ポンドの重石になってきた財政リスクと政治危機

これを受け、ポンドは対ユーロで下落。英10年物国債利回りは窓開け上昇(国債価格は下落)しました。
二転三転する予算案予想
話は遡りますが、3週間前のある朝、突然何の前触れもなくリーブス財務相が記者会見をし、2024年総選挙で立てた選挙公約を破ることを認めながら、所得税率引き上げを発表しました。ところが、先週金曜日にはFT紙が、引き上げ撤回を報道したのです。
撤回の理由としては、「マクロ経済予想の責任者である財務省予算責任局(OBR)が最新の賃金の現状と将来の伸びに関する改善されたデータを財務相に送り、将来の税収見通しが上方修正されたため、所得税率の引き上げが不要になった。」と説明していますが、まだこの撤回が公式決定なのかは、定かでありません。
上述のように労働党は総選挙で「所得税率、キャピタルゲイン税などの税率引き上げは、絶対行わない」と公約しましたが、面白いことに英10年物国債利回り(長期金利)の動きを見ると、選挙公約破りの所得税率引き上げ発表時は反応せず。税率引き上げ撤回の際に、債券が売られ金利が上昇したのです。
トラス・ショックを繰り返さないため、財政規律を最優先する姿勢は維持される見通しですが、二転三転の心変わりは、国民だけでなく投資家の信用もなくしたということでしょう。
不足額は200〜250億ポンド?
イギリスでは「head room」という単語で表現されますが、予算案ではこの規模がその後の相場形成の決め手となります。
これは財務省が日々のやりくりのために必要とする額に財政ショックに耐えられる予備費が上乗せされた額のことを示し、今回の予算案で財務相は、200〜250億ポンドの不足分を穴埋めするつもりだと言われています。
夏頃は350億ポンドの不足と言われていたのが、約半分近くまで見通しが変更された背景には、長期金利の変動があります。
ある報道で読んだことですが、国債利回りが0.1%動くたびに、約10億ポンドの赤字の増減が発生。そのため、予算案発表日までにイギリスの国債利回りが低下すれば、不足額は縮小するという仕組みです。
容易に想像がつきますが、仮に予算案に向け国債利回りが低下したため、赤字額を少なく見積もってしまった場合は、その後に利回りが上昇へ転じれば、あっという間にhead roomの規模が足りなくなります。
そして、最終的には赤字国債増発懸念による財政不安説が繰り返されるという脆弱さと背中合わせである点には、ポンドを取引する私達も十分すぎるほど気をつけたいと思います。
政治的にも微妙
選挙公約破りの所得税率の引き上げについては、労働党内部からも大きな反発がありました。そのため、撤回が事実であれば、財務相が労働党議員の圧力に屈した形になります。
事実、先週の撤回報道直前に、労働党の保健相がスターマー首相を引きずり降ろすクーデターを企てていると一面トップで報道されました。
これはすぐに否定されましたが、この週末にも「スターマー首相とリーブス財務相のコンビが居座れるのは、時間の問題」という論調で書かれている報道が多数あり、もしかしたら本当に時間の問題かもしれません。
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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2025/11/18の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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