地面師は投資心理を狙う
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Netflix「地面師たち」のリアルな部分
ぶっちぎりの人気第一位であるNetflixの配信ドラマ「地面師たち」は実際の事件を元に作られました。(世界で第三位)
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2017年6月1日に積水ハウスが地面師たちに土地の購入代金として55億5千万円を騙し取られた事件「積水ハウス地面師詐欺事件」です。
取引場面は、かなり実際の詐欺現場に近いと思います。
プロたちの意見や取材を反映しているのだと思います。
一方で、現実とは違う部分としては、実際の地面師の仕事では殺人は、ほぼありません。
刑務所に入っても、詐欺だと10年、殺人だと30年と刑期がかなり違うからです。
詐欺したお金は、ほぼ消えますが、出所してから手にするようです。
地面師とは
地面師(じめんし)とは、土地の所有者になりすまして売却をもちかけ、売買代金や手付金などをだまし取る不動産の詐欺師です。
本物の弁護士や司法書士などが犯人グループにいることで、普通の弁護士や司法書士を騙すことも可能です。
大手不動産会社やアパホテルなどのプロたちも騙されています。
地面師・不動産詐欺増加中
地面師は、不動産登記簿の電子化で減ったのですが、現在は土地価格の上昇、高齢化、空家急増などで詐欺事件が増加しています。
騙された買主は大金を支払ったものの、約一週間後に不動産の移転登記ができないことを登記所から通知がきて知るのです。
そこで代金が戻ってくることは、ほとんどありません。
一週間でロンダリングされていくからです。
ドラマでも分かるように詐欺だとわかり、支払った代金が消えた喪失感は、とても大きいです。
個人の住宅購入レベルでは地面師とは無縁だと思っている人も多いと思いますが、今後、一般住宅でも事件が多発する可能性があります。
不動産詐欺の本質を理解することが大事です。
地面師の仕事
売主の偽者、成りすましが一般的ですが、その他のバリエーションもあります。
不在地主に成りすます例です。
ドラマでは自動車運転免許証を偽造していますが、不在地主の場合には成りすましの人物に自動車学校で運転免許を取得させるケースもあります。
つまり、本物の免許証を作ってしまうのです。
不在地主の場合には時間をかけて準備することが可能だからです。
大学教授が都内で新築建売りを現金で買ったのですが、それが不在地主の土地の上に建てられた建物だったという実際の事件もありました。
この不在地主状態であった地主さんから直接相談をいただいた実際の話ですが、久しぶりに土地を見に行ったら新築の一戸建てが建っていて大学教授が住んでいてびっくりしたそうです。
投資で失敗するパターンと同じ
地面師に騙されるプロは
「他社に取られたくない」
「儲け損ねたくない」
という心理にさせられて購入に前のめりになることで足元をすくわれます。
実際の積水ハウスの事件では成りすましが生年月日や干支を間違えるというミスを見過ごしたそうです。
さらには、手付金を払ってから売主名で売っていないという内容証明が届いてもドラマと同じで怪文書として無視したそうです。
実際に怪文書だったとしても、完全に前のめり状態だったのです。
これは、投資で相場の天井をわざわざ買っていく人の心理と同じです。
相場では9割の人がこれから上昇すると思ったところが天井で、そこから暴落していきます。
上昇する相場の天井では
「上昇する相場に置いていかれたくない」
「儲け損ねしたくない」
と思って一番買いたくなるのです。
今が天井だと聞いてもそれに耳を傾けることはありません。
買ったとたんに大暴落する感覚は地面師に騙されたことを一週間後に知った絶望感と同じです。
不在地主の不動産詐欺の実例
一般的な地面師対策としては本人確認をしっかりすることで防ぐことが可能ですが、地面師の仕事はもっと広いです。
先ほど不在地主の例を出しましたが、不在地主の場合、もっと大々的な詐欺もあります。
不在地主相手に偽の事件をでっち上げて訴訟を起こして、法的に自分たちに移転登記しようとした事件がありました。
これは、裁判の時に被告が現れない場合には原告が勝つので、法的に移転登記ができてしまうことを悪用したものです。
ちなみに、この事件は、私が地主の親族の依頼により、現地調査に行った時に不在通知を絶妙なタイミングで見つけたので、守ることができました。
不在通知が裁判所からの送達であることが分かり、訴訟になっていることを知り、裁判で勝って約10億円の資産を守ることができたのです。
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