日米金利差からみたドル円の適正水準は138円程度

高市氏がアベノミクスを踏襲するとの見方から円安基調が続いているが…
高市氏の自民党総裁就任を契機にドル円相場は上昇し、10月10日に一時153.27円まで円安・ドル高が進んだ。
円安は、高市氏が安倍元首相の「アベノミクス」路線を継承し、財政支出や減税などを通じた景気刺激を重視し、利上げには慎重な立場を取る、との見方が強まったためだ。
日銀も、おそらく首相になるであろう高市氏と、就任当初から対立することを避けたいところで、10月末の政策決定会合での利上げは見送るのではないか、との思惑が強いようだ。
実際、オーバーナイト・インデックス・スワップ(OIS)市場での、10月政策決定会合時の予想政策金利は、9月30日時点で0.65%(利上げ確率は68%)に上昇していたが、高市氏の自民党総裁就任を契機に急低下し、10月17日時点で0.53%(利上げ確率は20%)となっている。
ただ、次々回12月政策決定会合時の予想政策金利は、9月30日時点で0.68%、10月17日時点で0.65%とさほど変わっていない。
つまり、高市総裁決定前の市場予想は「利上げがあるとすれば10月政策決定会合で」という予想だったが、高市総裁決定を機に「高市氏への忖度から10月会合での利上げの可能性は薄れたが、なお12月までに利上げが実施される可能性はある」という見方に変わったということになる。
だが、そもそも、市場が予想するように、高市氏は「アベノミクス」路線を継承し、利上げには慎重な立場を取って、その結果としての円安を容認する、という見方は正しいのか?
現在の経済状況は、安部元首相が「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」の「3本の矢」からなる「アベノミクス」を打ち出した、2012年頃の状況とは全く異なる。
当時の日本経済は東日本大震災の後遺症が残るなかで、需要が供給力を下回る需給ギャップが大きく、円高下で物価も低迷していた。そのため、短期的な景気対策として、財政金融面からの景気刺激策をとることは正当化された。
当時の、インフレになれば日本経済は良くなるとの見方は間違っており、また、実際のアベノミクス政策では、3本の矢のうち「大胆な金融政策」と「機動的な財政政策」ばかりに重点が置かれ、最も重要だった「民間投資を喚起する成長戦略」が軽視された。
効果的な成長戦略が打ち出されなかったため、その後も日本経済の長期低迷は続いたが、「大胆な金融政策」と「機動的な財政政策」が、当時の循環的な景気悪化に歯止めをかけたことは事実だろう。
これに対して、現在の日本経済は、GDPからみた、モノの需給ギャップがほぼ解消されている。また、人手不足など労働供給面での供給力不足が深刻化しており、経済成長の制約要因になっている。加えて、円安による物価高が続き、政府には、最大の課題として物価高騰対策が求められている。
そうした状況で、安易な財政金融面での景気刺激策を重視したアベノミクスが踏襲されるとすれば、それが経済に及ぼすプラス効果は限定的であり、インフレの加速という副作用ばかりが表面化するだろう。
つまり、現在の経済状況からみて、もし、高市氏が財政金融面での景気刺激策を重視したアベノミクスを踏襲した場合、人手不足による供給制約によりGDP押し上げ効果は限定的で、一方、インフレ懸念の高まりと財政悪化懸念により、国債利回りなど長期金利上昇が予想される。
そうしたなかで、もし、高市氏が金利上昇を阻止するため、日銀の利上げを政治的に抑制しようとすれば、インフレ懸念が一段と強まるだろう。
仮に、日銀の利上げが抑制されても、国債利回りなど長期金利はむしろ上昇ピッチを速め、それが経済に悪影響を及ぼすだろう。
もちろん、高市氏が、安倍元首相とは違って、短期的な景気刺激策ではなく、「成長戦略」に徹するというのであれば評価できる。
だが、成長戦略は本来、市場の淘汰、産業の新陳代謝を加速させる政策であり、痛みを伴う場合が多い。政権基盤の安定していた安部元首相でも成しえなかった、痛みを伴う施策を、現在の政治状況で、高市氏ができるかどうかは疑わしい。
ドル円の適正水準は?
ドル円相場は、昨年7月の高値161.7円をピークに下落し、昨年9月、今年4月にそれぞれ140円割れ目前まで円高が進んだが、今年4月以降は円安基調となっている。
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2025/10/20の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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