日銀は今後3か月に1回程度のペースで利上げか
為替市場は日銀による円安牽制を期待していたが、期待外れに
日銀は4月27~28日の金融政策決定会合で、事前の予想通り、追加利上げを見送った。
利上げを見送った基本的な理由として、植田総裁は「(金融政策の判断にとって日銀が最重要視する)基調的な物価上昇率は2%を下回っている」とし、前回3月会合時から今回の会合にかけて、基調的な物価上昇率は「はっきりと高まったとは考えていない」点を挙げた。
3月会合時から今回会合での大きな変化は、中東情勢の悪化などによる原油高と米国の利下げが遠のいたことなどによるドル高・円安だ。
確かに、原油高や円安は、確かに物価を押し上げるが、その影響は一時的であり、コストアップインフレによる実質所得下押し圧力を通じて消費に悪影響を及ぼすおそれもあるが、先行きは、その物価上昇に対応した賃上げなどにより基調的な物価上昇に影響が及ぶ可能性がある。
それらの影響を見極めたい、というのが今回の日銀の判断だったと考えられる。
だが、結果は事前予想通りだったにもかかわらず、その結果を受けた為替市場では円が急落し、158円台をつけた。
事前の予想は追加利上げ見送りだったが、どうやら多くの市場関係者は日銀が円安に歯止めをかけるため、何らかの金融引き締め策を実施してくれるのではないかと「期待」していたのではないかと推測される。
実際、直前には、「日銀が円安を牽制するため6兆円の国債買い入れを減額する」との一部報道もあった。
政策決定会合後の記者会見でも、ほとんどの質問が円安に関してで、事前報道に反して、「6兆円のまま現状維持」とされた国債買い入れについての質問も多かった。
だが、そもそも円安牽制の役割を日銀に期待するのは難しい。
教科書的に言えば、為替相場の管轄は財務省であり、記者会見で、植田総裁が答えていた通り、「金融政策は為替レートを直接コントロールするものではない」「為替レートの変動は経済・物価に影響を及ぼす重要な要因のひとつであり、(円安が)基調的な物価上昇率に無視しえない影響が発生するようであれば、金融政策上の考慮あるいは判断材料となる」というのが、日銀の見解だろう。
ましてや、円安牽制のために国債オペを減額する、というのは日銀にとっては論外だったとみられる。
日銀は3月会合で、金融調節の主な手段を(量的調整ではなく)短期金利にすることを決めた。
日銀の管轄でない為替市場への牽制のため、金融政策の手段でなくなった量的調整という手法を使うというのは、問題外だったと考えられる。
実際、植田総裁は、今回の記者会見で、国債買い入れの減額について、国債買い入れを減額すれば、ストック効果が弱まる効果(金利上昇要因)が見込まれるが、「金融政策の能動的な手段として使いたくない」と明言している。
もちろん、ある程度のリップサービスの余地もあったのかもしれない。
最近の円安について「基調的な物価上昇率への大きな影響はない」と説明した植田総裁の言葉尻をとらえ、「追加利上げを見送ったというのは円安の(基調的な物価上昇率への)影響が無視できる範囲とみているのか」と問われ、植田総裁は「はい」と答えた。
これが、円安無視=円安容認と捉えられた可能性がある。
「急速な円安は何に起因しているのか?」との質問に対しても、「為替の短期的な動きについてのコメントは差し控えさせていただきたい」と、そっけない答えだった。
為替相場の管轄は確かに財務省にあるが、円安ドル高の責任の多くは日銀の緩和政策にあるというのも事実だ。
財務省は円安へのけん制のため、たびたびドル売り介入をほのめかしているが、市場介入には米国側のある程度の同意が必要で、しかも、介入だけでは円安に歯止めをかけるための永続的な効果は期待しにくい。
日銀の利上げなどバックアップがあって初めて市場介入は効果がでるが、今回はそのバックアップが全くなかった。
今後、円安が一段と進む局面で介入が実施される可能性があるが、効果は一過性にとどまる可能性が高い。
しばらくは、介入による円が一時的に反発したあと、日米金利差を反映した実需によりじりじりと円安が進むという展開が繰り返されそうだ。
ただ、そうしたなかで、次回6月13~14日の政策決定会合での追加利上げの可能性は高まっていると考えられる。
「25~26年度には基調的な物価上昇率が目標の2%に達する」というのが日銀の物価見通し
日銀は物価についてどう考えているのか。
3か月に1回発表される、今回の展望レポートでは、日銀が目標とする、生鮮食品を除くコア消費者物価前年比についての政策委員の見通しとして、24年度2.8%(前回1月時点の見通しは2.4%)、25年度1.9%(同1.8%)に上方修正され、26年度も1.9%という数字が示された。
展望レポートの文章でも、「消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には『物価安定の目標』と概ね整合的な水準で推移すると考えられる」と書かれている。
前回1月時の展望レポートでは「消費者物価の基調的な上昇率は、マクロ的な需給ギャップがプラスに転じ、中長期的な予想物価上昇率や賃金上昇率も高まるもとで、見通し期間終盤にかけて『物価安定の目標』に向けて徐々に高まっていくと考えられる。先行きの不確実性はなお高いものの、こうした見通しが実現する確度は、引き続き、少しずつ高まっている」とされていた。
つまり、消費者物価の基調的な上昇率は、1月時の見通しでは、「目標に向けて徐々に高まっていく」とされていたが、今回は「目標と概ね整合的な水準で推移する」とされ、25~26年度に2%目標が実現するというのが、現在の見通しになっている。
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2024/4/30の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。