米国の貿易赤字は過去最大、2021年もドル安は続く
米国の貿易赤字の拡大は止まらず
2020年から始まったドル安は21年も続きそうだ。第1に、米国の貿易赤字が増加している。ドルの実質実効レート(インフレ要因を除いたドルの総合的な強さを示し、この数値が低ければ低いほど米国の輸出競争力が強いことを示す、1973年3月=100)は、2020年4月に113.4と、2002年以来の高水準となったあと、11月には105.8とピークから7%程度下落した。
ただ、歴史的にみると、現在のドルの水準は米国の貿易面での競争力を回復させられるレベルではない。米国の石油を除く実質貿易赤字は都市封鎖で国内需要が減少した3月頃にかけ幾分減少したが、直近では月額800億ドルとコロナ前を上回り、過去最大規模に拡大している。
過去の米国の実質貿易赤字とドル実質実効レートの関係をみると、2004年以降、ドル実質実効レートの水準が100を下回るようになって初めて、ようやく貿易赤字の拡大に歯止めがかかった。
さらに、2007年以降、ドル実効レートの水準が95を下回って、貿易赤字幅が縮小に転じた。増え続ける米国の貿易赤字を、ドル安によって改善させようとするのであれば、少なくともドル実質実効レートは95程度まで下落する必要があり、現時点から10%程度のドル安が、必要になる。
しかも、4月以降、米国の貿易赤字が急速に拡大していることをみると、経済活動の再開に伴って消費や投資などの需要は増加したが、国内での生産活動の回復が遅れている。米国経済の輸入依存の傾向が強まっている可能性がある。そうした点を考え合わせると、今の貿易赤字を縮小させるには、より大幅なドル安が必要になることも考えられる。バイデン政権は、財政赤字と貿易赤字といういわゆる「双子の赤字」に対処しなければいけない。
米国の実質金利はこの2年間で急低下
ドル安が続くとみるもう1つの要因は米国の実質金利の低さだ。日米独の物価連動債利回りからみた実質金利の動きを比較すると、日本がゼロ%程度、米国が、マイナス1%程度、ドイツがマイナス1.5%程度となっている。
ドイツが最も低いが、これはユーロ圏内におけるドイツの信用リスクの低さによるものだ。イタリアの実質金利はゼロ%程度であり、ユーロ圏全体の平均的な実質金利はマイナス圏ながら、米国とほぼ同程度と考えられる。
米国の実質金利は19年以降、2%ポイント程度、急低下している。米国の金利急低下により米国への資金流入は抑制され、それがドル相場の頭を押さえる可能性が高い。
インフレとドル安の悪循環もありうる
今後1年間で、ドルにとって最も大きな問題になりそうなのが、米国のインフレ懸念だろう。
すなわち、米国のインフレ率(あるいはインフレ懸念)の高さが、購買力平価からみたドル安につながり、一方で、ドル安が輸入物価などを、上昇させ米国のインフレ率を加速させる、という悪循環に陥る可能性がある。
日米独の10年国債利回りから、物価変動債利回り(=実質金利)を差し引いた予想インフレ率(ブレークイーブン・レート)を比較すると、それぞれ4~6月以降の経済活動再開により上向きに転じたが、上昇テンポをみると米国が際立って急だ。
直近の予想インフレ率は、日本がゼロ%、ドイツが1%で、米国は2%に上昇している。マネーサプライ×通貨流通速度=物価×実質GDP、とする貨幣数量説によれば、マネーサプライの伸びが物価上昇率を左右する。
直近の日米ユーロ圏のマネーサプライ(日米はM2、ユーロ圏はM3)前年比は、日本が9.1%、ユーロ圏が10.5%で、これに対して米国が25.1%と圧倒的に高い。マネーサプライの伸びがこれほど急加速したのは、思い切った財政出動に対し、各中銀が実質的な財政ファイナンスの姿勢を示したことが原因だ。
米国のマネーサプライ急増は米国の予想物価上昇率を加速させ、それがドル安要因になる可能性がある。通常、購買力平価は2つの国の物価の動きから、為替相場の適正水準を計算するものだ。
2020/12/28の「イーグルフライ」掲示板より一部抜粋しています。
全文を読みたい方は、イーグルフライ掲示板をご覧ください。