頭で考えたいトルコリラが対円にて20年で13分の1になるからくり
金融市場の動きを整理する
足元の金融市場の動きを少し整理してみると、金価格が2000ドルの大台に載せ、ドルが主要通貨に対して全面安となっています。
この背景にあるのは、米金利が低下しているということですが、足元で際立っているのは新興国通貨の中のトルコリラです。対円にて20年で13分の1になっています。
トルコリラが対円にて20年で13分の1になるからくり
トルコリラが対円にて20年で13分の1になるからくりについて考えていきましょう。20年前は、なんと196円したトルコリラですが、足元で14円70銭程度ということで、史上最安値を更新しています。
結論から申し上げると、高金利通貨であれば見た目(その金利)に世界の投資家が群がり、資金が集まって通貨高になっていてもよいはずですが、全くそうなっていません。こちらは、起こるべくして起こった結果であり、主要通貨や他の新興国通貨でも同じロジックが通用するので、波及経路やメカニズムを理解して今後にうまく活かしていきたいところです。
トルコリラが安い背景に関する事例3つ
その理由としては、見た目の金利と実際の金利が大きく異なるということです。トルコリラが安い背景に関する事例3つについて紹介します。
1.慢性的な経常赤字国という現状
新興国は多くの国で外貨準備が少なく、通貨安になった時に打てるカードが非常に限られています。さらに多くの国では、慢性的な経常赤字国ということです。海外からの継続的な資金流入がないと、自然と通貨安になってしまいます。
主要国の場合、米国もそうですが、米国債の格付けが世界最高の水準なので、元金・利息の支払いが確実になっています。よって、結果的に米国には継続的な資金流入があり、大きな問題にはなっていいません。
2.中央銀行の独立性が担保されていないから
これまで、トルコのエルドアン大統領は、中央銀行に対して利下げを強要し、中央銀行はこれに屈して利下げをしてきました。その場合、中央銀行の外貨準備が少なすぎるという問題が生じてきます。自国通貨買いの介入に限界があり、トルコリラを買い支えることができないということになります。
3.トルコの政策金利は10.25%と、主要国・新興国の中でも高いから
高い金利を求めて資金が集まってくることを「イールド・ハンティング」と呼びます。そして、トルコの物価上昇率は、2020年7月で11.8%となっています。
少し金利について説明すると、
名目金利=実質金利+予想物価上昇率
実質金利=名目金利-予想物価上昇率
となります。
この計算から、トルコの実質金利は以下となります。
10.25-11.8=-1.55%
このように見ていくと、トルコに投資した投資家は、実質金利がマイナスの国にスワップ金利を求めて投資しているのと同じことになります。
金融機関に預金あるいは、債券を買って金利を狙った場合、その間の物価上昇率に金利が負けてしまい、結果的に元本が目減りしているということになるのです。そして、その分が為替で調整されているということになります。
高金利通貨が、通貨高にならない理由
まとめますと、高金利通貨であれば見た目(その金利)に世界の投資家が群がり、資金が集まって通貨高になっていてもよいはずですが、全くそうなっていない理由は、
- 慢性的な経常赤字国であること
- 中央銀行の独立性が担保されていないこと
- 予想物価上昇率が高いこと
が要因であり、起こるべくして起こった結末です。
主要通貨や他の新興国通貨でもロジックは同じですから、こういった波及経路やメカニズムを理解して今後に活かしていきましょう。
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