湾岸アラブ産油国をめぐる動き
石油をめぐるサウジ・ロシアの協調
8月4日のOPECプラスの合同閣僚監視委員会(JMMC)は、現行の生産政策の維持で合意した。
この合意を前にした3日、サウジが7月から実施している日量100万バレルの自主減産を9月まで延長する方針を表明した。また、同日、ロシアも9月の原油輸出量を日量30万バレル削減すると表明した。
これを受け、4日の原油先物市場は、WTIの9月渡しが前日比1.27ドル上昇し、本年4月中旬以来の高値となる1バレル当たり82.82ドルの終値を付けた。
原油価格は、2023年3月には1バレル70ドル割れの状況であったが、サウジとロシアが協調して原油供給の引き締めを行っていることで、年末に向けて上昇傾向を示している。
原油価格をめぐる今後の注目点としては、以下の通りである。
(1)中国の需要回復
(2)米国経済のソフトランディング
(3)新規シェール開発投資の動向
さらに注目される動きとして、サウジ・ロシア間の石油製品の取引が挙げられる。
サウジは、ロシアの割安石油製品を輸入して国内消費に回し、自国産の原油(自主減産量を順守)を国際価格に準拠した高値で欧州諸国に販売している。
2023年の欧州諸国のサウジ産石油製品の輸入量は増加しており、対前年同月比でオランダは5.9倍、ベルギーは2.3倍、フランスは1.8倍となっている。
サウジは、こうした欧州諸国などの旺盛な需要とロシア産石油製品との価格差を利用して、自主減産にともなう財政の悪化(2023年第2四半期の財政収支は14億1000万ドルの赤字)を埋める政策をとっている。
このサウジのエネルギー政策は、軍事費を賄うために石油収入が必要なロシアにとってもメリットがあるため、今後、両者の石油製品の取引は拡大する可能性がある。
一方、ウクライナへの軍事支援を行う欧米諸国は、サウジがさらなる減産に向かいエネルギー価格が上昇することを避けるためには、両者の取引に目をつぶらざるを得ないのが現状といえる。
ただし、サウジは欧米との関係にも配慮をしめしている。
サウジは8月5日から6日にかけて、ジェッダでNATO諸国や中国、インド、ブラジルなどの主要新興国など40カ国を超える国が参加するウクライナ和平会議を開催した。
この会議にロシアは招待されていない。
サウジのムハンマド皇太子は、5月にウクライナのゼレンスキー大統領を招いて開催したアラブ首脳会議に続き、国際社会に存在感を示したといえる。
初の湾岸協力会議諸国と中央アジア諸国との首脳会談
湾岸協力会議(GCC)6か国と中央アジア5カ国(C5)は、2018年にカザフスタンでGCC・C5経済フォーラムを開催して以降、連携を強めている。
サウジは、2022年に初のGCC・C5閣僚会議をリヤドで開催し、今年の7月19日にジェッダで首脳介護を開催した。
なお、サウジは、第2回目となるGCC・G5投資フォーラムの開催地にも立候補している。
サウジのムハンマド皇太子が議長を務めたGCC・C5首脳会議では、地域の安全保障、エネルギー分野への投資、物流・輸送ルートの開発などが協議され、「戦略的対話・協力のための共同行動計画」が承認されて閉会した。
同会議での協議において、C5の首脳らは、・・・
全文を読みたい方はイーグルフライをご覧ください。
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
(この記事は2023年8月7日に書かれたものです)