先行指標通りに米国景気が悪化しない理由
1~3月の米国景気、インフレは再加速へ
1~3月の米国の実質GDPは年率1.1%と前期の同2.6%から表面上、鈍化した。しかし、在庫投資を除いた最終需要は1.1%から3.4%へと逆に加速した。
昨年10~12月の生産活動は比較的活発だったが、個人消費が年率1.1%と鈍化するなど最終需要の落ち込みにより、売れ残り在庫が増加し、また内需低迷で輸入が減少した。
2.6%成長のうち、在庫投資の増加が1.5%ポイント、輸入の減少が0.9%ポイントとなっており、この2つが成長の押し上げ要因になっていた。1~3月は逆のことが起きた。個人消費(年率3.7%増)を中心に最終需要は順調に増加した。
だが、10~12月に増えた売れ残り在庫が整理され、在庫が減少してそれが成長率を2.3%ポイント押し下げた。内需の盛り上がりによる輸入の増加も成長率を0.4%ポイント押し上げた。
昨年10~12月に悪化した米国景気が1~3月になって再加速したことは明らかだ。景気の再加速に伴って、賃金・インフレ指標も再加速している。
雇用コスト指数上昇率は10~12月の前期比1.1%から1~3月に同1.2%と加速した。コア消費支出デフレータの前年比上昇率は10~12月の前年比4.4%から1~3月に同4.9%とやはり加速した。
先行指数の動きから言えば、米国景気はすでに後退局面入りしていても不思議でない
景気先行指数や長短金利差など景気後退を示唆する先行指標が相次いでいるのに、その通りに米国景気が悪化せず、むしろ過熱しているというのが今の米国の経済状態だ。
景気先行指数は2021年12月をピークにが下落傾向が続いており、ピークからの下落期間は15か月、ピークからの下落率は8.0%になった。
過去、8回の景気後退局面における、景気先行指数ピークから景気後退局面入りまでにかかった時間は平均11か月だった(表参照)。
最も長かったのはリーマンショック時の景気後退局面前の21か月だった。今回は、その時に次ぐ2番目の長さだ。
また、景気後退局面入りに至るまでの景気先行指数の下落率は平均4.2%だった。過去、最も大幅だったのも、やはりリーマンショック時の景気後退局面前の7.8%だった。
今回は、それを上回り、過去最大の下落率になっている。
このように、景気先行指数の下落の長さ、下落幅の大きさから言えば、米国景気はすでに景気後退局面入りしていても不思議ではない。にもかかわらず、景気が拡大を続けているのはなぜか。
製造業景気の悪化はサービス業景気の盛り上がりを示唆する
第1に、景気先行指数には製造業労働時間、製造業消費財・資本財受注など、製造業に関する指標が多く含まれているが、これらの指標の悪化が、必ずしも景気全体の悪化を示していない。
製造業関連の指標が景気先行指数に多く含まれているのは、製造業の業況が経済活動全体の動きに敏感に反映するためだ。そのため、製造業関連指標の悪化は先行きの景気悪化を示唆することになる。
ところが、今回、製造業の業況悪化には、違う意味が含まれている。
すなわち、2021年頃にかけて、ロックダウンなどにいよるコロナ特需で、サービス需要が減少し、その分、財(モノ)への需要が高まった。モノへの需要増は製造業の業況を押し上げ、サービスへの需要減はサービス業の業況を悪化させた。
しかし、その後、経済再開に伴い、その動きが反転した。反動によるモノへの需要減は製造業の業況を悪化させ、逆に、サービスへの需要増はサービス業の業況を押し上げている。
つまり、製造業の業況悪化は、将来的な景気悪化を示唆するものではなく、サービス支出の増加によるサービス業の業況改善を示唆している。
製造業の景気悪化を景気後退を示唆する指標とみることはできない。
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本記事は2023/05/01の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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