米国企業の設備投資の強さの理由は何か?
設備投資の先行指標である資本財受注は過去最高水準
コロナショック後の各地域の実質GDPの動きを比較すると、中国が抜きんでていることを除けば、日米ユーロ圏ともにさほど大きな違いはない。
昨年10月に日本で消費税率引き上げが実施され、その前後で駆け込みとその反動があったことから、この日本の特殊事情の影響を平準化するために昨年7~12月の各地域のGDPを100とした場合、各地域の今年7~9月の実質GDPの水準は日本が95.0%、米国96.8%、ユーロ圏が95.6%とほとんど違いはない。ただ、需要項目別にみると大きな違いがある。
ユーロ圏の場合、需要項目別の動きは未発表だが、日米で大きく違うのは設備投資の動向だ。日本の設備投資は4~6月の前期比4.5%減に続き、7~9月も同3.4%減少し、7~9月の前年比は10.5%のマイナスと2桁減だった。
日本の設備投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)の動きをみると、4~6月前期比12.9%減、7~9月同0.1%減のあと、内閣府のヒアリングによる10~12月の受注見通しも同1.9%減となった。この先行指標の動きからみると実際の設備投資は来年初めまで減少傾向が続くことになる。
これに対して米国の設備投資は強い。設備投資は4~6月に前期比8.3%減少した後、7~9月は同6.9%増と早々と前期比増加に転じた。
米国の設備投資の先行指標である非国防資本財受注(除く航空機)は、4月にかけ減少(1月の既往ピークに比べ8.3%減少)した後、6か月連続で増加し、4月のボトムから14.2%増加した。同受注金額はこれまでの最高値であった12年2月の水準を更新した。
設備投資は景気の遅行指標であり、通常は、景気全体の動きにかなり遅れて動くのが普通だ。こうした米国企業の設備投資の堅調な動きは、コロナ禍にあっても米国企業の投資意欲の強さを示しているようにみえる。さらに、米国株の上昇の背景にも米国企業の積極投資があると言えるかもしれない。
米国では企業の利益増加が設備投資増加につながっている
通常、企業の設備投資の動きは利益の動きに連動する。実際、米国のGDPベースの企業利益は1~3月前年比6.7%減、4~6月同19.3%減と減少幅が拡大したあと、7~9月は3.3%増と前年比増加に転じた。利益の増加が設備投資を増加させたことがわかる。
一方、日本企業の法人企業統計ベースの経常利益は、1~3月前年比28.4%減、4~6月46.6%減、7~9月28.4%減と、7~9月はマイナス幅が縮小したものの、大幅なマイナス基調が続く。日本企業の設備投資が減少傾向を辿っているのも、利益が減少していることが原因であることがわかる。
企業利益が増加する米国では設備投資が増加し、企業利益が減少する日本では設備投資が減少しているという簡単な理屈になる。
企業の収益環境は日本も米国も悪いままで、米国の利益増加は補助金による
しかし、ここで大きな疑問は、企業の収益環境が日米さほど違いはないにも関わらず、米国の利益が増加、日本が減少しているのはなぜかという点だ。
GDPを所得分配の面からみると、GDP=雇用者報酬+企業利益、になるわけだが、図2、図3でみるとおり、日米ともに、GDPの落ち込み幅が雇用者報酬の落ち込み幅を大きく上回り、GDP<雇用者報酬となっている。
通常なら、日米ともに企業利益は減少傾向を辿っているはずだということになる。 米国企業の利益がさほど減少していないのは、給与保護プログラム(Paycheck Protection Program、PPP)など財政面からの支援策による。
このPPPは、トランプ政権が3月下旬に成立させた総額2兆ドルの大型経済対策(Coronavirus Aid, Relief, and Economic Security Act、CARES法)のなかで、中小企業支援策として位置づけられるものだ。
2020/12/8の「イーグルフライ」掲示板より一部抜粋しています。
全文を読みたい方は、イーグルフライ掲示板をご覧ください。