原油80ドル台では日本の経常黒字基調が続く
原油価格下落により経常収支の黒字幅は再び拡大
23年7~9月の日本の経常収支は季節調整値で6.2兆円(対名目GDP比4.2%)の黒字となり、4~6月の5.9兆円(同4.0%)の黒字に続く高水準な黒字となった(図1参照)。
円安傾向の一因として、日本の貿易・経常収支の赤字化があげられることがあるが、実際には、貿易赤字幅は縮小しており、経常黒字幅は拡大している。
経常収支はロシアのウクライナ侵攻を契機とした原油などの価格上昇により、昨年7~9月には一時、0.8兆円(同0.5%)に縮小し、赤字転落が危惧された。
昨年7~9月の日本の原油入着価格は1バレル当たり113ドルで、これが経常黒字幅を縮小させた主因だった。原油価格で言えば、115ドル辺りの水準が経常収支均衡の分岐点になっているようだ。
しかし、原油輸入価格は、今年4~6月84ドル、7~9月83ドルと低下している。
原油価格が80ドル程度の水準では日本の経常黒字は6兆円超(名目GDP比で4%強)のかなりの高水準になる計算だ。
後述するように、2011年の東日本大震災で原発が稼働できなくなったため、それを補うため、日本は石油、LNGなど化石燃料の輸入で原発停止分のエネルギーを補わなければいけなくなった。
一方、やはり東日本大震災後、国内でのサプライチェーンの混乱などを懸念した製造業の海外進出加速などにより、製造業の一段の空洞化が起き、円安下でも輸出が伸びにくくなった。
こうしたことから、原油など化石燃料の価格の動きが、貿易収支や経常収支を左右しやすくなっている。
原油価格65ドル以上なら貿易収支は赤字化する
経常収支は貿易収支、サービス収支、第一次所得収支(投資収益収支など)、第二次所得収支(対外援助など)に分けられる。
まず、貿易収支について言えば、7~9月の輸出は25.4兆円(名目GDP比4.3%)、輸入は26.1兆円(同4.4%)となり、差し引き貿易収支は0.7兆円(同0.1%)の赤字となった。
日本の貿易収支は2010年頃まではほぼ黒字基調が続いたが、その後は、原油価格などの動き次第で、赤字になることも増えた。貿易収支の対GDP比は1996~2010年平均でプラス2.1%(黒字)だったが、2011年~2023年7~9月は同マイナス0.5%(赤字)に転落した。
これは、第1に、東日本大震災によって原発が停止し、原油など化石燃料の輸入が増えたこと、第2に、震災後の国内におけるサプライチェーンの混乱を契機に製造業の海外進出が増加し、その分、輸出が減少したこと、などが理由だ。
前述した通り、経常収支の黒字・赤字の分岐点になる原油価格は115ドル程度だが、貿易収支均衡の分岐点になる原油価格は65ドル程度だ(図2参照)。
原油価格がかなり下落しない限り、日本の今の状態では貿易収支は黒字になりにくい。
ただ、円安の効果もあってか、最近、・・・
2023/11/20の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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