YCC政策は上限再引き上げor撤廃が必要に
展望レポートでは23年度の消費者物価上昇率見通しを3%近くに上方修正へ
ハマスによるイスラエル攻撃を契機とした石油危機が懸念されるなかで、10月30~31日の日銀金融政策決定会合で、日銀がどういう決定を行うかが注目される。
10日に共同通信社が報じたところによれば、日銀は展望レポートでの、23年度の消費者物価上昇率の見通しについて、7月に示した前年度比2.5%から3%近くに上方修正する検討に入ったとしている。
日銀の想定以上に企業の値上げの動きが続き、足元で原油価格が上昇していることを反映した上方修正だとされる。
同報道通りに23年度見通しが上方修正されたとしても、問題はその先の見通しだ。
24年度以降についても、7月展望レポートで示された2%未満の見通しが、2%以上に上方修正されれば、政策スタンスを大きく転換しなければならない。そのため、おそらくは24年度以降の見通しについては2%未満のままだろう。
来年春闘での大幅賃上げが達成でき、賃金増加を伴った物価上昇になれば、景気は持続的に上向き、物価上昇率も2%以上になって、
金融政策正常化の道が開かれるというのが日銀のシナリオなのだろうが、そうしたシナリオはあまりに楽観的だ。
日銀は日本のインフレが「輸入物価の上昇を起点とする」一過性の上昇にすぎず、すぐに2%未満に低下するとみていたようだが、実際にはそうなっていない。
そのため、足元23年度の見通しについては、見通し発表の3か月ごとに上方修正されている。
結局は、政府・日銀が目指すような「好循環」が達成できないまま、2%を上回る物価上昇が24年度以降も続くのではないかと思われる。
今、世界で起きているインフレは、必ずしも景気の良さを背景とするインフレではない。
確かに、パンデミックによるサプライ網の混乱、ロシアによるウクライナ侵攻による資源価格高騰などがもたらした一時的な物価上昇は一段落しつつある。
一方、この物価上昇による実質賃金の目減りから労働者は賃上げ圧力を強め、その賃上げが物価を押し上げ始めている。
日本でも賃金上昇圧力が高まりつつあり、コストプッシュによる物価上昇傾向は続く可能性がある。
だが、そうした賃金上昇と物価上昇のスパイラルは、景気動向とは無関係に続く「悪循環」にほかならない。
リフレ派の野口委員がYCCの再柔軟化が必要になる可能性を示唆
野口日銀審議委員は、12日の講演で、長期金利が0.8%まで上昇したことについて、「(YCC政策の上限である)1%という上限にはまだ余裕がある」「慌てて何かやる必要は今のところなさそうだ」として、金融政策の見直しには、基本的に慎重な発言をした。
リフレ派として知られる野口委員の発言としてみれば、想定通りだ。ただ、その野口委員が、YCCの再柔軟化が必要になる可能性に間接的に言及した点に注目する向きも多い。
野口委員は、「YCCは先手を打って柔軟化していかないと維持が困難になるという性質を持つ」「今後、2%の物価上昇が定着し、政策金利の引き上げが確実になる段階で長期金利を無理に抑え込めば、イールドカーブは必然的に大きくゆがむ」「最悪の場合にはイールドカーブコントロール自体が維持できなくなる可能性もある」とも述べた。
日銀が7月末に実施したYCC政策の修正(「柔軟化」)も、ここで野口氏が指摘したような、インフレ期待の高まりに対応した「先手を打った柔軟化」だった。
7月のYCC政策柔軟化は期待インフレ率の上昇によるものだった
7月末のYCC政策柔軟化の決定がどういう経緯でなされたのかを振り返っておこう。
10年国債利回りの動きを実質金利部分と期待インフレ率部分に分けてみると、日銀がなぜ、7月にYCC政策修正に踏み切ったかがわかる。
表1は、植田総裁就任前の3月末、YCC政策を柔軟化した7月末と、直近10月13日時点における日米独の名目10年国債利回り、実質金利に相当する物価連動債利回り、前者から後者を差し引いた期待インフレ率の動きをみたものだ。
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2023/10/16の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。