バイデン大統領、上院共和党の「ねじれ」の場合、どうなるか?
「確定」は先にずれ込むことに
ここまでの米大統領・議会選の動きを整理しておこう。大統領選挙では選挙結果をみる限りでは、今のところバイデン氏勝利が濃厚だ。ただ、事前に予想された通り、トランプ氏側から、郵便投票の不正問題に対する訴訟、再集計を求める訴訟などがなされており、しばらくは法廷闘争となる可能性が高い。バイデン氏の勝利は当面「確定」しないことになるだろう。
12月14日には各州の選挙人が選挙結果に基づいて大統領候補に投票することになっている。万一、トランプ氏側の訴えが認められ、12月14日までに選挙人を選べない州がいくつか出て、両候補ともに過半数を得られないようなら、1月3日に召集される新議会で下院が大統領を選出するという異例の事態になる可能性がある。
下院は全体では民主党が過半数を占める模様だが、この場合、全米50州に1票ずつ割り当てられ、投票が行われる。「各州1票ずつ」という、この投票では、共和党多数でトランプ氏再選となる可能性がある。2000年の大統領選挙では僅差となったフロリダ州の投票結果を巡り、ブッシュとゴアによる法廷闘争となった。
ゴア側は機械集計ではじかれた票を手作業で再集計すべきとして訴えたが、最高裁は手作業による再集計は不可能とし、ゴア側の訴えを退けた。最終的に、ゴア候補は敗北を認め、ブッシュ勝利となった。
一方、連邦議会選挙はどうか。下院が過半数をとることができそうだが、問題は上院だ。これまでに、共和党と民主党がそれぞれ48議席を獲得している。
残るは、ノースカロライナ州、アラスカ州それぞれ1議席ずつとジョージア州2議席だ。ノースカロライナ州とアラスカ州は集計途中で、いずれも共和党の現職候補が優勢だ。
ジョージア州の2議席のうち1議席は前職引退に伴う補欠選挙で、補欠選挙がなく多数の候補が立候補していたため、どの候補とも過半数に達せず、決選投票となる。
もう1議席は、補欠選挙を経ているが、共和党現職デービッド・パーデュー氏の得票率は50%をわずかに下回っている状況で、この状況に変化がなければ、民主党のジョン・オソフ氏との決選投票になる。
決選投票は1月5日予定だ。ノースカロライナ州、アラスカ州で共和党がとったとして、共和党50議席、民主党48議席となり、共和党優勢となる。
ジョージア州では、少なくとも共和党現職デービッド・パーデュー氏の当選の可能性は高そうだが、万一、ジョージア州が2議席とも民主党となった場合、上院は50対50となる。その場合、上院での決定票は副大統領が握る。
おそらく副大統領に就任するであろう民主党カマラ・ハリス氏が決定権を持つことになり、上下両院ともに民主党が押さえるという、番狂わせになる可能性もある。いずれにしても、1月5日までは結果が確定しない状況が続く。
バイデン大統領、共和党上院、民主党下院の場合どうなるか?
なお不透明な要因が残っているとはいえ、現状で最も可能性が高いのは、民主党バイデン大統領、共和党上院、民主党下院という、いわゆる「ねじれ」状態だ。
共和党上院は、共和党下院のティー・パーティ(茶会)ほど財政タカ派ではないものの、すでに米国が大幅な財政赤字を抱える状況にあって、バイデン氏や民主党下院が要求するような大規模な財政刺激策を認めることはないだろう。
増税がない代わりに、大規模な追加経済対策や環境・インフラ投資なども実現しないことになる。そもそも大統領選前の追加経済対策が実現せず、対策が打ち出されるのは来年の新議会招集後にずれ込みそうだが、ねじれ状態の下では、その規模も民主党側が要求していた3兆ドル程度の大規模対策ではなく、1兆ドル程度と抑え気味になる可能性がある。
コロナウイルスの感染状況次第では、欧州同様、米国内でも再びロックダウン措置がなされることも想定される。コロナによる米景気の下振れリスクの高まりに対し、十分な財政政策が発動できないような状況なら、金融緩和圧力が高まる可能性がある。
その場合、金利低下、ドル安となる(株価については景気と金利のバランス次第)だろう。一方、外交・貿易交渉などの問題への対応について言えば、議会の意向に大きく左右されず、大統領権限が大きいため、ねじれの影響は相対的に小さい。