米国経済の一人勝ち状態に変化
米国経済の先行き不透明感が強まり、一人勝ち状態に変化
世界経済は拡大基調を続けているが、昨年までの状態とはやや様相が変わってきている。
まず、昨年までの世界経済は米国の一人勝ち状態だったが、昨年後半、力強い拡大を続けた米国経済は、今年に入り成長の勢いが弱まっている。半面、低迷していたユーロ圏や中国の景気が盛り返しつつある。
米国の成長率は昨年7~9月年率4.9%、10~12月3.4%から今年1~3月は1.6%に鈍化した。成長ペースの減速は、当初、景気ソフトランディングの期待を高めたが、直近のデータをみると、必ずしも米国経済は順調なソフトランディングの軌道を辿っているわけではない。
景況感の動きを示す米国のS&Pグローバル・PMI指数は、今年2月の52.5から3月52.1、4月51.3と2か月連続で低下したが、5月は54.4と再び上昇した(図1参照)。
同指数は50が景気拡大・悪化の分岐点であり、4月までは、確かに景気拡大テンポの鈍化を示していた。だが、5月には景気拡大テンポが再び加速したことを示す。
結局、このデータからは、米国経済が減速、加速を繰り返し、不安定な推移を続けている様子が窺われる。
米国経済の不安定な動きの背景には、二つの要因があるとみられる。
(1)労働生産性低下
昨年後半の米国経済は、労働生産性上昇を背景に高成長、低インフレの状態が続いた。低インフレを背景とする利下げ観測が長期金利を低下させ、株価を押し上げるという良好な市場環境が続いた。
しかし、今年に入ってからは労働生産性上昇が一服し、成長が鈍化、物価が再上昇した(図2参照)。
(2)家計の過剰貯蓄の枯渇
米国経済不安定化のもう一つの理由は、以前から囁かれてきたことだが、新型コロナウイルス禍の給付金などで生じた家計の過剰貯蓄がそろそろ枯渇するとみられる点だ。
特に、低所得層はローンなどに依存し、金利上昇など、借り入れ条件の悪化が所得環境を悪化させている。半面、株高による資産効果が、高所得層の消費意欲を高めている面もある。
5月のPMI指数が上昇したのも、4月前半に調整した株価が、その後、5月にかけて反騰し、高値を更新したことが影響している可能性が高い。
米国経済は労働生産性の伸び低下により、成長率が低下すると同時に、インフレが高進しやすい状態になっている。また、消費などの需要動向が株価に左右され、過剰貯蓄の払底により、株価次第では消費息切れの懸念がある。
金融政策について言えば、インフレ高止まりから、本来は追加利上げも念頭に入れなければいけない状態だ。
だが、実際には、景気失速のリスクと政治的な圧力から、パウエルFRB議長は利上げのオプションは使えない。
つまり、FRBはインフレを容認しなければいけない状態だ。米国経済は徐々に不安定化し、悪い方向に進み始めている。
・・・
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
2024/5/27の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2553/
https://real-int.jp/articles/2552/