公開日 2025年1月21日

欧州の政治不安は金融の波乱要因に

想定通り、賃金やサービス物価の上昇率が鈍化していかなかった場合、ECBの利下げスケジュールにも狂いが生ずるだろう。それは欧州の金融市場を動揺させることになるだろう。
欧州の政治不安は金融の波乱要因に

欧州が協調してトランプ大統領の米国第一主義に対峙すべき局面だが…

米国ではトランプ新大統領が誕生し、世界は彼の一挙手一投足に振り回されそうだが、トランプの米国に対峙すべき欧州では政治が混迷している。

特に、中軸となるべきドイツとフランスの政権は不安定で、欧州が結束してトランプ大統領の米国第一主義の政策に対峙することは難しくなっている。

また、政治不安は欧州の金融の混乱につながる。欧州では、既存の政治エリート層に対する国民の不満や移民、難民の増加に反対する世論を受けて、自国優先、反EUの考えが強い右派が勢いを強めている。

「自国優先」の考えは米国も同様だが、欧州各国がそれぞれ自国優先の考えを強めれば、協調を前提としたEUは崩壊する。

まず、EU主導の財政規律が損なわれる。長い目で見れば、協調を前提としたEUの枠組みが崩れ、EU離脱やユーロ分裂の動きにつながる可能性もゼロではない。

政治不安表面化のきっかけになったのは、昨年6月の欧州議会選挙だ。昨年6月6日~9日に実施された欧州議会選挙では、中道右派の欧州人民党(EPP)グループが議席を伸ばし、中道・親EU会派がなんとか過半数を維持した。

だが、イタリアでは、ジョルジア・メローニ首相が率いる「イタリアの同胞」などが所属する「欧州保守改革グループ」、フランスでは、同じく極右・右派でマリーヌ・ルペン氏が率いる「国民連合(RN)」などが所属する「アイデンティティと民主主義グループ」の議席が伸び、ドイツでは極右で当局からも警戒されている「ドイツのための選択肢(AfD)」が議席を伸ばした。

フランスでは財政赤字削減を巡り、少数与党と左右両派の対立が続く

この選挙結果を受けて、何を勘違いしたか、フランスのマクロン大統領は、欧州議会選挙とは異なる結果を期待して、フランス国民議会(下院)を解散した。

2916年に当時の英キャメロン首相が、自身がEU離脱に反対であるにも関わらず、政治基盤強化を狙って、EU離脱の是非を問う国民投票を実施し、結果として、イギリスがEU離脱することになった。

マクロン大統領は同様の間違いを犯したようだ。昨年6月30日、7月7日のフランス総選挙では、右派の勢力を抑えるため、マクロン大統領が左派と手を組んだため、結果的に、左派連合が躍進し、最大勢力となった。

マクロン大統領は中道右派の共和党出身で、英国のEU離脱交渉のEU側の主席交渉官を務めたバルニエ氏を新たな首相に指名し、大統領を支持する中道会派と中道右派の共和党系会派によるバルニエ政権が誕生した。

だが、最大勢力となった左派連合は新政権に参加することなく、与党は議会の過半数を握ることができない少数与党の内閣となった。

最大勢力となった左派は財政支出拡大を主張したが、バルミエ政権は、財政赤字拡大によよりEUの規制に抵触するという理由で、それを認めなかった。

議会採決では法案や予算を通すことは難しい状態のなか、常に、議会採決を迂回する憲法上の特例措置などを駆使しなければならない状況に陥った。

結局、最大勢力となった左派と、同じ財政赤字削減に反対する極右が協調して内閣不信任案を提出したことで、バルニエ内閣は昨年12月に総辞職に追い込まれた。

その後、マクロン大統領は長年の盟友でもあるバイル氏を新首相に指名したが、状況はバルミエ政権時と全く変わっていない。バルミエ前首相による2025年度予算案は内閣不信任案可決により廃案となっており、バイル新政権は2月にも新予算案の審議を始める必要がある。

だが、財政赤字削減を唱えるバイル政権とそれに反対する左右両派との対立は続いており、左派連合と極右が協調して内閣不信任案を提出すれば、少数与党のバイル内閣は倒れることになる。

国民議会解散が解禁される年後半にも再び総選挙が実施される可能性は高く、政治の混迷が続く。

2月23日のドイツ総選挙では極右の「ドイツのための選択肢」が躍進、キリスト教民主・社会同盟主導の大連立内閣の誕生へ

一方、ドイツでは、ショルツ首相率いる、社会民主党(SPD)主導の連立政権が崩壊した。

ショルツ政権は3年前の2021年12月に、中道左派の社会民主党、企業寄りの政策を重視する自由民主党(FDP)、気候変動対策を前面に掲げる緑の党、の3党連立政権で、もともと政策理念の違いが不安定要因だった。

この3年間でのショルツ政権の実績としては、ウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機への対応や世論が分かれる中での昨年4月の原発完全停止(脱原発)など、困難な問題へ対応したとの評価もないわけではない。

だが、新設住宅への暖房設備に再生可能エネルギー利用義務づけが、国民に大きな金銭的負担を強いていると批判されて反発を買い、支持が下落した。

さらに、リベラル色の強い緑の党と、企業寄りの政策を重視する自由民主党の対立が表面化して政治が停滞し、政権をまとめられないショルツ首相にも厳しい評価が増えた。

結局、昨年12月16日、ショルツ首相の信任投票が実施され、反対多数で否決された。

この信任投票では、最大野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に加え、連立パートナーだった自由民主党(FDP)が反対し、やはり連立パートナーだった緑の党は棄権した。

来月2月23日に20年ぶりとなる議会解散に伴う総選挙が実施される。

最近の世論調査による各党の支持率をみると、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)が約32%と首位で、昨年6月の欧州議会選挙で第2党となった、自国優先の「ドイツのための選択肢(AfD)」が約19%とそれに続く。

現与党の社会民主党(SPD)は17%程度で第3位、自由民主党(FDP)は3%程度にとどまっている。

したがって、総選挙後の政権は、キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)による大連立内閣になる可能性が高いと言われている。

だが、ドイツ経済は、エネルギー価格高騰と主要輸出先である中国経済悪化に加えて、トランプ大統領の輸入関税導入に直面し、
一段と低迷するおそれがある。

右傾化を強めているキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と左傾化を強める社会民主党(SPD)がどこまで協力して、ドイツ経済の立て直しを図れるかが疑問だ。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2025/1/20の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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