原油安は世界景気後退を見越した動きか?
原油価格がロシアによるウクライナ侵攻以前の水準に下落
原油WTI価格は、今年7月に1バレル当たり84ドル台まで反発していたが、9月10日に65ドル台と、ロシアによるウクライナ侵攻以前、2021年12月以来の安値となった。
ロシアによるウクライナ侵攻以後の原油価格の動きを振り返ってみよう。
「ロシアによるウクライナ侵攻に対抗して、西側先進国による対ロシア制裁が実施され、ロシア産原油が世界に出回らなくなって、世界の原油需給が逼迫する」との思惑が、原油価格を急騰させ、原油WTI価格は22年3月に一時123ドル台まで上昇した。
だが、実際には、西側先進国の対ロシア制裁に対応して、ロシア産原油は中国やインドなどに売却されたため、世界の原油需給が逼迫することはなかった。
そうした点で、ウクライナ侵攻後で急騰した原油価格が、その後、軟調に推移したことは、自然な成り行きだったといえる。
22年10月以降の原油WTI価格は、概ね70~90ドルの範囲内でのボックス圏で推移した。
原油価格を下支えしたのは、
(1)世界的なインフレ、
(2)サウジアラビアなどの減産強化、
(3)イスラエル・ハマス戦争による中東情勢悪化懸念、
などだった。
2023年3月、5月、6月や同年12月には、原油WTI価格が一時的に70ドルを小幅に下回る局面があったが、70ドル割れはいずれも短期的なものだった。
ここへきて原油価格が70ドル割れの状況が続いていることは、状況が新たな局面に入ったことを窺わせる。
6月から9月にかけIEAの原油需要見通しが下方修正された
最近の原油価格下落は世界的な原油需要減少に起因する部分が大きい。
9月のIEA“Oil Market Report”によれば、2024年上半期の世界の原油需要は前年同期比80万バレル増(増加率でみると0.9%増)にとどまった。
コロナショック前、2014年から2019年までの5年間でみると、世界の原油需要は平均で年140万バレル増加、年率増加率は1.4%だった。
こうした過去の原油需要の伸びに比べると、今年前半の需要増加テンポはかなり鈍い。
また、IEAは、2024年の世界の原油需要を日量1億300万バレル、25年同1億390万バレルと予想しているが(表1参照)、ここへきて需要見通しは下方修正されている。
3か月前の6月同レポートによれば、世界の原油需要は、24年1億320万バレル、25年1億420万バレルと見込まれていた。
この3か月間で、世界の原油需要見通しは、24年が20万バレル、25年が30万バレル、それぞれ下方修正された。
需要見通しの修正状況を先進国、新興国に分けてみると、先進国の原油需要については、比較的底堅い。
2024年の先進国の原油需要は6月時点の4,550万バレルから9月に4,560万バレルへ、25年の需要は同4,530万バレルから4,550万バレルへとわずかに上方修正された。
もともと先進国の原油需要は2022年以降、ゆるやかな減少傾向を辿っている。上方修正されたとはいえ、2024年から25年にかけても、なお原油需要は減少傾向を辿る見通しだ。
6月から9月にかけて先進国の需要見通しは上方修正されたが、これは、4~6月の米国の経済が比較的堅調に推移したことが原因とみられる。
米国の経済成長率は1~3月の年率1.4%から4~6月には同3.0%と加速した。
後述する通り、米国では4月以降のガソリン価格下落でガソリン消費も上向いた。ガソリン価格下落が夏場にかけての米国のレジャー消費を支え、4~6月の経済活動を上向かせた可能性がある。
中国を中心とする世界の原油需要減少が最近の原油安の主因
一方、増加傾向を続けていた新興国の原油需要については、増加に歯止めがかかる見通しだ。そして、それは中国の原油需要が減少していることが原因だ。
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2024/9/17の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。