フィンセン(FinCEN)文書とは何か?今後どうなるか?
9月21日、世界の大手金融機関による総額2兆ドルもの不正資金のマネーロンダリング(資金洗浄)などの事実が「フィンセン(FinCEN)文書」として漏洩、公開されたことが、世界中で報道され、世界の株価が急落しました。その内容は国際的な金融機関などが秘密にしてきた、不正取引の実態で次のようなものです。
- 複数の大手銀行を経由した資金洗浄の手口
- 犯罪者が匿名企業を使って資金を隠していた様子
- 金融機関が詐欺に利用されていると知りながら放置
- 金融機関がオフショア企業の所有者を把握しないまま送金
- 金融サービスの利用を禁じられている者が回避してサービス使用
- 金融機関が対イラン制裁を破った警告を受けたにも関わらず対策しなかった
- 金融機関がテロ組織の資金源となっていたアラブ銀行への資金移動を認めていた
漏洩・公開の多くが、不正を金融機関が知りながら何もしなかった不正であることが特徴です。金融機関は法律上、顧客の本人確認を徹底し、犯罪者ではないかなどを確認する必要があるのですが、これを守らなかったり無視したことなどが暴露されたのです。
「フィンセン」は、アメリカ財務省の金融犯罪取締ネットワークのことで「フィンセン文書」は2500件以上のファイルから成り、顧客の不審な動きとして米金融当局に送られたものです。
米ドル建ての不審な取引については、アメリカ国外でのものであってもフィンセンへの報告義務があります。報告の多くは、SAR(不審行為報告書)という不審な取引を記録した文書です。
英国の企業とドイツ銀行に注目
英国に登記のある多くの企業がSARで報告されており、フィンセン文書に名前の出てくる英国企業は、他のどの国よりも多いことが指摘されています。
英国政府は、詐欺や資金洗浄の取り締まりを強化するため、会社登記の手続きを改正すると発表しています。また、ドイツ銀行の株は急落していますが、ドイツ銀行は、組織犯罪やテロ組織、違法薬物の密売人などの資金洗浄の温床になっていました。
相次ぐ大口金融情報漏洩
近年、立て続けに世界の不正を含む、金融情報が漏洩されています。
2014年 ルクスリークス
大手コンサルティング会社、プライスウォーターハウスクーパースとの秘密合意文書が大量流出。大幅な租税回避の複雑な構造を詳細を記した、28000ページの内部文章、ルクセンブルクの税務当局が、多国籍企業数百社に対して、巨額の優遇課税を協定し行っていた。
2015年 スイスリークス
英金融大手HSBCのプライベートバンキング部門が、違法な武器商人などから預かった数百万フラン規模の資産を運用。また超富裕層に巨額の脱税指南した、口座情報など機密文書が流出した事件。
2016年 パナマ文書
タックスヘイブン(租税回避地)である、パナマの法律事務所から流出した「パナマ文書」から多くの、著名な政治家や富裕層たちが、秘密に行われていた資産運用の内容流出。オフショア金融センターを利用する、21万4000社の株主や、役員などの情報を含む詳細な情報。
2017年 パラダイス文書
オフショア投資で、重要な顧客を抱える法律事務所などから流出。タックス・ヘイヴン取引に関する、約1340万件の電子文書群。世界の権力者や、大富豪たちが、多額の資産をタックスヘイブンに置いている実態が明らかに。
また、少し毛色は違うものの、情報漏えいという意味では、次のようなものもあります。
- ウィキリークスという匿名により政府、企業、宗教などに関する機密情報を公開するウェブサイト
- エドワード・スノーデンというアメリカ国家安全保障局 (NSA) および中央情報局 (CIA) の元局員の告発事件
金融の今後
現在、闇に包まれたような、スイスのプライベートバンクでさえ、「ジュリアス・ベア」銀行のように上場(スイス証券取引所)して風通しを良くしている時代です。今後の金融、そして世界の闇は、明らかにされていく方向なのだと思います。