原油市場動向
OPECプラスが意表を突く減産を決定
OPECとロシアなど非加盟の主要産油国で構成するOPECプラスは、4月2⽇、5月から日量100万バレルを上回る減産を実施すると発表した。
ここまでOPECプラスは市場の安定を維持するために供給を据え置くと約束していたが、今回の協調減産は意表を突くものだった。
今年の原油需給見通しについては、不需要期の1~3月こそ、需給は緩和気味で推移するが、年半ば以降の需給は逼迫すると見込まれていた。
ゼロコロナ政策が解除され、経済再開により旅行需要などの増加が見込まれる中国を中心に、ジェット燃料などの需要が増加するというのが、その理由だ。
今回のOPECプラスの決定は、需給逼迫度合いを高めるものとなる。
今回、サウジアラビアは日量50万バレルの減産を表明し、クウェート(減産幅は13万バレル)やUAE(同14万バレル)、アルジェリア(同5万バレル)なども、具体的に減産を発表した。
また、ロシアは3~6月に実施する50万バレルの減産を年末まで続ける方針を示した。これにより、市場に供給される原油は、5月から、まず日量約110万バレル少なくなる。
その後、7月以降はロシアの減産終了で、原油生産は幾分増えるはずだったが、
今回の決定により、生産は増えないことになり、ロシアの減産延長が50万バレルの追加的な需給逼迫要因になる。
結局、7月以降、計160万バレルの需給逼迫要因が追加されることになった。
原油需要見通しは先進国が伸び悩むが、新興国は中国中心に大幅増加
4月のIEA”Oil Market Report”によれば、世界の原油需要は22年の日量9,990万バレルから23年には1億190万バレルと、前年比200万バレルの大幅増加となる見通しだ。
うち先進国は22年の4,590万バレルから23年は4,620万バレルと、増加幅はわずか30万バレルにとどまる。
先進国の需要見通しは、3か月前の1月の同レポート見通しより、22年は10万バレル、23年は20万バレル引き下げられている。
おそらくは、金利上昇に伴い欧米の景気後退観測が強まっていることを前提にしたものだろう。
半面、新興・途上国の需要は22年の5,400万バレルから、23年は5,570万バレルと170万バレル増加する見通しだ。
なかでも、中国の需要は22年1,500万バレルから、23年は1,620万バレルと120万バレル増加する見通しだ。中国の需要は3か月前の1月レポートでは、22年については現在と同じ1,500万バレルだったが、23年は1,590万バレルだった。
この3か月間で23年の中国の需要見通しは30万バレル引き上げられた。中国を含めた新興・途上国の需要見通しは、同様に40万バレル引き上げられた。
つまり、世界の原油需要見通しについて一言で表現すれば、「金利上昇による欧米の景気悪化により先進国の需要は伸び悩むが、それとは対照的に、新興・途上国の需要は先進国の景気悪化にもかかわらず、大幅に増加する」ということになるだろう。
昨年後半の原油値下がりと再エネ振興でシェールオイルの生産増加テンポは鈍化
一方、原油生産についてはどうか。
IEAはシェールオイルなど先進国の原油生産が堅調に増加するとみている。
先進国の原油生産は22年の2,930万バレルから、23年は3,050万バレルと120万バレル増加するという予想だ。だが、120万バレルでは、原油需要の増加分200万バレルを補えない。
IEAは3か月前の1月時点では、先進国の生産は22年2,940万バレル、23年3,070万バレルとみていた。それがこの3か月で22年は10万バレル、23年20万バレルの下方修正となった。
生産増加テンポが鈍化しているのは、昨年後半以降、原油価格が下落したことが主因と考えられる。
実際、原油価格下落に対応して、米国原油生産者のリグカウント数の増勢は足元で幾分頭打ちになっている(図1参照)。
原油価格の値下がりのほか、昨年8月に成立したインフレ抑制法案など、バイデン政権が再生可能エネルギーへの投資を加速する意向を強めていることも、原油関連投資を消極化させている可能性がある。
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本記事は2023/04/24の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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