YCC 実質的撤廃も日本株は急反発
先週7月28日に、日銀報道で大荒れとなったマーケットを確認してみましょう。
まず28日、日本時間未明、日経新聞が同日の日銀金融政策決定会合に関するリーク記事を出します。
日銀は28日に開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正案を議論する。長期金利の操作の上限は0.5%のまま据え置くものの、市場動向に応じて0.5%を一定程度超えることも容認する案が浮上している。
「0.5%を一定程度容認する案が浮上」というのは極めて具体的な報道。
このリーク記事を受け、ドル円は141.09円から一気に139.00円割れまで急落します。マーケットがこの日経の報道にビビッドに反応するのは当然です。
ちょうど一週間前の21日に、「日銀は現時点でYCC副作用に対応の緊急性乏しいと認識-関係者への取材」というBloombergの記事をきっかけに、マーケットは一時141.96円まで買い進めていたからです。
それが日銀当日の日本時間2時という時間帯に、YCCに関して全く逆のリーク記事が日系の新聞社から報道されたため、短期のヘッジファンドが慌ててpositoin(ポジション)を整理にかかるのはしかたのないところ。
そして世界中が緊張感を持って迎えた日銀金融政策決定会合の結果は、YCCの実質的撤廃。結果を受け、ドル円相場は一時138.07円まで急落しています。
ただ為替と相違し、株式市場は別な動きをしています。28日の日経平均は一時32,037円まで急落していますが、終値は32,759円と持ち直しています。欧米市場の日経平均先物は続伸し、33000円台まで回復しています。
日銀金融政策決定会合の結果受けて、株、為替は違う動きをしていますが、どちらが正しいのか?
YCCの実質的撤廃にも関わらず日銀の巧妙な発表により日本株は急反発。
初動ミスリードし円高に推移した為替も遅ればせながら、ユーロ円も反発へ。
日銀後の金利の動き
ではまず、日銀後の金利の動きをみてみましょう。
今回の日銀の発表を受け、10年債利回りは確かに上昇しましたが、28日のマーケットは0.568%で引けています。
昨年12月に黒田東彦前総裁のもと実施した政策修正の時は、「長期金利の変動上限を0.25%から0.5%に引き上げ」と発表すると、即座にマーケットは0.5%の上限突破をもくろむ債券売りを誘発した時と大きく異なっています。
日銀の発表
ここで、今回の日銀の発表をもう一度確認してみましょう。
「長期金利の誘導目標はゼロ%程度のままで、マイナス0.5%からプラス0.5%までの変動を許容する幅も保つ。ただし、その範囲を「メド」の扱いにしてある程度の上昇を容認し、代わりに新たに厳格な上限値として1.0%を据えた。
日経
はっきりと上限を1.00%にするという発表であれば、マーケットは一気に1.00%まで債券を売り込めたのですが、「変動幅の範囲を「メド」の扱いにしてある程度の上昇を容認しているとはいいつつも、変動幅はマイナス0.5%からプラス0.5%までと変わらず」ではマーケットは債券売りをしかけにくい。
結果、10年債利回りが急騰しないため、日本株も回復。モメンタムに流されやすい為替だけはロンドン市場で再び138円台後半まで値を下げましたが、金利や日本株の動きに連れ、反発。
結局28日のNY市場は、ドル円も141.15円レベルで引けています。
日銀はYCCを実質的撤廃に近い発表をしたにも関わらず、発表の内容が巧妙であり、日本株は急落するどころか33,000円台にまで反発しています。
結果、今回の日銀の措置はなかなかお見事と言わざるを得ません。しかも前述のように21日には、「日銀は動かずというリーク記事」を出させ、欧米短期筋に債券売りを仕掛ける隙を与えなかったことも、よく考えてるなあと思った次第。
これを受け、今週の日本株は上値を追う展開でしょうか?
遅ればせながら、為替市場も円安トライでしょうが、ドル円は当面137~142円をcoreにして、当面135~145円というレンジをなかなかブレイクできない相場環境が続くのでないかと想定しています。
個人的な注目はドル円より、引き続きスイス円を筆頭としたクロス円。
ただ先週のEURCHFは0.9500をブレイクできずに反発しているため今週の注目はユーロ円でしょうか?
日銀発表後、ユーロ円は一気に151.42円まで急落し、マーケットのユーロロングがはけた後、28日のNY市場は155.42円で引けており、サポートを確認した形。
ユーロ円は再び165円を目指して、上値を探る展開ではないかと考えています。
週超えは、日経先物のcall optionのlong(ロング)のみ。
西原宏一のシンプルトレードの一部を抜粋してお届けしています。
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