国内消費、設備投資がともに鈍化
4~6月のGDP成長率を押し上げた輸入減少は国内生産を増大させているのか?
4~6月の日本の実質GDPは前期比1.2%増加し、前期(同0.8%増)から伸びが加速した。
この高い伸びは外需の増加、つまり輸出が増加し、輸入が減少したことによる。
4~6月の前期比増加率1.2%の寄与度内訳をみると、個人消費がマイナス0.4%、設備投資がマイナス0.2%と内需がマイナスとなる一方、輸出がプラス0.6%、輸入がプラス1.1%と外需がGDPを押し上げた。
数値から明らかなように、成長率を最も押し上げたのが、GDPの計算上、控除項目である輸入が減少したことだ。
こうした計算上の問題だけでなく、実態面でも輸入減少分が国内生産に振り替えられるとすれば、国内景気を押し上げることになるが、どうか。
総需要は国内生産分(GDP)と海外生産分(輸入)に分けられ、4~6月の総需要は前期比0.2%増と小幅な増加にとどまった。
円安の影響で国内生産品に比べ、海外生産品が割高になり、需要の向い先が、海外で生産されたモノ、サービスではなく、国内で生産されたモノ、サービスに向かったのではないかという仮説も考えられる。
だが、輸入数量が減少しているのは、原油、LNG、医薬品(ワクチン)、半導体などだ。このうち、原油、LNG、医薬品(ワクチン)などが国内生産に置き換えられないのは明らかだ。
半導体は国内生産品と輸入品がある程度、競合する部分もあるが、国内で生産される半導体の多くはメモリーなどの標準品、輸入半導体の多くはCPUなど高付加価値品であり、実際には円安になっても、国内生産で輸入品を代替できるわけではない。
円安によって消費者の志向が輸入品から国内生産品に移って、そのために輸入が減少したわけではないようだ。
結局、4~6月の輸入減少は、以下の事象などが主因とみられる。
1.原油価格など国際商品市況の先高観が薄れ、エネルギー輸入意欲が低下したこと
2.新型コロナウイルス感染収束による国内でのワクチン需要の減少
3.スマホの販売減少などによる国内での電子部品等の生産・在庫調整
円安によって、輸入品と競合する国内生産品が割安となり、そのための輸入減少がGDPを押し上げたということであれば、円安が日本の景気を押し上げたとも言えるが、実際にはそうではなかったようだ。
つまり、4~6月の輸入減少は計算上、GDPを押し上げたが、実態面で国内景気押し上げに寄与したわけではない。
自動車輸出や外国人観光客増加による財・サービス輸出増加は限界に近い
一方、輸入減とともに4~6月のGDPを0.6%押し上げた輸出等(財・サービスの輸出)の増加は続くのか。
4~6月の輸出等の増加を牽引したのが、半導体不足解消による自動車輸出増加(財の輸出増加)と経済再開に伴う外国人観光客の増加(サービス輸出の増加)だ。
自動車輸出については、4~6月の輸出台数はすでに年率590万台と、コロナ前の2019年の水準(610万台程度)近くに回復している。
国内生産能力を考慮した場合、自動車輸出は4~6月に比べ、最大限6%程度増やせる余地があるが、限界に近いと言える。自動車輸出が6%増加すれば、財の輸出を1%程度押し上げる効果がある。
また、外国人観光客がコロナ前の水準に戻ったとすれば、旅行サービス輸出は18%増加し、それはサービス輸出全体を4%程度押し上げる余地がある。
あと少し増加余地があるといえるが、国内での人手不足を考慮すれば、やはり限界は近い。
4~6月の財・サービスの輸出は前期比3.1%増加し、それがGDPを0.6%ポイント押し上げた。自動車輸出増加や外国人観光客の増加が限界まで続けば、7~9月も財・サービス輸出は最大限1.5%増加する余地がある。
これはGDPを0.3%ポイント押し上げる計算だが、輸出等が成長を牽引する力は4~6月に比べ半減することになる。
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2023/09/11の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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