米国のインフレは新たな局面に
市場の1年期待インフレ率は1.3%に低下するが、消費者物価は6月の3.0%を底に上向く
米金融市場は、FRBの積極的な引き締め姿勢を受けて、米国のインフレが早期に抑制されると固く信じているようだ。
債券市場において、名目利回りから物価連動債利回りを差し引いて計算される、期待インフレ率(ブレーク・イーブン・インデックス)は、低い水準にとどまっている。
同数値は、10年が2.2%、2年が1.9%、1年が1.3%となっている。とくに、1年の期待インフレ率は7月に入って急低下し、月初の1.8%から1.3%へと0.5%ポイント低下した。
これは1年後のインフレ率(今年7月から来年7月までの物価上昇率)が、1.3%になると債券市場が予想しているということになる。
確かに、消費者物価統計をみると、エネルギー、食品を含めた消費者物価の前年比上昇率は昨年6月の9.1%をピークに低下傾向となり、4月4.9%、5月4.0%、6月3.0%と月1ポイントのペースで急速に鈍化している。
この調子で低下していけば、来年7月には1.3%になってもおかしくないとみているのかもしれない。だが、エネルギー、食品を除くコア消費者物価前年比は6月も4.8%と高止まっている。
確かに、消費者物価全体の前年比上昇率は3.0%と低下しているが、これは全体の約7%を占めるエネルギーが前年比16.7%下落したためだ。
エネルギーの消費者物価全体に対する押し下げ寄与度は6月時点で約1.1%ポイントだったことになる。
ガソリン価格は昨年6月の5.15ドル/ガロンから12月に3.46ドルに下落したが、その後はじり高で推移しており、今年6月は3.82ドルになった。6月のガソリン価格の前年比下落率は26%だった。
仮に、7月以降も6月並みの3.82ドルの水準で推移すれば、前年比下落率は8月20%、9月8%、10月4%と徐々に縮小していく。
エネルギー全体でも同様に計算すると、エネルギーの下落率は6月の16.7%から7月12.5%、8月9.0%、10月7.4%と徐々に縮小していく。
そして、その消費者物価全体に対する押し下げ寄与度は6月の1.1%ポイントから、7月0.9%ポイント、8月0.6%ポイント、9月0.5%ポイントと低下していく。
エネルギー、食品を含む消費者物価の前年比が昨年6月以降、低下傾向を辿っているのはエネルギー価格の大幅な変動による部分が大きい。
そしてエネルギー価格の前年比下落幅は7月以降縮小していくと見込まれるため、消費者物価の前年比上昇率がこれまでの調子で鈍化していくことはない。
コア物価上昇率の動きに変化がなく、ガソリンなどエネルギー価格が現状並みの横這いだと仮定すれば、9月にかけて、エネルギーの寄与度がマイナス1.1%ポイントからマイナス0.6%ポイントに縮小する。
そのため、消費者物価前年比は、現在の3.0%から、3.6%程度に上昇していくとみるのが自然だ。
しかも、ガソリン価格は昨年12月を底にじり高で推移しており、エネルギー価格は横ばいではなく、上向きで推移するとみてもいいだろう。
このため、エネルギーの消費者物価前年比に対する寄与度は現在マイナスだが、今秋以降はプラスに転じていくだろう。
消費者物価の前年比は6月の3.0%を底に上向いていくと予想される。
米国民のインフレ期待は高まり、賃金・物価上昇の悪循環でインフレは高止まる可能性
インフレ沈静化への楽観的な期待が高まっているが、インフレを巡る状況は新段階に入ったとみるべきだ。
パンデミックによるサプライ網の混乱、ロシアによるウクライナ侵攻による資源価格高騰などがもたらした一時的な物価上昇は一段落した。
しかし、 ・・・
2023/07/18の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。