米国の利下げ開始は来年6月か
FOMCとパウエル会見概要
声明文では、3会合連続となる政策金利据え置きが示され、FF金利レンジは5.25~5.50%から不変。この決定は市場予想通り。
声明文その他の部分については、景気の認識が前期の強い成長から減速していると、下方修正した一方、インフレ率減速との認識が加わった。
その他の点については「徐々にインフレ率を2%に戻すために適切と、みられるあらゆる追加的な金融政策の引き締めの程度を決めるに辺り」と文言が修正された。
この点について、議長記者会見では、今回の利上げサイクルにおける金利のピーク日回可能性が高いことを示す意図があったと説明され、利上げ終了の可能性が高いことに言及された。
この点が今回FOMC=「ハト派的サプライズ」と市場が判定することにつながった。
3ヵ月ごとに公表されるSEP(経済予測)におけるDOTチャート(金利予測分布)では、24年末のFF金利予想中央値が前回(9月)の5.125%から4.625%に下方修正。
利下げ幅は75bp(0.75%)と前回(50bp)から拡大。また予測分布では24年の追加利上げを予想するメンバーがゼロとなった。
なお事前の債券市場の想定(24年末までに4~5回の利下げ)と比べるとややタカ派的。
ただし、FOMCメンバーの予測分布にはバラツキがあり、最タカ派は24年利上げ無しを見込む一方、最ハト派は6回の利下げを見込むほどとなっている。
25年末のFF金利予測中央値は100bp(1.0%)の利下げで2.875%となった。ただ、24年末同様に予測レンジは広く、数人のメンバーが予測を変えれば中央値は変化する。
議長も記者会見では引き続き「DOT(ドット)中央値は計画ではない」と強調。SEPの予想中央値をみると、24年以降のGDP成長率、失業率は前回(9月)からほぼ不変。
一方、足下のインフレ減速を反映してコアPCE(個人消費支出)デフレータの予想中央値は下方修正。
FRB議長記者会見の主なポイントは第一に、現状のインフレ率の減速や、労働市場のリバランスは良い兆候であるとし、更なる利上げの可能性は低下したことと利下げの議論を開始したと言及。
第二に、それでも景気や物価の不確実性は高いことに引き続き言及し、利下げ時期に関する議論は尚早として早期利下げ期待をけん制。
第三に、インフレを2%に戻す”ラストワンマイル“において、これまでと同様の傾向が続くかどうかわからないとし、今後、よりインフレ抑制のハードルが高まることへの警戒を示唆した。
まとめると、今回のFOMCでは早期利下げ期待をけん制する発言もあり、タカ派的な面もみられた。
しかし、声明文の変更やインフレ・リスクバランスDI(インフレ見通しへの警戒度)が前回より大きく低下したことからFRBのインフレ高止まりに対する懸念が薄れつつあり、ハト派的な面がより濃く映ったとの評が多い。
深読みすると、こうなる
FRBには二つの使命がある。物価と雇用だ。
だが2年間、前者だけが重要であるかのように振る舞い、景気後退を招くことも承知の上で急速に金利を引き上げてきた。今回のFOMCで、その方針を転換した。
パウエル議長は13日のFOMC後の記者会見で「両方の使命が重要だという状況に戻りつつある」とし、「今後の政策決定では、このことを強く念頭に置くことになる」と語った。
この転換はFRBに景気回復を下支えする用意があることを意味する。転換によって景気後退入りがなくなるわけではないが、その可能性は大幅に低くなる。
表向きは、FRBはまだインフレ率に満足しておらず、パウエル議長は依然高すぎると発言している。そしてFRBは今後数回の会合では利下げよりは利上げする可能性のほうが高いとしている。
だが裏では、FRBはインフレ率(ほとんど誰も予想しなかったスピードで低下している)が、やがて目標の2%近辺になるとみており、来年は景気後退を防ぐのに十分な利下げをすることが優先事項になると考えている。
FRBが13日に公表した経済見通しでは、24年末時点のFF金利誘導目標は、4.5~4.75%と現行水準よりも75bp低く、9月の見通しからは50bp下がった。
数字よりも重要なのは、そうした見通しを公表するという決定だった。
FOMC前には、急速な利下げを織り込み済みの市場をけん制するため、パウエル議長らがタカ派的なトーンを打ち出すのではないかとの憶測があった。
しかし ・・・
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2023/12/20の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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