続く日本の物価上昇
内外価格差の拡大からモノの価格の上昇圧力は消えない
8月の日本の生鮮食品を除くコア消費者物価は前年比3.1%上昇した。
物価上昇ペースは徐々に減速していくという多くのエコノミスト予想に反して、上昇率は前月と同水準だった。
コア消費者物価の前年比上昇率は今年1月に4.1%に加速したあと、2月以降は「電気・ガス価格激変緩和対策事業」の影響で3%台に鈍化し、現在も3%台前半での推移が続いている。
電気・ガス価格激変緩和対策の消費者物価押し下げ効果は、総務省の推計では1%ポイントとされる。
財政資金を投入して物価を抑制しようとしても、火に油を注ぐことになり、長期的には物価押し上げ要因になりかねなず、あくまでも短期的な効果しか持たない。
同事業の影響を除けば、今年1月並みの4%程度の物価上昇が続いていることになり、財政資金が投入された分、長期的にはより大幅な物価の反動高も予想される。
8月の生鮮食品を除くコア消費者物価の動きを、(1)食料品、(2)エネルギー、(3)食料品、エネルギーを除く消費者物価、の3つに分けてみたものが図1だ。
まず、食料は年率1割近い急ピッチな上昇が続いており、前年比は9.2%と前月と同水準だった。
一方、エネルギーは今年1月をピークに下落し、前年比は9.8%下落し、前月(8.7%下落)に比べ、下落幅が拡大した。
他方、食料品、エネルギーを除く消費者物価は緩やかな上昇傾向が続いており、前年比2.7%と前月と同水準だった。
ロシアによるウクライナ侵攻で高騰した食料品やエネルギーなどの価格高騰の影響を除いても、緩やかなインフレが続いていることを示している。
政府の対策の影響を受けるエネルギー価格の動きを除けば、日銀や多くのエコノミストが予想するように、物価上昇率が鈍化していく様子はみられない。
日銀の消費者物価の前年比見通しは、「これまでの輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響が弱まることで減速したあと、経済が改善し、賃金上昇率も高まるもとで、再び緩やかに上昇する」というものだ。
だが、日銀が予想するように、「輸入物価の上昇を起点とする価格転嫁の影響は弱まる」ことはないだろう。
図2、図3はコロナショック以降の日本、米国、ユーロ圏の財(モノ)全体、及び食料品の消費者物価の動きを示したものだ。
それぞれ2019年12月の物価水準を100として指数を計算している(直近は各国とも8月の数値)。
米国とユーロ圏の物価については、現地通貨でみた指数のほか、円換算した指数も示している。
貿易取引がしにくい「サービス」は、国際的な一物一価が成立しにくいが、「財(モノ)」の価格は貿易取引によって均等化しやすい。
だが、日本の財の価格は米国やユーロ圏に比べかなり低い水準になっている。2019年12月を100とした指数でみて、日本の財の価格は111となっている。
これに対し、米国、ユーロ圏の財の価格は、いずれも121と日本に比べ1割程度高い。
さらに、為替相場の円安の影響を勘案した円換算指数をみると、米国が162、ユーロ圏が156で、日本の財に比べ米欧の財の価格は4~5割程度高い。
このような大幅な内外価格差は、円の実質実効レートが大幅な円安になっていることの裏返しだ。
財全体でなく、食料品だけで比べても同様なことが言える。
日本の食料品の価格は、2019年12月を100とした指数でみて114となっている。これに対し、米国が124、ユーロ圏が128と、日本に比べやはり1割以上低い。
為替相場の円安の影響を勘案した円換算指数は、米国、ユーロ圏ともに166と、日本の食料品の価格に比べ5割程度高い。
新型iPhoneの円建て価格上昇など話題になっているが、工業製品の場合、輸入依存度はさほど高くないため、海外の物価高はすぐに日本の物価上昇に反映されない場合もあるだろう。
しかし、・・・
2023/09/25の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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