FXで長期運用する方法やメリット・リスクを解説!おすすめの通貨ペアは?
FXというと為替差益を狙ったデイトレードなどの短期取引が人気ですが、「もっとゆったりと長期運用したい」という人もいるのではないでしょうか。FXでは「スワップポイント」という金利を受け取ることで、外貨預金と同じような長期資産運用も可能です。しかも、外貨預金に比べて手数料が安く、いつでも解約可能などのメリットがあります。
但し、現在2020年10月の時点では、世界的な金利安のため、適切な通貨がないため、金利上昇局面になった時のための知識として理解しておくと良いでしょう。
今回のポイント!
- FXの長期運用で資産を増やすには金利差が大きい通貨ペアを選ぶ
- FXの長期運用のメリットは「手間がかからない」「外貨預金に比べて手数料が安い」「レバレッジで資産を増やしやすい」こと
- 一般的にはリスク管理をしっかりすれば、トルコリラ、南アフリカランド、メキシコペソが高金利でお勧めとされていますが、流動性が低いので、手を出さない。
FXの長期運用で資産を増やす方法とは?
「ゼロ金利政策」「量的金融緩和」「マイナス金利」などの意味をよく知らなくても、銀行預金がほとんど増えないことは誰でも知っているでしょう。人生100年時代といわれるなか、老後資産をどうやって貯めればよいのか悩む人も多いと聞きます。もし、日本の預貯金よりもずっと多くの金利を毎日受け取れるとしたら、資産運用として検討する価値は十分あるでしょう。
FXの長期運用で資産を増やす代表的な方法は、2つの通貨の間で生じる金利差であるスワップポイントを受け取ることです。金利の低い通貨を売って金利の高い通貨を買えば、スワップポイントという金利を受け取れます。日本の金利は世界的に低い水準なので、スワップポイントで稼ぎやすい環境といえます。
FXの長期運用で資産を増やすためのポイント
ここでは、FXで長期運用する際に押さえておきたい重要ポイントを解説します。
スワップポイントが狙える通貨ペアを選ぶ
スワップポイントで利益を得られるのは、金利差が高い通貨ペアです。日本でFXをする場合には、日本円を売り、金利が高い外貨を買って長期投資を行いましょう。
具体的には、トルコリラ/円、メキシコペソ/円、南アフリカランド/円などが、高金利を受け取れる通貨ペアとして人気です。日本唯一の公的取引所「くりっく365」によれば、トルコリラ/円の取引数量は米ドル/円に次いで第2位、南アフリカランド/円は第3位、メキシコペソ/円は第6位です。
ただ、「どの国も政治や経済が不安定そうだ」と思った人もいるかもしれません。「安心して長期運用したい」「地政学的リスクを避けたい」などと考える投資家に人気なのは、比較的高金利で格付けも高いオーストラリアドル/円、米ドル/円、ニュージーランドドル/円などです。
【2020年4月時点での政策金利】
スワップポイントが高いFX会社を選ぶ
先に紹介した金利は「政策金利」であり、その金利差がそのままスワップポイントとして受け取れるわけではありません。同じ通貨ペアでもFX会社によって金利に差があります。特に長期運用では受け取れる金利が大きく変わるため、しっかり比較検討してFX会社を選びましょう。
FX会社は、個人投資家にわかりやすいように、1日当たりスワップポイントがいくら発生するか日本円で出しています。たとえば、2020年4月時点で南アフリカランド/円では10万通貨あたり最も高額のFX会社は70円ほど、平均は約20円、最安は5円となっています。以下の表を見ると、受け取る額にかなり差があると感じるのではないでしょうか。
適切なタイミングで決済する
スワップポイントを狙った取引では長期運用が可能ですが、決済する際は為替変動に十分気を付ける必要があります。長期運用により順調に資金が増えても、為替変動により受け取ったスワップポイント以上の損失が発生することもあるからです。そのため、為替変動の動きを見て、適切なタイミングで決済することが重要です。
たとえば、レートが横這いのとき、スワップが溜まるからといって保持しようと考えるかもしれません。しかし、このような場合、レンジブレイクで一気にレートが下がることもしばしばです。スワップポイントは、こうした為替差益に比べてわずかな額なので、一旦ポジションを解消したほうがよいケースもあります。
FXで長期運用するメリットとは?
FXで長期運用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。詳しく解説します。
短期売買よりも手間がかからない
個人投資家の多くはサラリーパーソンで、仕事をしながらFXをします。頻繁にチャートをチェックすることにストレスを感じる人は多いのではないでしょうか。スワップポイントで利益を狙う場合は、一定期間売買せずに資金が増えるのを待つことが基本です。
一般的に、週足チャートで投資タイミングを計るなら保有期間は1カ月から1年程度、月足なら1年以上です。週足ベースなら1週間に1回、月足なら月に1回チャートを見るだけでいいので、あまり手間はかかりません。短期売買は忙しくて運用できないという人は、長期運用を検討してはどうでしょうか。
外貨預金より手数料が安い
「結局のところ、FXの長期運用と外貨預金は何が違うの?」と思っている人もいるかもしれません。確かに、レバレッジ(※)1倍でFXを長期運用した場合、大まかにいえば外貨預金と変わらないのは事実です。
しかし、多くのFX会社では取引手数料が無料なので、外貨預金よりも経費がかかりません。ただ、無料とはいっても、スワップポイントやスプレッド(売り取引価格と買い取引価格の差)の設定によってFX会社は実質的に手数料を取っています。それでも、実質コストで比較すると外貨預金よりずっと安いので、FXのほうがお得です。
なぜこうした差が生じるかというと、FX会社はデイトレーダーのような活発に取引する人たちから手数料を十分取っているからです。そのため、長期運用する場合で考えると、スワップポイントやスプレッドから差し引かれるFX会社の取り分はわずかな割合です。つまり、長期運用する人は、短期運用の人たちのおかげで安い手数料の恩恵を受けられるのです。
※レバレッジ:テコの原理を意味する言葉。10万円の必要証拠金で50万円に相当する外貨を買うとき、レバレッジは5倍。
レバレッジをかけた取引ができる
先にも説明したとおり、FXはレバレッジをかけた取引が可能です。リスク管理には十分注意する必要はありますが、少ない資金でも大きく増やせるのは大きな魅力といえます。
たとえば、米ドル/円が1ドル110円だったとしましょう。もし、1万通貨取引したい場合、レバレッジなしでは約110万円必要です。しかし、レバレッジ5倍なら約22万円、25倍なら4万4,000円の元手(必要証拠金)があれば取引できます。
ただし、損をした場合もレバレッジが効くので要注意です。現物株ならストップ安でも30%ぐらいの損失かもしれませんが、最大限レバレッジを効かせていれば簡単に資金が半減するでしょう。
FX会社は、口座所有者を事実上守るため、一定の割合の必要証拠金を維持できない場合に強制ロスカットしてしまいます。「ノイズのような動きでロスカットになった後、想定していたレートに戻った」といったことがないよう、ある程度余裕を持って資金運用することが必要です。
FXで長期運用する際のリスクを押さえておこう!
FXの長期運用は、比較的リスクが少なく、投資初心者でも取り組みやすい方法です。しかし、短期運用にはないリスクもあります。堅実に資金を増やすためにも、どのようなリスクがあるか知っておきましょう。
為替変動のリスク
円やあらゆる通貨を扱う通貨相場は、為替市場によって日々刻々とレートが変動するため、予期しない変動によって損失を被る「為替リスク」もあります。特に、新興国の通貨は為替リスクが高く、決済時にマイナスになってしまうこともあるため注意しましょう。
加えて、個別銘柄や株価指数にはある「サーキットブレーカー(値幅制限)」が、FXにはありません。「仕事中に予想外に急激に変動して大損していた」ということもあり得るので、十分注意が必要です。
ほとんどのFX会社では、あるレートに達したらロスカットするなど事前注文が可能なので、長期運用であっても常に逆指し値の注文を入れておきましょう。順調にレートが推移しているときは、必要に応じて利益確定ラインを引き上げることで、リスクを減らし収益を安定させることができます。
マイナススワップのリスク
金利はその国の金融政策や経済の状況などにより毎日変動しています。金利の変動によりスワップポイントがマイナスになることもあるので注意が必要です。
また、政策金利上はプラスであっても、FX会社によってはスワップポイントがマイナスになることもあります。スワップポイントはFX会社が利益を得るために設定を変えるので、このような事態が生じることがあるのです。利用しているFX会社の情報を必ず確認しておきましょう。
流動性のリスク
「流動性リスク」とは、買いたいときに買えない、売りたいときに売れないリスクのことをいいます。FXでは買いたい人と売りたい人がいて、はじめて取引が成立するので、このようなリスクがあるのです。
為替市場は株などと違い規模が大きいので、比較的、流動性リスクは小さいといえるでしょう。ただし、新興国の通貨など、マイナーで取引量が少ない通貨では、売りたくても売れない状況も起り得ます。取引ができる場合でも、流動性リスクが高まっている状態では、スプレッドが通常より大きく開くのが特徴です。
そのため、利益確定やロスカットの自動注文を入れていても、執行レートが大きく違う可能性が高くなります。スプレッドが変動しない「固定スプレッド」を採用している会社でも、安心できません。「原則固定であり、非常時は保証しない」などとしている会社がほとんどです。
FXで長期運用するために知っておきたいこと
長期運用する場合でも、経済や為替レートの動きはチェックする必要があります。ここでは、長期運用する際に知っておきたい情報や資金管理の方法を紹介します。
為替相場を動かす要因
為替レートを決めているのは、需給関係です。その通貨を買う人が多ければ上昇し、売る人が多ければ下落します。需給関係に大きな影響を与える要因の一つは、貿易収支や経済成長率です。
たとえば、日本で自動車産業の輸出が好調なら、外貨で収入を得て、それを社員の給与などのために円に変える動きが強まるため、円高要因になります。また、日銀の超金利政策の見直しが将来的に起きるとしたら、それも大きなインパクトを与えるでしょう。米国債が魅力的であれば、円を売って米ドルを買う要因になりえます。
そのほか物価や地政学的リスク、市場心理など広範囲の経済活動が為替相場に影響するため、日頃から新聞やテレビニュースでその国の状況をチェックする必要があります。
ただし、これらは一般向けのメディアなので、自分なりに情報を整理・検討しなければなりません。投資初心者や時間・労力を節約したい場合は、投資目的にあったメールマガジンやポータルサイトなどを活用するのがおすすめです。
経済指標の発表スケジュール
為替相場が短期的に動く要因として、経済指標の発表も挙げられます。基本的に、経済指標を発表する時期は決まっているので、事前にチェックしておきましょう。ただし、雇用統計のように日時が決まっていることもあれば、日銀発表のように日は決まっていても、時間が決まっていないこともあります。
スワップポイント狙いで長期運用する場合には、経済指標のスケジュールはリスク回避に使うのが一般的です。為替利益によって大きな利益を得られることもありますが、逆に、大きな損失になることもあるからです。リスクを回避したい場合は、経済指標が発表される直前に決済しておきましょう。
資金管理の方法
FXでは損失リスクをできるだけ減らすことが重要です。長期運用の場合でも為替変動のリスクがあるため、あらかじめ利益確定や損切りポイントを考えておきましょう。
「バルサラの法則」という確率表では、勝率5割の場合、「損失:利益=1:2.8」以上にすることで、破産確率をゼロにできます。もちろん、これは同じ金額で投資を続けられたらの話です。そのため、順調に資金を増やせている投資家の多くは、1回の損失を投資資産の2%以内に抑えることによって資金管理しています。
長期運用では、1回で大きく資産を増やしたいと思いがちですが、このような資金管理の基本は重要です。ただ、長期投資では統計的な恩恵を受けられるまでの期間が長いというデメリットがあります。複数の通貨ペアで運用してリスクを分散するのは、心理的な負担を減らす方法の一つです。
FXで長期運用する場合におすすめの通貨ペア
長期運用を考える場合は、多くのスワップポイントを受け取れる通貨が適しています。一般的にお勧めといわれている通貨ペアを紹介しますが、現在の相場環境では基本的に新興国通貨には手を出さないことをお勧めします。
トルコリラ/円
トルコリラの金利は世界的にみても高い水準にあります。2020年4月時点での政策金利は8.75%で、金利がマイナス0.10%の日本円との金利差は8.85%となっています。あるFX会社では1万通貨所有すれば1日あたり80円のスワップポイントが発生するので、1年で2万9,200円のスワップポイントを受け取れる計算です。
2020年現在、トルコリラは15~16円で推移しているので、少ない資金で始められるのも魅力といえるでしょう。もちろん、投資資金が多ければ、大きく資産を増やせる可能性もあります。ただし、為替変動のリスクがあるため、相場の急落に気を付けることが必要です。
南アフリカランド/円
南アフリカランドの金利も世界的に高く、2020年4月時点で日本円との金利差は5.35%です。南アフリカはアフリカ諸国のなかでも経済的に発展し、鉱山資源にも恵まれた資源国です。もともと、資源国は投資が活発になりやすいことから、高金利になりやすいという特徴を持っています。オーストラリアドルやニュージーランドドルの金利が高いのもこのためです。
つまり、長期運用・資源国・高金利の投資スタイルの王道的な通貨ペアが南アフリカランドといえるでしょう。トルコやメキシコも高金利ですが、南アフリカほどの資源国ではありません。ただし、南アフリカも政治的に不安定な面があるため、価格の急変には気を付けたいところです。
メキシコペソ/円
メキシコペソと日本円の金利差は、2020年5月時点で6.60%となっています。先に紹介した「くりっく365」では、メキシコペソ/円は第6位の取引量となっており、年々取引額が多くなっている人気上昇中の通貨です。
ただし、新型コロナウイルスによって首都メキシコシティでは死者が3千人に迫るなど、被害が深刻です。また、メキシコの資源である原油も歴史的な価格下落によって大きな損害が発生しており、実体経済に影響が広がることも予想されます。投資対象に選ぶ場合には、価格変動を注視していく必要があるでしょう。
オーストラリアドル/円
オーストラリアドルの政策金利は0.25%で、日本との金利差は0.35%となっています。新興国と比べるとそれほど高いスワップポイントではないものの、安定した値動きが魅力です。「長期運用でコツコツ増やしたい」「日本の預貯金よりは資産を増やしたい」と考えている人におすすめできます。
最低取引量が1,000通貨となっているFX会社もあるので、少額資金で長期運用を始めたい人にもぴったりです。また、リスク分散の通貨ペアとしても取り入れやすいのではないでしょうか。
FXの長期運用で稼ぐならタイミングが大切
FXでは「スワップポイント」という金利を受け取ることで、外貨預金と同じような長期資産運用も可能です。金利が低い時期(金利差が小さい時)に買っておくと金利上昇局面で価格も上昇するので、スワップポイントと為替差益の両方を得ることができます。
どのような組み合わせが良いかは、投資家向けの助言のイーグルフライなどを活用しながら、効率的に資産運用していきましょう。