば、すばやい投資判断を必要としないスワップ運用は、ゆったりコツコツ利益を積み重ねたい人にぴったりです。実際に投資してみないと身に付かない知識や技術もあるので、少額資金からスワップ運用をはじめてみてはいかがでしょうか。
先にも書きましたが、高金利通貨で右肩上がりの通貨ペアが見当たらない時期には、スワップ運用はできませんので、ご注意ください。