英中銀「3月利下げ」へのカウントダウン

2026年に入り、英国経済は大きな転換点を迎えています。
長らく英中銀(BOE)を悩ませてきた「労働市場の逼迫」と「高止まりする賃金」という二重苦が、ついに明確な緩和の兆しを見せ始めました。
今週火曜日に発表された最新の雇用統計データによると、英国経済が直面しているのは単なる景気減速ではなく、構造的な調整を伴う「景気と労働市場の冷え込み」となるリスクが浮上してきました。
「パンデミック以降最悪」の雇用情勢
英国国立統計局(ONS)が2月17日に発表した数字は、久しぶりにマーケット参加者に少なからぬ衝撃を与えたと私は感じました。
昨年12月の失業率は予想 5.1%に対し、結果は5.2%まで悪化、この水準はパンデミック時以来の高水準となりました。さらに恐ろしいことに、パンデミックという特殊な状況を除けば、この数字は2015年以来の最悪水準だそうです。

出典:英統計局(ONS)
さらに深刻なのは、給与支払人数(ペイロール)の減少数で、今年1月までの1年間で13万4,000人もの雇用が失われたという予想が出ており、企業の採用意欲が明確に減退していることを示唆しています。
そして、イギリスに住むディーラーたちが最も注視してきた12月の賃金上昇率(ボーナスを除く)は4.2%で、内訳として公的部門が+7.2%に対し、民間部門は+3.4%まで低下しています。
この民間部門の数字は、過去約5年間で最低の伸び率であり、2月5日の英中銀金融政策理事会で「インフレ目標2%と整合的であると考える賃金上昇率3.25%」というマジックナンバーに手が届くところまで近づいています。
二極化する労働現場
今回の数字で興味深い点は、雇用の弱さが全産業に均等に広がっているわけではないという点かもしれません。
サービス業を直撃
今回の雇用悪化の「震源地」となったのは、ホスピタリティ(接客・宿泊)などの対面型サービス産業であり、これには明確な理由があります。
それは2024年秋の予算案で発表された国民保険料の企業側の負担増と、大幅な最低賃金の引き上げです。
本来であればこの政策は、労働者の生活を守るという大きな目標がありましたが、負担額が大幅に増えた企業側はそのコスト増に耐えきれず、「採用抑制」に走ったのです。
その中でも特に18〜24歳の若年層失業率が14%という、2015年以来の異常な高水準に達しているのは、皮肉な結果だと言わざるを得ません。
というのは、AI(人工知能)によるエントリーレベル職の代替リスクと、政策によるコスト増の「しわ寄せ」を同時に、若年層の労働者が受けていることを示唆しているからです。
サービス業以外
一方で、サービス産業以外の民間部門では、雇用者数の減少はまだ緩やかで、大量解雇の嵐が吹き荒れているわけではないようです。
つまり、現在の英国労働市場は「全てのセクターでの崩壊」ではなく、政策の影響を受けた特定セクター主導の「緩やかな雇用減速」の状態にあると言えるのかもしれません。
英中銀の反応は?
2月17日の雇用統計を受け、市場の関心は「英中銀は3月に利下げに踏み切るのか?」という一点に集まっています。
2月5日の英中銀理事会では、「5対4での据え置き」と極めて僅差での決定で、ベイリー総裁の1票で情勢が変わります。
これまで「賃金の粘着性」を理由に政策金利を据え置きにすべきだと主張してきたタカ派の理事たちも、今回の民間部門3.4%という賃金伸び率を無視することはできないでしょう。
そして、仮にベイリー総裁が3月も据え置き票を入れたとしても、マン理事が据え置きから利下げに変われば、利下げ成立となる状況です。
英中銀はこれまで、景気下振れリスクに対し慎重な姿勢を崩しませんでしたが、2月5日発表の四半期マクロ経済予想では、失業率が春までに5.3%に達するという予測を披露していますし、2026年の成長予測を0.9%に下方修正せざるを得なかった現状を踏まえれば、「景気後退を防ぐための保険的利下げ」に動く正当性は十分に整ったと言っても過言ではないかもしれません。
スターマー政権への逆風
今年のスターマー英首相は、厄年かもしれません。
経済指標の悪化は、今月26日に実施されるマンチェスター郊外の補欠選挙や、5月の地方選挙を控える中、スターマー首相率いる労働党政権にとって最悪のタイミングで訪れました。
保守党政権から引き継いだ負の遺産を整理する立場にあった労働党ですが、若年層の失業がどんどん悪化しているという批判は、政権の支持基盤を揺るがしかねません。
2025年第4四半期の経済成長率が0.1%(前期比)と低迷する中で、いかにして雇用を守りつつ、英中銀に金融緩和の余地を与えられるか、政権の舵取りは極めて難しい局面に立たされています。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2026/2/18の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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