緊急事態宣言が経済に与える影響は?
緩い感染抑制策の下では緊急事態宣言解除は4月後半
再び緊急事態宣言が出された。2月7日までの1か月間、とくに、夜間の会食制限に絞った規制であり、感染拡大の抑制にどの程度の効果があるかが疑問視される。
参考にできると思われるのが、12月に大阪府で実施された対策だ。大阪府は12月3日に、府独自の基準「大阪モデル」で非常事態を示す「赤信号」を初めて点灯させることを決定した。「赤信号」への判断引き上げを受け、12月4日から15日までの間、できるかぎり不要不急の外出を控えるよう府民に呼びかけた。
また、すでに実施されていた大阪市北区と中央区の酒類を提供する飲食店などを対象とした営業時間短縮の要請について、12月11日終了予定だったところを15日まで延長することも決めた。
この結果、大阪府の新規感染者数は12月4日までの1週間平均の376人から、30日後の1月3日までの1週間平均の264人へと7割に減少した。冬場の感染しやすい環境のなかで、限定的な感染抑制策を実施しても、1か月間に感染者数は3割程度の減少がせいぜいだということになる。
東京都の現在の1日の感染者数は2,000人を超える状況で、1月9日までの1週間平均の感染者数は1,668人だ。12月の大阪府と同程度の減少率(1か月で3割減少)になるとすれば、1か月後には1,168人、2か月後には817人、3か月後には572人、4か月後に400人になる計算だ。
1日当たりの感染者500人を下回ることが、今回の緊急事態宣言解除の目安と西村大臣が述べたが、この計算では、緊急事態宣言の解除は4月後半以降になると考えられる。
ただ、仮にイギリスで感染が拡大している、感染力の強い変異種がこの先、日本でも流行することになれば、この通りの計算にはならない。イギリスでは強力なロックダウンでも感染は収まる兆しはみられず、そうしたことになれば感染者数が減少するどころか、今回のような緩い対策ではむしろ感染者数は増加していく可能性が高い。
1~3月は再びマイナス成長へ。宿泊・飲食サービス業で雇用調整深刻化も
では、経済への影響はどうなるか。今回の緊急事態宣言の影響を受けるのは宿泊・飲食サービスなどに限定される。
宿泊・飲食サービス業のGDPは18年時点13.8兆円で、日本のGDP(同545兆円)の2.5%程度を占める。仮に、1か月間、宿泊・飲食サービス業の経済活動が全面的にストップした場合、影響は1兆1,500億円(13.8兆円÷12)になる。
今回の緊急事態宣言では、飲食店の夜間営業時間が短縮されるだけで、全面的に経済活動がストップするわけではない。影響は全面ストップの場合の半分程度で、月5,000~6,000億円にとどまるのではないかと思われる。
こうした前提で、仮に、緊急事態宣言が3か月間継続されれば、マイナスの影響は1兆5,000億円~1兆8,000億円となり、年間GDPの押し下げ効果は0.3%ポイント程度となる。悪影響は1~3月の期間に集中するため、1~3月のGDPを1.2%ポイント減少させることになる。
平時であれば、世界の経済活動がコロナショックから徐々に正常化していることを考慮しても、日本の前期比GDP成長率は0.3~0.5%(年率換算で1.2~2.0%)程度とみられるが、これは1.2%ポイント引き下げられ、1~3月のGDP成長率は前期比マイナス0.9~マイナス0.7%と、再びマイナスになるだろう。
ただ、短期的なGDPの落ち込みより問題なのは、同産業での雇用調整の深刻化が長期にわたって日本の景気を低迷される可能性だ。宿泊・飲食サービス業の就業者は436万人(18年時点)で、日本全体の就業者(同6,863万人)の6.4%程度だ。
GDP比率が2.5%なのに、就業者比率が6.4%と高いことは、宿泊・飲食サービス業が労働集約型で、労働生産性の低い産業であることを示している。
少子高齢化が進む日本では本来、産業政策として、比較劣位の労働集約型産業を振興していくことは割に合わないはずだが、政府が観光立国を目指していることもあって、宿泊・飲食サービス業に従事する就業者は近年、増加傾向を辿っている。そして、増加した宿泊・飲食サービス業の多くの就業者が、今や、失職の危機に瀕している。
今回のコロナショックでは、政府はできるだけ早めに観光立国政策の看板を下ろし、宿泊・飲食サービス業の労働者を情報関連産業や環境関連産業などの成長産業にスムーズにシフトさせることに注力すべきだった。
2021/1/13の「イーグルフライ」掲示板より一部抜粋しています。
全文を読みたい方は、イーグルフライ掲示板をご覧ください。