中東情勢と「有事のドル」

2月28日、トランプ政権とイスラエルによるイランへの軍事・政治中枢への直接攻撃が始まりました。
イラン側も準備は整っていたようで即座に反応し、中東各地の米軍基地や親米諸国への報復攻撃を開始しました。この報道を受け、週明けのマーケットでは初動はリスクオフとなっています。
教科書通りの「リスク・オフ」
為替市場における初動は教科書通りで、リスクに敏感なAUDやNZDが売られる一方、安全資産のドルやスイスフランに資金が集中しました。
本来であれば、円もリスク・オフでは買われやすい通貨ですが、エネルギー輸入依存度が高いことを世界中の投資家は知っており、すっかり輝きを失ってしまい売り通貨に回っています。
まだ結論付けるのは早過ぎるでしょうが、今回が過去の紛争と決定的に違うのは、今回の「ドル買い」の背景には、単なる避難先としての需要だけでなく、「エネルギー自給率」という実利的な背景が色濃く反映されている点ではないでしょうか?
それもあり、円は売り通貨に甘んじるしかありません。
「産油国通貨」としてのドル
イランによるホルムズ海峡の実質的な封鎖措置の可能性は、世界の原油供給の約2割を人質に取る形となります。
そのほとんどがアジア、特に中国向けとは言え、ブレント原油先物は一時13%超の急騰を見せ、1バレル80ドルを伺う展開となる中、為替市場では「原油高=ドル高」の相関が強まっています。

チャート: TradingView
アメリカは現在、世界最大の産油国であり、エネルギ輸出国としての地位を固めてきました。
原油価格の上昇はアメリカの貿易収支改善に有利に働くため、エネルギー輸入国である欧州や日本、そして多くのアジア諸国の通貨に対して、ドルの優位性を一段と高める結果となっています。
FRBの政策転換を阻む「インフレ再燃」の影
ただし、ドルにとっては嬉しい材料ばかりとは限りません。
為替相場の中長期的なトレンドを決定づける金利見通しも、イラン情勢によって激変しているからです。
市場は今年、FRBによる利下げサイクルを期待していました。
しかし、中東情勢の悪化に伴う原油・物流コストの急騰が現実化すれば、沈静化しつつあったインフレに再び火をつけるリスクを孕んでいます。
エネルギー価格の上昇が持続的になれば、FRBはインフレ期待の再燃を防ぐために利下げを撤回、或いは再利上げすら検討せざるを得なくなるかもしれません。
この「高金利の長期化(Higher for Longer)」への警戒感が、他国との金利差拡大を意識させ、ドルをさらに押し上げるエンジンともなりかねないでしょう。
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