オイルショックの再来 イスラエル戦争と原油急騰リスク
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中東戦争でオイルショック
1970年代に2回オイルショックがありました。
どちらも中東戦争、紛争が原因で原油・オイル価格が急騰しました。
現在、その時と同じ状況があると同時に次の点が大きく違います。
・報道が表面的で偏向報道が激しい
・世界の構造が大きく変わっている
・イスラエルが世界に大きな影響を与える
報道を鵜呑みにせず、高い視点で見て具体的な危機に対処することがサバイバル時代に大事なことです。
リスクであり同時にチャンスの時です。
合わせてお読みください。
https://real-int.jp/articles/2534/
過去のオイルショック
過去のオイルショックは教科書にもあるくらい大きな事件です。
第1次オイルショックでは日本中のスーパーマーケットからトイレットペーパーが消え、パニック状態に陥ったことで有名です。
現在、中東戦争が進行中であり、オイルショック再来の可能性が高くなってきています。
まず、過去2回のオイルショックを見ていきましょう。
第1次オイルショック
1973年(昭和48年)10月、第4次中東戦争が勃発しました。
OPEC・石油輸出国機構が原油の供給制限と輸出価格の大幅な引き上げを行い原油価格は3カ月で約4倍に高騰しました。
原油価格上昇は材料費、エネルギー価格、輸送料などの上昇を招き、全ての物価の上昇要因となるため当時は「狂乱物価」といわれるインフレとなりました。
日本株・日経225は下落しました。
この激しいインフレを抑えるために日銀は公定歩合を9%まで引き上げました。
第2次オイルショック
1978年(昭和53年)末以降OPEC(石油輸出国機構)が、段階的に原油価格を大幅値上げ
1979年(昭和54年)2月にイラン革命
1980年(昭和55年)9月にイラン・イラク戦争
こうして原油価格は約3年間で約2.7倍に高騰しました。
オイルショックといえばトイレットペーパー
第1次オイルショックでは全国のスーパーマーケットからトイレットペーパーが消え、価格急騰したことが事件になりました。
買いだめ騒動でケガ人が出たことが報道されました。
原油価格上昇とトイレットペーパーが無くなることには直接的な因果関係はありませんが、この時から日本では危機となるとトイレットペーパー争奪戦が行われることになりました。
2011年の東日本大震災や2022年の新型コロナ騒動でも多くの店でトイレットペーパーが品切れになりました。
次のオイルショックに起きること
中東戦争となると原油価格急騰し、輸入に依存している日本に大きな影響を与えることが分かります。
過去のオイルショックと、今の世界情勢などから判断すると、次のオイルショックで起きることが予測可能です。
インフレ
原油価格上昇は全てのモノの価格を上昇させるのでインフレになります。
現在、日本も世界もスタグフレーション(不景気のインフレ)に陥っているので、このタイミングのインフレは経済的打撃が大きいです。
上昇するもの
・材料費
・エネルギー価格
・輸送料
金利上昇
インフレになると日銀が金利を上昇させることになります。
但し、現在、日本では国債発行量が巨額なので金利上昇は利払い上昇となるため金利上昇は限定的だと判断できます。
また、現在のスタグフレーション時に金利を上げると景気悪化が酷くなる可能性があります。
円高
日本の金利が上昇すると円高になります。
為替は金利差が一番の変動要因だからです。
インフレになると米国も金利上昇させますが、すでに米国は大幅に金利上昇済です。
それゆえ、今の円安があります。
また、現在、米国は最大の産油国で鎖国してもやっていけるため、米国内の原油価格をある程度調整可能です。
米国は利下げを視野に入れているため、日本の利上げと米国の利下げのタイミングとぶつかると、大きく円高、つまり、ドル/円が下落することになります。
食料なども争奪戦
オイルショックとなれば、恒例のトイレットペーパーが無くなることになります。
これは大衆心理なので意識を変えることは難しいです。
第1次オイルショックではトイレットペーパーの他にも洗剤、砂糖、インスタントラーメンなどが無くなりました。
次のオイルショックでは缶詰なども無くなる可能性があります。
食料危機が次の危機だからです。
平時のうちに備蓄や自給自足の準備をお勧めします。
投資
オイルショックとなると原油上昇だけではなく各相場も大きく動きます。
リスクであると同時にチャンスの時です。
日本株・日経225は下落方向です。
ゴールドは原油に連動して上昇している可能性があります。
そして人はパニック相場で大きな失敗をします。
各相場、特に原油は乱高下しやすいのでストップロスを必ず入れておくことをお勧めします。
乱高下しやすい原油
原油価格は乱高下しやすいですが、その理由は次の通りです。
原油WTI 月足
中東に依存
原油の産地国は中東に集中していますので、中東での戦争は原油価格に大きな影響を与えます。
各国の1日の産油量は次の通りです。単位:万バレル/日
1.米国:1951
2.サウジアラビア:1181
3.ロシア:1149
4.カナダ:550
5.中国:489
6.イラク:474
7.アラブ首長国連邦(UAE):401
8.ブラジル:367
9.イラン:319
10.クウェート:294
EIA:2020年6月25日時点
1970年代の2回のオイルショックで、日本は原油の中東依存から脱却しようとしましたが、中東依存は続いています。
現在、日本はロシアに敵対しているので、なおさらです。
一方、米国はシェールガス革命により世界最大の産油国になっています。
ホルムズ海峡封鎖リスク
ホルムズ海峡が封鎖されると、タンカーが通れなくなるので原油価格は上昇します。
ここ数か月、原油高になっていた理由がこれです。
特に日本は産油国から遠いので輸送コストの影響が大きいです。
世界景気と連動
原油は世界の景気にも連動しています。
世界景気が良いと原油の需要が増加し価格上昇
景気が悪いと原油需要が減少し価格下落傾向があります。
現在、世界景気は良くありません。
戦争
大規模な戦争の準備があると原油備蓄が進み、原油価格は上昇します。
実際に戦争になることでも原油価格は上昇します。
原油の特殊事情
2020年、原油の特殊事情から原油・WTIが一瞬、1バレル マイナス40ドルという前代未聞のマイナス価格に陥りました。
石油の1バレルは約159リットルです。
原油をもらってくれれば1バレルに付き40ドルもらえるということです。
原油はゴールドや他の商品と違い、先物取引において現物で受け取る場合(現受けする場合)、原油専用のタンクが必要になり、タンクがないと受けることができないからです。
政策価格
OPEC(石油輸出国機構)が価格を決定しているので政策的に価格で決まる部分も大きいです。
特に近年、世界は親米と反米の対立構造が大きくなっています。
親米のEU諸国では原油高は深刻な問題になるので政策価格となりやすいです。
ペトロダラーの崩壊
以前は原油を買うためには米ドルでしか買えませんでした。
これをペトロダラーといいます。
ところが、近年、次のような状態に陥り原油価格が覇権争いに直結するので不安定になりやすいです。
・米国覇権が崩壊しつつある
・中東の親米国が米国から離反
・米ドル以外の通貨で原油取引が可能
・ペトロダラーの崩壊
中東情勢
2023年10月7日にハマス イスラエル戦争が勃発し、現在、イラン イスラエル戦争に発展しそうな状況ですが、一方で目先は沈静化の動きもあります。
現在、イラン イスラエル戦争が一時的に遠のいている様子であることと、世界景気が悪化方向なので目先、原油価格は上昇から下落してきました。
原油・WTI 日足
イラン イスラエル戦争は、大きなトレンドとしては戦争拡大方向ですが、イランもイスラエルも内部分裂していているので、本格的戦争開始タイミングは分かりません。
イランもイスラエルも過激派は戦争をしたがっていますが、戦争を望んでいない派との内部分裂です。
現状を理解するためには報道を鵜呑みにせずに、状況を把握することが大事です。
こちらを合わせてお読みください。
https://real-int.jp/articles/2114/
ネタニヤフ政権はイスラエル過激派の幹部が政権入りしたことや、ネタニヤフ氏自身の汚職裁判が進行中であり、平和になると世間の注目が集まるので困るという事情もあります。
イランイスラエル戦争
報道を鵜呑みにしてはいけないのがイランイスラエル戦争です。
最近の報道は、イスラエル側の内容も反イスラエル側の内容も、どちらも片寄りが激しいからです。
つまり、プロパガンダ合戦となっているので、鵜呑みにしていると確信を持って間違えることになります。
イランとイスラエルはミサイル攻撃などをお互いに行っていますが、報道されている内容と現実はかなり違います。
発端は今年、4月1日イスラエル軍が、シリアのダマスカスにあるイラン大使館別館をF-35戦闘機による6発のミサイル攻撃で爆破し、会議していたイラン軍の最高幹部の一人、モハマド・レザ・ザヘディ氏たちを殺害したことから始まりました。
この攻撃はインパクトがありましたが、その後の攻撃は、どれも形だけのものといっても良いでしょう。
4月19日イスラエルがイランを攻撃しましたが、これも事前に通知し、報復されない程度の小さい攻撃でした。
米国はイスラエルに攻撃しないように圧力をかけていましたがイスラエルは米国に指示される側ではなく、指示する側だと示すためにイランを攻撃したという見方ができます。
今回の攻撃についてイラン外相からは、子どものおもちゃの攻撃と言われ、イスラエルに報復しないことを明言しています。
最初のイスラエルの攻撃以降はイランもイスラエルも、それぞれの過激派をなだめるため、現時点では大人の事情で形だけの攻撃をしている感が強いのが現状です。
イランにも戦争を避けたい事情があります。
イランの内情
イランの内情は意識されることが少ないですがイラン内の分裂が激しく戦争どころではなくなっています。
2022年9月にイランでイスラム教のヒジャブ(スカーフ)の、かぶり方が不適切だったとし、クルド系イラン人女性マフサ・アミニさん(22才)が、イランの風紀警察に逮捕され数日後に死亡した事件がありました。
これをきっかけに、イラン全土で大規模な抗議活動・デモが発生したのです。
デモで主張されていること
・女性の権利の主張
・宗教的規制への反発
・政府への反発
男性も加わってのデモに対してイラン政府は強硬に弾圧したので多数の死傷者が出ました。
この抗議は若い層が中心となり、保守層と対立、分断が進んでいて世界各国でデモが拡大しています。
イラン政府にとっては、このデモは、かなりの問題です。
イラン政府はイスラエルを攻撃するより国内の分断に対処することの方が大切です。
今後の動き
現在は沈静化しているイランイスラエル戦争ですが、タイミングは分からないものの今後、大きな戦争に発展していく可能性が高いと判断しています。
イスラエルが今後の世界の紛争の中心になっていくと判断しているからです。
そして、原油高騰の可能性が高いので、オイルショックが再び発生すると判断しています。
中東情勢については報道を鵜呑みにせずに、その背景を理解することが大事です。
そして、具体的な危機を予測して事前に対処することが大切です。