半導体関連株のつれ高は根拠なし!?
生成AI向け半導体需要増加でエヌビディアの5~7月が大幅増収見込みに
株式市場でAIへの楽観的な期待が高まり、半導体関連株などを中心に株価が高騰した。
米フィラデルフィア半導体株価指数は昨年10月を底に上昇していたが、5月24日の米エヌビディアの決算発表をきっかけに、5月24日から6月14日までの短期間で同株価指数はさらに2割程度急騰した。
当のエヌビディア株は昨年10月の112ドルを底に、5月24日までに305ドルまで上昇していたが、その後、6月20日にかけ438ドルへと急騰した。
エヌビディアの株価収益率は200倍と今後の利益急増を織り込んだ水準になっている。エヌビディア株の動きが半導体株全体を牽引したことは間違いない。
AIの利用が広がれば、エヌビディアが5月24日の決算発表で示したような、AI向けの半導体需要急増が、半導体市場全体に広がるというシナリオだ。
AIの利用によって、多くの既存業務の労働生産性を高め、供給面から経済成長を押し上げる効果も見込まれ、需要・供給両面からの経済成長が見込まれるというわけだ。
一見もっともらしい見方だが、腑に落ちない点もある。エヌビディアの決算内容を今一度確認してみよう。
エヌビディアの決算内容
23年2〜4月期決算
純利益:20.4億ドル(前年同期比26%増)
売上高:71.9億ドル(同13%減)
画像や文章などさまざまなコンテンツを生成可能な、生成AI向けのGPUの売上が増加し、AI向け半導体を含むデータセンター部門の売上高は同14%増の42.8億ドルだった。
一方、ゲーム向けのGPU(グラフィック・プロセッシング・ユニット、画像処理半導体)が減少し、これまで主力だったゲーム部門の売上高は38%減の22.4億ドルだった。
市場にとってサプライズだったのは、続く翌5〜7月期の売上高見込みが110億ドル前後と発表されたことだ。前年同期の67億ドルに比べると、金額で43億ドル増、率にして64%増の大幅増収となる。
エヌビディアの売上は昨年5~7月期以来、前年比減少傾向を辿ったが、この日に発表された売上見込みが実現すれば、5四半期ぶりの増加、しかも大幅な増加となる。
GPUとは?
1993年創業の同社は、1999年に自社で発明したGPUに強みを持っており、生成AIの開発などに必要とされる高性能のGPUは、その多くが同社製とされる。
GPUとは、Graphics Processing Unitの略であり、画像描写に必要とされる計算処理を担う半導体チップのことだ。単純計算に特化し、高速な画像処理を得意とする。
これに対して、パソコンの頭脳として使われるCPU(Central Processing Unit、中央処理演算装置)は汎用的な処理が得意とする。
GPUは、搭載されているコア(処理装置)の数が数千個と非常に多いが、CPUは多くても数十個だ。そのため、GPUはCPUに比べて、大量のデータを高速で同時に処理することができる。
また、GPUはデータ量が大きい画像や3Dデータ、映像などでも、より速く、よりきれいに映すことが可能となる。
結果として、GPUは、AIに大量のデータを学習させるディープラーニング(深層学習)との親和性も高い。
生成AI向け半導体需要増加で恩恵を受けるのはGPU市場を独占するエヌビデイアだけ
新興企業だったオープンAIによるチャットGPTの開発を契機に、米IT大手を中心に生成AIの開発競争が激化し始めている。
GPUの市場規模は2022年時点で400億ドル程度といわれ、世界の半導体販売額(22年時点で5,740億ドル)の7%程度だが、AI向けを中心にGPUの需要は急増しており、今後もその需要増加が見込まれる。
エヌビディアはGPUに特化し、GPU市場の8割程度のシェアを占め、同市場をほぼ独占していると言っていい。残りの2割がインテル、AMDでそれぞれシェアが1割程度だ。
米IT大手の中には、自社でのGPUの開発を進める企業も出てきているが、自社開発には時間やコストがかかることもあって、GPU市場をエヌビディアが独占する状況は変わりそうにない。
エヌビディア自身も生産能力を高めようとしているが、供給不足解消には時間がかかりそうだ。
生成AI向けの半導体需要で恩恵を受けるのは、GPU市場をほぼ独占するエヌビディアだけだと言っていい。
だとすれば、ほとんど恩恵を受けないはずの他の半導体関連株が
つれ高になっているというのはやや理解に苦しむ。
日本の半導体市場はなお調整局面が続いている
図1はWSTS(世界半導体市場統計)でみた世界の半導体販売額をみたものだ。
これをみる限り、・・・
2023/06/25の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。