年末に向けて円高へUターンか
幻想と焦りによる浮遊市況
正直言って、FRBのフォワードルッキング(先行きの金融政策展望)は当てにならないし、彼ら自身も展望はあくまでも現状の延長線をベースにしているだけだ。
七変化も当たり前という印象なり。無理もない。
やはりコロナ禍・ウクライナ戦争を背後にしたコストインフレとサプライチェーンの分断、そして人々の価値観の変化、米中経済関係の悪化などが、さまざまな経済指標の推移に異変を与えてしまっている。
市場参加者、関係者も同様。展望が定かでないだけに大勢に「右へ倣え」しかない。
そういうときこそ実はアッと言う間に足元を掬われるもので、気を付けなければならない。長期リターンを得るために真に重要なのは、進行方向を正しく捉えることだ。
市場がすでに織り込んでいるのは一段の金利上昇ではなく、鈍化してもかなり粘着性がある(執拗な)インフレ、より高い水準でより長く維持されている金利、そして持続的に成長する経済だ。
株価は上昇し、米国債利回りは従来高いとされてきた水準でおおむね安定し、ジャンク債(低格付け債)のリスクプレミアム(米国債に対する上乗せ利回り)も、3月上旬の3銀行破綻直後の跳ね上がり分をほぼ戻している。
ドル円相場では金利の拡大が維持され、且つ日銀の金融緩和姿勢継続の読みから、3月下旬の129円台から143円台へとほぼ一本調子の円安が続いている。
確かに米経済は悪化するどころか、改善している証拠が数多くある。
アトランタ地区連銀が算出する「GDPナウ」によると、4-6月期の経済成長率は2%近い(1-3月期は1.3%)とみられ、エコノミストが4月初めに予想した若干の成長鈍化を大きく上回る。
ミシガン大学が発表した6月の消費者信頼感指数(速報値)は前月より上昇し、その一方でインフレ期待は低下している。金利に極めて敏感な新築住宅市場さえ、回復の兆しを見せている。
問題は、様子見していた人々は直近の株式市場反発による最適のタイミングをのがしたのか、そしてこの動きは度を超していないのか、ということである。
大きく動いたのは間違いない。株価は昨年10月の安値から20%余り上げている。ジャンク債と米国債との利回り差は、新型コロナウィルス流行前の2019年の平均に迫るまで戻している。
S&P500種指数の配当利回り(配当金を株価で割ったもの)の、米国債利回りに対する上乗せ幅も急速に縮小している。
実際、FOMO(Fear of missing out=乗り遅れることへの不安)をかきたてられた投資家が、慌てて株式市場に戻り、人工知能(AI)への賭けの一部を、ばかげた水準に押し上げている兆候はある。
繰り返し高騰する「賭博」銘柄が再び買われており、5月初め以降、テスラ株は61%高、ゲームストップ株は32%高、プラグパワー株は20%高となっている。
強気シナリオを支える別の根拠は、巨大企業7~8社のAI事業に端を発する株価上昇が、市場全体に波及し、今年1~5月のS&P500種指数を下支えしたことだ。
小型株で構成されるラッセル2000指数とS&P500の均等加重指数(IT大型株の影響は最小限)は、いずれも今月これまで巨大IT株を上回るパフォーマンスを見せている。
株から遠ざかっていた投資家が、経済の進む方向の変化を見逃したことに気づけば、市場に復帰する人はさらに増えるはずだ。弱気シナリオのFOMOは、決して長続きさせず、経済の復活は見かけよりはるかに確実性が薄いというものだ。
だからといって弱気派は他の誰もが見逃した何かを見つけたわけではない。エコノミストが今年、景気後退を予測する際に指摘した経済を巡る懸念の多くが、まだ残っているだけのことだ。
遅効性がある金利の影響は必ず現れる。米経済が打撃を受けるのにどれほど時間を要するかは前述したように、これまでにない複雑でインパクトの強い、しかも、どれもこれも収束していない要因を引きづっているだけに極めて難しい。
ただ、最もトラブルの起きやすい分野で債務不履行(デフォルト)が増加し始めている。特に顕著なのは、クレジットカード負債や自動車ローン、商業用不動産の一部、変動金利のローンを抱える不振企業などだ。
今のところデフォルトや支払い延滞はコロナ前の標準レベルに戻ったに過ぎない。だが、より高金利の負債が増えれば、不良債権がはるかに高い水準で発生するリスクがある。
コロナ禍で積み上がった貯蓄(政府・自治体からの手厚い支援金4.5兆ドル)としての現金は、ほぼ尽き果てた。デフォルトが増える最も有力な理由はここにある。
コロナ禍を凌ぐ支援金で生計を立ててきた人々は、いよいよこの先、消費を減らさざるを得まい。
だからドル円はUターンを始める
ドル円は143円台(6月26日)にある。筆者の想定(130円方向)とは真逆の動きに等しい。
6月FOMCで7月以降の再利上げ(年末まで2回)が示唆された一方、日銀の植田新体制が緩和政策の維持を主張したことが決定的な流れをつくった。
海外中銀がタカ派姿勢を想定よりも長期にわたって維持しているにもかかわらず、市場のボラティリティは低い安定、世界的に株価も堅調と、違和感そのものだが、少なくとも足下ではまだ円が売られやすい環境と言える。
しかし、・・・
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2023/06/27の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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