公開日 2024年9月9日

今後の世界経済をどうみるか?

ユーロ圏や日本の経済停滞も続いており、米国に代わる世界経済の牽引役になりえない。牽引役だった米国経済のリセッション入りに伴って、世界経済もリセッション入りするというのが、ありえそうな、自然のシナリオのように思われる。
今後の世界経済をどうみるか?

IMFは低調な米中経済に代わり日欧が世界経済を牽引して緩やかな成長が続くと予想

7月のIMF”World Economic Outlook”によれば、世界の経済成長率は2023年の3.3%の後、24年3.2%、25年3.2%(それぞれ各年第4四半期の前年比)と見込まれている、

世界経済の成長テンポは、23年に比べわずかに減速するが、緩やかな成長を維持するという予想だ。

地域別にみると、米国が好調だった23年の3.1%から、24年2.0%、25年1.8%と成長テンポが鈍化していくと予想されている。中国も23年の5.4%から24年4.6%と減速する。25年に4.9%とやや持ち直すが、5%を割り込む成長は習近平政権にとっても十分とは言えまい。

このような米中の成長鈍化に対して、IMFの予想は、日欧が世界経済を牽引していくというものだ。

ユーロ圏については、天然ガス高騰の影響などから経済が停滞した、23年の0.2%から、24年1.5%、25年1.5%と回復するとの予想だ。日本も23年の1.2%から24年には1.6%へと加速するという予想だ。

だが、昨年まで世界経済を牽引してきた米国経済が鈍化し、中国の経済停滞も続くなかで、欧州や日本が世界経済をリードするというシナリオに説得力があるのか、非常に疑問だ。

世界経済を牽引してきた米国がこけ、中国も停滞状況から抜け出せないとすれば、世界経済は危機的な状況に陥るとみるのが自然でないかと思われる。

米国経済ソフトランディングならIMFの予想はほぼ達成されるが、
実際にはリセッション入りの可能性が高まっている

では、ここまでの状況がIMFの予想通りになっているのか、検証してみよう。

まず、米国については、4~6月の経済成長率は個人消費と設備投資など内需の好調を背景に、前期比年率3.0%と前期の同1.4%から加速し、年前半(1~6月)の成長率は年率2.2%となった。

年前半中のペースで成長を維持できれば、24年通年の成長率は2.2%となり、IMFの予想を幾分上回る計算だ。

だが、米国ではここへきて急速にリセッション懸念が高まっている。成長ペースは大幅に鈍化するか、あるいはマイナス成長へ失速する可能性も大きい。

9月6日に発表された雇用統計によれば、8月の非農業雇用者数は前月比14.2万人増と、ハリケーンの影響で落ち込んだ7月の8.9万人増(速報値の11.4万人増から下方修正)、6月の11.8万人増(速報値の17.9万人増から下方修正)から、雇用増加テンポはやや加速した。

だが、ハリケーンの影響で落ち込んだ7月分の反動で、より大幅な増加を見込んでいた事前予想(ブルームバーグの集計によれば16.5万人増)に比べると、雇用増加幅は小幅だった。

6月、7月についても速報値から下方修正され、企業の雇用活動が停滞し始めたことを示している。

今年前半中(昨年12月~今年6月)の雇用の増加率は年率1.6%だったが、6~8月の3か月間で言えば、同0.9%に鈍化している。

年前半の労働生産性上昇率の0.6%程度(成長率2.2%マイナス雇用増加率1.6%)が維持され、この3か月間の雇用増加テンポ(年率0.9%)が続くという前提で計算すると、年後半の成長率は1.5%(0.6%プラス0.9%)、24年通年の成長率は1.9%となり、IMFの予想(2.0%)に近い数値になる。

ただ、ここ3か月間程度の緩やかな雇用増加が続くという見方は、いわばソフトランディング・シナリオであり、現在考えられる限りのベストシナリオだ。

IMFの予想は、米国経済のソフトランディングを想定していると言っていいかもしれない。

ソフトランディングではなく、仮に、米国経済がリセッションに陥るとすれば、雇用は「緩やかな増加」ではなく、「減少」に転ずる。

例えば、ITバブル崩壊などによる2001年3月~同年11月のリセッション時には、雇用は2001年2月をピークに、リセッション突入と同時期の同年3月から減り始め、その後の1年間で1.5%減少した。

また、リーマンショックなどによる2007年12月~09年6月のリセッション時には、雇用は2008年1月をピークに、リセッション突入に2か月遅れで減り始め、その後の1年間で3.1%減少した。

米国の場合、雇用者数のピークアウト→減少は、リセッションを意味する。そして、雇用の減少はマイナス成長を意味する。

この2回のリセッション時の雇用動向をみると、リセッション入り前まで順調に増加していた雇用がリセッション入りに伴って急に減少に転じるというわけではない。

リセッション入りを前にして雇用増加テンポが徐々に鈍化し、リセッション直前の雇用増加テンポはほぼゼロに近いほど「非常に緩慢な増加」になっていた。

したがって、雇用の増加テンポが「非常に緩慢な増加」かどうかが、リセッション入りの可能性を判断する一つの材料になる。

2001年3月~同年11月のリセッション時のケースで言えば、雇用ピークアウトの前、半年間に当たる2000年8月~01年2月の月平均雇用者増は9.3万人だった。

2007年12月~09年6月のリセッション時のケースで言えば、雇用ピークアウトの前、半年間に当たる2007年7月~08年1月の月平均雇用者増は5.9万人だった。

これに対して、今回の場合、直近3か月(2024年6月~8月)の月平均雇用増加は11.6万人で、雇用増加テンポは月10万人を超える。

過去のリセッション直前のような、月平均10万人未満の「非常に緩慢な増加」にはなっていない。

だが、例えば、このまま雇用増加テンポの減速が続き、今後3か月の月平均雇用増が月7~8万人程度に減速するとすれば、いつリセッション入りしてもおかしくない状態になる。

雇用増加テンポからみて、現状は、リセッション直前とは言えないが、それに近い状態と考えられる。

現在の状況からみて、10~12月以降の米国経済がリセッション入りし、それに見合って、経済はマイナス成長に陥る可能性がかなり高くなっている。

こうしたなか、FRBは景気下支えのための大幅利下げを考え始めているようだ。ただ、今回の雇用統計では、平均時給の伸びが前月比0.4%増と加速した。

FRBは今やインフレよりも景気重視の構えだが、インフレ懸念は完全に払しょくされたわけではない。

こうしたなか、経済がリセッション入りしていない状態にもかかわらず、景気だけに留意した大幅利下げを行なえば、「経済が非常に危うい状態にあるのではないか」といった企業や家計の疑心暗鬼を招き、経済に対する信頼感が損なわれるおそれがある。

大幅利下げは、何とか持ちこたえていた経済を悪化させたり、株価下落につながるおそれがある点に注意が必要だ。

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続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/9/9の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。

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新見未来

エコノミストとして、シンクタンク、投資顧問会社などで経済分析、資金運用とアセットアロケーション業務に携わる。

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