米利下げ観測は早計
10月の米経済指標悪化により、利下げ観測が高まっているが…
米国経済は7~9月の5%超の高成長のあと、10月に入り、急減速した。
11月に入ってから発表された10月分の多くの景気指標は、景気に急ブレーキがかかったかのような動きを示し、インフレ指標も鈍化した。
9月中旬にかけて大きく上昇していたガソリン価格も反落した。全米平均ガソリン価格は世界的な原油需給ひっ迫懸念などから昨年12月の3.10ドル/ガロンを底に上昇を続け、9月17日には3.88ドルまで上昇したが、12月8日時点で3.19ドルと下落した。
こうした動きを背景に、金融市場では利下げ観測が高まり、12月5日時点で、来年3月FOMC時におけるFF金利先物レートは5.15%となった。
金融市場は、6割以上の確率で3月FOMCまでに利下げが実施されると織り込んだ。
FRBのなかでも、タカ派的だと位置づけられているウォラーFRB理事の発言も金利低下の材料とされた。
ウォーラー理事は11月28日の講演で以下のように述べた。
「経済を減速させ、インフレ率を2%に戻す上で政策が現在、好位置にあるとの確信を私は強めている」
「ここ数週間に目にした状況を心強く感じている。それは経済のペースだ」
特段、利下げを示唆する発言ではなかったが、引き続き経済の動向やインフレ減速が続くかどうかに注意を払うと示唆しながらも、追加利上げに以前よりも控えめなコメントだったことが、利下げ材料とされたようだ。
米景気の堅調さに加えて、財政悪化(国債格下げ)懸念から上昇していた米長期金利も反落した。
米10年国債利回りは5月の3.3%台から上昇傾向を辿り、10月19日に4.99%まで上昇したが、12月6日には4.1%まで反落した。
10月の景気指標は確かに悪化したが、11月は再び上向きつつある
だが、来年早々にも利下げが開始されるという見方は行き過ぎだろう。
まず、10月の景気指標は、米国経済が7~9月の高成長のあと、景気に急ブレーキがかかったかのような動きを示したが、その後の11月の景気指標はさほど悪くない。
11月のISM製造業景気指数は46.7と10月と同水準だった。
景気上昇・下降の分岐点である50を下回ったままだが、このうち先行指標である受注指数は48.3と10月の45.5から上昇した。
ISM非製造業景気指数は52.7と10月の51.8を上回り、非製造業の景気が加速していることを示した。
先行指標である受注指数は55.5と前月と変わらず、高水準で推移している。
11月の雇用統計では、非農業雇用者数が前月比19.9万人増となり、10月の15.0万人増から増加ペースが加速した。
10月まで続いたUAW(全米自動車労組)のストが終了したことで、11月の雇用増加幅が3万人程度、嵩上されたとされる。
その影響を除けば、10月が18万人増、11月が17万人増だったことになる。増加ペースの実勢はやや鈍化していることになるが、月20万人程度のペースでの雇用増加は、労働需給を緩和させる数字にはならない。
実際、失業率は10月の3.9%から11月は3.7%に低下した。失業率低下は、家計調査による就業者数が10月の前月比34.8万人減から11月74.7万人増と大幅増加に転じたことが原因だ。
家計調査による就業者数はサンプルの少なさから統計としての信頼性が低く、月ごとの数値に振れが大きく、結果として、失業率の数値も月次統計を均してみる必要がある。
米国の失業率は現在3%台後半(3.5~3.9%のレンジ)で推移しており、これをみる限り、労働需給は逼迫したままの状態で推移していることを示す。
さらに、前月の雇用統計では、労働時間減少や賃金の伸び鈍化も、経済減速要因として材料視されていたが、今回の11月統計では、労働時間が10月の34.3時間から11月は34.4時間に増加し、時給増加率が10月の前月比0.2%上昇から11月は前月比0.4%上昇と加速した。
加えて、消費者マインドの動向を示し、景気先行指数の一つになっているミシガン大消費者信頼感指数は急回復した(図1参照)。
同指数は7月の71.5をピークに11月にかけて61.3へと低下していたが、12月8日に発表された12月分速報によれば、12月は69.4と急反発した。
9月にかけてガソリン価格が高騰し、消費者のインフレ懸念(インフレ予想)が高まった。
インフレ懸念の高まりに連動する形で、消費者マインドは落ち込んでいた。
だが、・・・
2023/12/11の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
関連記事
https://real-int.jp/articles/2403/
https://real-int.jp/articles/2400/