関税交渉と貿易黒字の通貨の行方

今年の金融市場はドナルド・トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争にふりまわされている展開。
新自由主義経済の基準からするとあまりにも非合理的に思えるため、多くの投資家に衝撃を与えました。
FTの著名コラムニストであるジリアン・テットは「合理的」かどうかは別として、これはアメリカだけでなく、他の多くの国においても、経済が政治ゲームに取って代わられる世界への移行を反映しています。 そのため、ジョンズ・ホプキンス大学、ダートマス大学、キール大学、スタンフォード大学などの大学は、 IMF、ミルケン研究所、アトランティック研究所などの機関と共に、「地政経済学」プログラムの拡充を目指しているとしています。(FT ジリアン・テット)
今週も彼女が指摘するように、各主要経済指標よりも、マーケットは政治に大きく左右されそうです。
まず先週の米国と英国の合意ですが、アメリカは英国に対して貿易黒字国です。トランプ大統領が問題視する貿易赤字の相手ではありません。そのため、英国はちょっと例外だと見る参加者もいます。
実際、対米国で黒字の多い台湾ドルは急騰しています。米中の関税交渉の報道でかき消されていますが、先週の大きな報道のひとつに台湾ドルの急騰がありました。 5月2日と5日の台湾ドルは7-8%という歴史的な急騰をみせました。台湾ドルの上昇に連れ、アジア通貨も総じて上昇。
そういう意味では、対米国で貿易黒字の多い中国との交渉がすんなり合意するとも思えませんが、先週までの米国と中国は極めて高い関税を掛け合うという流れになっていましたので、それと比較すれば、good newsといえるのでしょう。
マーケットでは2つの動きがあると考えています。
トランプ関税の影響でのrisk on、offで動く動き、一方で貿易黒字の多い国、例えば台湾ドルなどは通貨高を強いられています。この意味においては、risk onでの「株高」により、円安にふれていますが、先週のように台湾ドルの急騰に連れ同じ貿易黒字である円も通貨高になるという材料もあります。
現在の環境下では、risk onなので株はlong(ロング)。貿易黒字なのでドル円は戻り売り継続というのが、個人的にラフに描いている見方です。
ここでちょっと想定外だったのが、マーケットの円long(ロング)が多い影響で戻りが大きいこと。
ベッセントが望むように、ドル急落は避けるが貿易黒字の多い通貨は通貨高になるという展開になっています。よって台湾ドルの急騰を横目にドル円のスタンスは変わらず。
日経先物は急落したシーンで、少なくともcall(コール)を買っておけばよかったのですが、動けなかったので、辛抱強く押し目待ち。
ドル円は売り注文をいったんキャンセルしていますのでriskは0.2だけであるため、stop(ストップ)もいったんはずしています。
この後リスクを増やす局面でドル円のstop(ストップ)も設定します。
西原宏一のシンプルトレードの一部を抜粋してお届けしています。
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