米国のインフレが再燃
潜在成長率を上回る成長で米国景気は過熱
米国のインフレが再燃し始めた。
エネルギー、食品を除くコア消費者物価前月比は昨年10月の0.2%のあと、11月、12月は0.3%となり、今年1月は0.4%と加速した。
コア生産者物価は昨年10月の横ばいの後、11月0.1%、12月マイナス0.1%のあと、今年1月は0.5%と急上昇した。
インフレがFRB目標の2%に向けて鈍化していくはずだ、とみていた金融市場は、サプライズとして受け止めた。
だが、最近の米景気の強さから言えば、インフレ再燃はごく自然の成り行きだ。米国の潜在成長率は1.8~2.2%とされる。
FRBは長期見通しとして1.8%という数値を示しており、米議会予算局による潜在成長率推計値は、昨年段階で1.7~1.8%とされていたが、労働力人口の伸びが加速する点を理由に、今年2月に2.0~2.2%と上方修正した。
これに対して、実際の米国の成長率は、昨年、尻上がりに高まり、10~12月は前年比3.1%の高成長となった。
仮に、潜在成長率が2.2%に高まっていたとしても、3%成長が続けば、インフレギャップは徐々に大きくなる。
多くのエコノミストは、米国景気が鈍化すると予想している。ブルームバーグの集計によれば、エコノミストの平均予想は、24年1~3月が年率1.0%、4~6月が同0.5%と、昨年の3%程度の成長から、急ブレーキがかかるとみている。
だが、今年に入ってからも成長テンポが鈍化する兆しはみえない。
随時発表される経済指標から成長率を推計しているアトランタ連銀の「GDPナウ」によれば、15日に発表された1月の小売売上高(前月比)などを織り込んだ段階でも、1~3月の成長率は年率2.9%と3%近い成長が続いていると推計している。
潜在成長率が2%程度であるのに、3%程度の成長が続けば、景気は過熱し、物価は上昇するというのが自然な成り行きだ。
金融政策は引き締め的になっていない
FRBは金融政策が十分引き締め的だという認識しているようだ。だが、実際のところ、政策が引き締め的になっているかどうかは疑問だ。
シカゴ連銀の金融環境指数は、2月9日時点でマイナス0.51(マイナスは緩和的であることを示す)となっている。
同数値はゼロ金利政策が続けられていた、22年1月以来の大幅なマイナスの水準だ(図1参照)。
つまり、景気が過熱気味に急拡大しているなかで、金融環境は極めて緩和的であり、それが株高の要因にもなっていると考えられる。
そして、この株高は資産効果を通じて、過熱気味の景気を一段と刺激することになる。
それでも金融が引き締め的だとFRBがみているのは、おそらく、昨年までのインフレ率の鈍化を反映した、実質FF金利(FF金利マイナスコアPCEデフレータ前年比)が、上昇しているからだろう。
昨年12月時点での同実質FF金利は2.4%とリーマン危機以来の高水準になっている。
それが景気を減速させるはずだとみているのかもしれない(図2参照)。
だが、図2でみる通り、2%強の実質FF金利が本当に景気を減速させるのに十分なほど引き締め的かどうかは疑問だ。
実際、1980年代末、90年代末の引き締め局面では、実質FF金利が4~5%まで引き上げられていた。2%強の実質FF金利はさほど高いとは言えない。
しかも、物価上昇テンポが再び高まれば、実質FF金利の数値は低下してしまう。
本来、インフレ抑制を確実にするためには、昨年の前半中に、より高い水準まで利上げすべきだったと考えられる。
だが、シリコンバレー銀行の破綻などによって、FRBは金融システム不安に留意せざるをえず、強力な引き締めを躊躇した。
その結果として、米国の成長率は昨年1~3月の年率2.2%、4~6月の2.1%という適度の成長から、7~9月4.9%、10~12月3.3%と持続不能な高水準に加速したと考えられる。
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2024/2/19の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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