プロトレーダーのトレードの極意
ポジションを持つときの考え方
30年ぐらいトレーディングをしていますが、一般の個人投資家の方と違うなという点をご紹介させていただきます。
個人投資家の方は、まず投資本を買って、ニュースのヘッドラインなどをみて、いわゆるファンダメンタルズと称した売買から始められる方が多いと思います。30年ぐらい前、為替の参加者がそれほど多くなく、テクノロジーもそんなに発達していなかった頃、銀行のトレーダーはディーリングルームにいるといち早く情報を取れるので、ニュースが出た後に売買しても間に合っていました。
しかし、今のようにどんどん相場が成熟してくると、誰もが瞬時に情報を取得できるので、銀行の人も個人投資家もほとんど同じ時間に情報をゲットできます。
よって、銀行のトレーダーも個人投資家もほぼ同じ速度で情報を得ることができるため、ニュースの情報だけでは勝てません。アメリカの雇用統計発表も10年ぐらい前は、たとえば良い数字がでてドルを買っても、その後3円ぐらい上がったのでついていけましたが最近は違います。
ものすごく情報を速く取得しようとするのであれば、日本だと大手町近辺にでっかいサーバーを付けて肉眼でみるスピードよりも速くその情報を得て、その情報で売買するということをやらなければいけませんが、それは基本的には無理なことです。
ストップロスは必ず決めてから入る
では、どういう風にするかというと、まず大きな流れを決めます。基本的にエントリーを決める時は必ずチャートを見ておいて、このレベルで入ると戦略を決めておいて、そのレベルまで待って入ります。
そして、入る時はストップロスがいくらということも決めてから入ります。これ上がりそうだなとドルを買って、その後からストップロスを決める方が多いようですが、1円でも50ポイントでもよいので、自分のチャートの戦略から考えたストップロスを決めておくことが必要です。
そのストップロスが2円も離れていれば大きくリスクはかけられないですし、ストップロスが30銭ぐらいであれば普段よりも大きくリスクを張れると考えるようにします。
ドル買いのニュースが出たとしたら、チャートで短い時間軸が売られ過ぎになったところを買います。その際、ストップロスは必ず決めて入るということを徹底しないとなかなか勝てないと思います。
僕も有料のBloombergも持っていたりしますが、それ以外の情報はほとんど一般投資家の方と一緒です。極端なことを言うと、人生や受験勉強と同じといいますか、同じ情報を持っていても結果は知恵比べです。
たとえばビジネスでは、プレゼンの前にパワーポイントを作って、何をクライアントに説明して商品を買ってもらうかという戦略を立てます。それと全く同じで、良いセールスマンは必ず情報を入れて相手の嗜好性も入れて準備します。
基本的にはそれと全く一緒で、いきなり知らないお客さんのところに行って「これ買ってください」と言って買ってくれるほど世の中は甘くないですよね。仕事から帰ってきて、「お、ドル買いのニュースが出てるじゃん」と思ってポチっとトレードして勝てるほどは甘くないということです。
まずはストップロスを決めて、その後は変更してもよいのですが、とにかく必ず決めて入ることが重要です。ストップロスが分からない時に、考えすぎて入るのが遅れそうな時は、とりあえず何か決めて入ってそれから修正してもよいのですが、必ず決めて入ります。
利食いの戦略も決めていて、たとえばアメリカの大統領選の前で、為替がレンジになっているときには、ターゲットも割と低めになっているので、ストップロスもタイトにしないといけなくなってきます。その辺はボラティリティの乱高下によって考えています。
時間軸を小さくして考える
上昇トレンドで買う時は、買って下に落ちて投げさせられてまた上がるということが多いです。時間軸を小さくして見てみると、必ず一度下がったり上がったりしながらで、一直線に上がるわけではないので時間軸を小さくして判断します。
上がっている相場では日足だったら4時間足、4時間足だったら1時間足、その後30分15分と、自分の時間軸より少し小さい時間軸にします。時間軸を短くして売られ過ぎを買うというようにすると、あまり逆にいかないのでトレードしやすいですし、リスク管理がしやすいです。
トレードは順張りのみ?
僕は基本的には順張りですが、例えば今年のドル円のような相場だと、順張りしかしないディーラーさんであれば多分退場していると思います。僕の場合は、大きな相場は必ず取りたいので、例えば今年だったらオーストラリアドルが上がるのを狙っていて、3月19日に利下げしたところから買って、そこから38%上がりました。38%すべては取れていませんが、そういう大相場の時にはリスクを上げて取ろうと決めています。
ドル円はレンジだったので、そういう相場はやらないという人もいますが、僕は中期も長期も短期もやるトレーダーなので、これは短期のトレード、これは中期のトレード、長期のトレードと分けてやっています。短期トレードをやる時はカウンターから入ります。
トレードというのは順張りと言われています。例えばアベノミクスのようにドル円が75円から125円上がるような大相場の時は必ず順張りで入ります。これは遅れてエントリーしても間に合うという相場ですが、そういう相場は例えばドル円だったら5年に1回ぐらいです。5年に1回も無いかもしれません。ファンダメンタルズチェンジは、1年に2、3回色んな通貨であるぐらいで、実はそんなに無いのです。
あとはヘッドラインだけなので、どちらかと言うとヘッドラインでカチャカチャ動いている時はカウンターで入るというのが鉄則です。カウンターというのは逆張りなので、それはオシレーターを使います。
相場というのは、皆が上がっている時に上がったら儲かると言われていますが、基本的には逆です。上がっているものを逆張りするというのは、すごく良い訓練になって、上がっている相場で逆にカウンターで入ります。
カウンターで入るというのは、ストップロスをいくらか決めておいて、上がっている時に売りから入るということになるので、必ず売ったらすぐ逆にいきます。カウンターで逆に入るときは、ストップロスを決めることで、そのリスク量を計算するという考え方ができます。
上がっている時に順張りで買うと、その後急落することも多いのですが、不思議と上がるという期待だけで、落ちていくことを考えません。
しかし、カウンターで入るというのは、逆にいったら放っておくのではなくて、オシレーターを使って、上がっている時に買われ過ぎを売るので、すごくリスクコントロールの訓練にもなります。そういうのがトレードの肝だと思っています。
他のプロも同じ考え方?
言葉にすると同じことやっている人は多いのですが、言葉にしづらいところもあります。僕はトレードもしますし、相場をコメントする、つまり表現する、言葉にするというのはありますが、古いトレーダーさんは職人芸になっているので、言語化ができない場合も多いです。
上がりそうだと思っただけで買ったりするわけないじゃんという感じで、その後は自分のやり方で処理はできてしまいます。買ってだめだったら自分のやり方でうまく売って、経験則で何とかできてしまうのです。
僕はアスリートの本をよく読むのですが、リスク&リターンを考えます。特にメジャーリーグのピッチャーがどういう配球をするのかというのが好きなのですが、どういう風に心理戦を展開するのか?麻雀とかポーカーもそうですが、そういうことで相場の押し引きを考えるっていうのがトレードなので、テクニックというか経験則のある人はすぐうまくなります。
だめだった時はカットする、いけると思った時はriskをあげる、そういうトレーディングのコツ、押し引きを知っている人はいますが、その人が他の人にうまく説明できるかというとちょっと分かりません。
ドテンをする時の心構え
ドテンはやりますが、基本的にはお勧めしません。僕はメルマガを10年ほど配信させてもらっていますが、そのメルマガの読者さんは、ドテンしている時に成功していることが多いとイメージがあると思います。ほとんどドテンしてやられたことが無いというと大げさですが、ショートでドテンをしてだめだった場合はケガすると嫌なのであまり引っ張らないようにします。ドテンする直前まで無茶苦茶考えているので、これはいけると思ったドテンはあまり失敗しないです。
(ドテンとは・・・例えば買いで入っていたのに相場が反対いくかなという言う時に、逆に売りに切り替えるなど、正反対のポジションを持つこと)
3円や5円すぐ動く通貨に対して失敗した時にドテンして逃げるということは、僕が銀行の時も結構やっていて業界でも有名でした。普通ショートで上がってきてカットすればそれで終わりですけど、高値でひっくり返して同じポジションを倍持つので、やられると結構危険です。
その代わり倍返しで上手くいくと、やられた分は全部取り返してそれ以上儲かる可能性は出てきます。ショートにしていて思ったように下がれば儲かるし、ショートにしていてもドテンで逃げればやられないということになるので無敵のような気がします。
もしこのレベルが決壊すれば1円以上、上がるだろうということを考えてドテンします。例えば、ドル円のショートをドテンしてロングにする場合は、ドテンしたロングのストップはものすごくタイトにして考えています。倍やられるとかなり痛くリスク&リターンがものすごく高いディールをやることになるので、自分のディールを引っ張る人はやってはだめです。
僕はショートでもロングでも、引っ張る時は6か月とか10か月無茶苦茶引っ張るディールをしますが、短期ディールはスパンとひっくり返します。そういうところは職人芸なのでトレーニングしないと難しいと思います。
銀行でインターバンクディーラーという仕事をしていた時には、スキャルピングのように5分10分のディールで買ったり売ったり1日中バタバタやっていました。今どきちょっと時代遅れな感じですが、職人芸で身についたものです。ドテンは一般投資家の方には危ないのでおすすめしません。
ドテンする時も、ショートをドテンしてひっくり返した場合、そのポジションどうするかということを考えてやっていれば、リスクコントロールしているので全然ドテンでも危なくないとは思います。ひっくり返して上がったら取り返せると思ってやるのが本当に危ないドテンです。
書籍だと大相場ではこうしましょうというのは書いてありますが、逆にいった場合にこうしましょうというのはあまり書いていないようです。教科書通りにやったら全員儲かることになりますが、為替をやると7割ぐらいは負けてしまい、儲かっている人は1割と言われています。
すごく一生懸命やっているけど儲からない人もいるということは、教科書に書いていないことをしないと儲からない、ということになります。大事なのは、そこから自分のやり方を考えるということです。
ロスカットで注意しているところ
ある程度戦略を決めているのでストップロスがつく時は、はっきり言って見ないほうがいいです。もっと言うと、ストップロスがついたら「ああ、やられちゃった」と思わないことです。
例えば105円で売って107円でストップロスがついたとします。その時は、やられたと思いますが、そのまま110円とか112円にいったら、「ああ、切っておいてよかった」と思うわけです。
105円で売ったものを107円で買ったとすると、2円のストップロスがついたら、いくらぐらいやられるのかということを計算して、エントリーする前に自分でもその損失をイメージしておきます。
そうするとこのポジションだと大きすぎるので少し減らそうとか、もしくは2円引っ張ってストップロスがついたら痛いので、ストップロスをやっぱり1円にして、それから売るっていうことを考えるか。
どちらにしても、そのストップロスがつかなければ良いなという希望的観測をもつのではなく、ついた場合はどうするのかを考えておくのが大事です。ディーラーでよくできる人は、ついた場合に、その次どうするのかという次の一手を考えています。
つまり105円で売ったショートが107円でカットされたらこの世の終わりみたいになることが一番良くないわけです。勝つのも負けるのも兵家の常という言葉がありますが、トレードをするとリスクを張っているので必ずやられますが、いちいちやられたことをくよくよしてもしょうがないのです。
三国志で張飛がいう言葉では、戦争をしていると勝つこともあるけど負けることもあり、それが日常なので、いちいち戦争で負けたことを引きずっていたら兵士としては生きられないと。負けることが当たり前だと思ってやっていると平気になるので、いちいち負けた時、ロスカットになった時に感情的にならないということが一番大事だと思います。
負け慣れしている必要があるということです。負け慣れするというのは言葉的に嫌な感じがしますが、負けて、勝って引っ張って、その勝ち負けのトータルで収益が上がるのです。
負けることはあっても上手く負けるといいますか、ストップがついた時に必ず全てのディールは引っ張らないようにします。引っ張ると決めているポジションは長期だと3か月持っても5か月持ってもよいのですが、そういうものではなく最初は短期なのに、長期になって感情的に引きずるというのが一番よくないです。
露骨に言ってしまうと、ファンダメンタルズ、チャート分析、様々な分析手法はありますが、一度リスクを撮った段階でそのpositionはギャンブルだと思い、冷静に、感情的にならないということが一番大事だと思います。
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