中国地方融資平台の問題とは?
LGFVは地方政府の代わりにインフラ投資のための資金調達を行ってきた
8月17日、中国の大手不動産デベロッパー恒大集団が、米連邦破産法15条の適用をニューヨーク・マンハッタン地区の連邦破産裁判所に申請した。
恒大集団は2021年に経営不安に直面し、2021年12月にはドル建て債のデフォルトに陥っており、実質的にはすでに破綻状態にある。
米連邦破産法15条の適用申請はさほど大きな意味はないが、不動産デベロッパーの経営破綻は広がりをみせている。
実際、大手不動産開発会社「碧桂園(カントリー・ガーデン)」は、8月7日期限のドル建て社債2本の利払いを履行できなかった。30日間の猶予期間を経て、なお利払いができなければ、9月にデフォルトとなる。
住宅価格の値下がりの影響は、不動産開発企業だけでなく、地方融資平台(LGFV、Local Government Financing Vehicles)にも及んでいる。
LGFVは道路、空港、電力設備、地下鉄、工業団地など公共性の高い都市インフラを整備する資金を調達するために、地方政府が出資・設立した国営の投資会社のことだ。
LGFVは地方政府の意向を受けて必要に応じてインフラ投資を行ってきた。そして、そのための資金を、銀行借入、債券(城投債)、非市場性の金融商品(非標)などで調達してきた。
LGFVの有利子負債のうち、銀行借入が5割、債券である城投債が3割、残り2割が非市場性の非標だ。地方政府はもともと銀行からの借り入れなどが禁じられている。
そうした禁止措置を回避しながら資金を集めるために、LGFVが利用されたという面もある。また、非標は金融商品としては十分な情報開示がなされておらず、流動性や保管が十分ではない。
高利回りで投資を募る商品も多いようで、不適切な資金管理によって返済が遅れるといった「技術的デフォルト」がしばしば起きている。
中国が2008年のリーマン・ショックに端を発する金融危機への対応として打ち出した4兆元の大規模景気刺激策についても、主にLGFVによる資金調達で実施された。
政府が国債や地方債などで資金調達を行って景気刺激策を実施すると、財政赤字となる。財政赤字問題が明るみで出ることを避けるため、政府はLGFVの資金調達による景気刺激策を常習手段とするようになった。
結果として、LGFVの債務は「隠れ債務」と位置づけられるようになった。
暗黙の政府保証により資金調達を行ってきたが、土地使⽤権の売却収入が見込めなくなり経営悪化へ
このように、LGFVは、地方政府の別動隊とも言えるような、曖昧な存在でしかなく、本来、融資、投資の対象にはなりにくい。
だが、実際には銀行や投資家は、LGFVへの融資、投資を増やした。
銀行や投資家が安心してLGFVへ融資、投資してきたのは、地方政府がLGFVの資金調達に対して、暗黙の政府保証を与えていたためだ。
IMFの推計によれば、LGFVの有利子負債は2023年末時点で66兆元(対GDP比53%)に上る。これは、中央政府債務の29兆元(同23%)、地方政府政府債務の40兆元(同32%)などを上回る規模だ。
中国国民の公共インフラに対する需要は高まっているが、インフラ投資にはそれに応じた直接的な収益の確保は期待できない場合が多い。膨大な債務に対する元利払いも容易ではない。
そこで、LGFVは、経営破綻に陥りつつある不動産開発業者と同様、地方政府から土地使⽤権を購入し、その売却収入を債務返済に充てていた。住宅価格が右肩上がりで上昇していたうちは、土地使用権の売却収入を膨大な債務の元利払いのための資金に充てることができた。
しかし、住宅価格が下落し始めるや、そういったやり方は通用しなくなった。地方政府から購入した土地使用権は売却利益を生まないどころか、売却できないまま不良債権化している。
地方政府は、これまで自らの財政難を乗りきるため、不動産開発業者だけでなく、LGFVにも虎の子の土地使用権を売却していた。
しかし、 ・・・
2023/08/29の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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