ゾルタンポズサー【15】米ドルは下落 金と仮想通貨の上昇は既に開始!
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https://real-int.jp/articles/1932/
短期では金利要因で米ドル高だが、中期では米ドル離れで予想以上に早く下落?ビットコインは金と同様に米ドル離れで上昇!
このように中長期的にはBRICS+の取引では徐々に米ドルが使用されなくなり、外貨準備としての米国国債は購入されません。これは歴史をひっくり返す米ドル安要因であり、相当大きな下落となるでしょう。
しかし、ポズサー氏も3月の動画で語っていましたがこれは中期の話であり、短期では金利が重要だそうです。まだ利上げが続く欧州通貨と米ドルが強く、利上げが終了したオセアニア通貨とカナダドルが弱かったのはこのせいでしょう。
ロイターにあるように3月のCPIは+5%と先月の+6%、予想の+5.2%よりも低かったですが、4月の米ミシガン大消費者信頼感指数の1年後予想期待インフレ率は前月の+3.6%から+4.6%へと急上昇、5月の0.25%の利上げ(政策金利は5~5.25%)は確実となりました。
ちなみにFEDが最重要視しているもう一つのインフレ指標である3月のコアPCEは+5.2%でした。現在の米国のインフレ率は約5%ということになります。
利上げ後は金利からインフレ率を引く実質金利はほぼ0となります。ポズサー氏の意見は実質金利がプラスとなれば利下げですから、目標の2%には程遠いですが、利上げは一旦中止となるというのは納得できますよね?
利上げが止まると、米ドルが上昇する理由はなくなります。次回のFOMC は5月3日のGW中であり、ドルロングが溜まっていれば米ドルの材料出尽くしの下落もありうるでしょう。
しかし、夏〜秋の株価の下落予想も出てきており、もし起きるとリスクオフ=米ドル、スイスフラン、円高となるので、米ドルを本格的にショートできるのは暴落後でしょうか? もっとも「有事のドル高」が起きるかはわかりません。円とスイスフランのみが強い可能性もあります。
反面、ロイターによると3月の欧州のコアCPIは7.5%と高く、英国ではコアCPIは+6.2%と変わらずCPIは+10.1%と予想の+9.8%をうわまわりました。利上げは終わらず、欧州通貨はまだ上昇が続きそうです。
市場の年末のFF金利先物は約4%であり、市場はFEDの3月22日発表の12月の金利予想平均の5.1%に反して利下げを見込んでいます。FEDによると2024年12月予想が4.1%であり、ウォール街とFED=ポズサー氏の予想には大きな乖離があるとご理解頂けるでしょう。
理論上は金融不安での貸し渋りは需要を落とし、インフレを緩和させるでしょう。これが恐らく市場の利下げ予想の根拠だと思われます。現在5%のインフレ率が4%まで下がれば実質金利が0となるのは4~4.25%となるので、1%の利下げが年内にあっても不思議ではありません。
ポズサー氏やFEDの主張するようにインフレは粘着性がありリセッションとは関係なく5%程度に留まるのか、リセッションが起きれば市場予想のように4%に落ちるのか、ここが焦点となってくるのでしょう。
さらに、予想以上のスピードで米ドル離れが進んでいるので米ドルの下落は突然起きるのかもしれません。ブルームバーグの記事によると、外貨準備における米ドルのシェアは2022年には7%ほど減少し、58%のようです。
2023年は上記のようなBRICS+国の動きを見ると、50%を割っても不思議ではありません。基幹通貨とは呼べなくなるのではないでしょうか?
そして、個人的に調べていて不思議だったなぜ仮想通貨が上昇しているのかも、ようやく理解できました。ビットコインのチャートを見ると昨年12月30日を底に、3月10日を2番底に年初来80%も上昇しています。
昨年12月半ばには習近平首相が湾岸諸国会議に出席し、湾岸諸国と中国との蜜月関係が確立しました。これで米国とのデカップリングを決断したのか、12月30日の中国外務省の発表にあるように、ウクライナ侵攻以来距離をおいていたロシアのプーチン大統領とビデオで会談を実施しました。
3月10日は北京で、中国の仲介により、イランとサウジの国交回復が実現しています。そしてSVBが破綻、翌週のクレディ・スイスの吸収合併へと繋がっていきました。
本来ならば後者の理由で、リスクオフで真っ先に売られるのが仮想通貨です。しかし、上昇したのは前者によりペトロ人民元の実現が確実化し、米ドル離れが起きたからなのでしょう。外貨準備で米国国債の代替となっている金も昨年11月3日を底に、3月8日を2番底に、上昇し史上最高値に近づいています。
このように2023年はポズサー氏の予想通りに、世界が二極化する激動の時代を迎えつつあります。仮想通貨はFTXの破綻もあり、リスクオフの環境下では、昨年同様に下落するはずでした。まさに松島社長の記事「金融危機をプロが予測できない理由」にあるように、プロでも間違える新しい時代に突入したのでしょう。
https://real-int.jp/articles/2064/
しかし仮想通貨はマネーロンダリングの温床、ロシア制裁の抜け穴などとかねてから指摘されています。FEDの規制などが突然実施される可能性もあり、やはりハイリスク・ハイリターンである事に変わりはないのではないでしょうか?
そして新しい時代には過去の経験則は通じません。従来の経済常識ならば市場予想のようにリセッションとなれば、中央銀行は経済活性化のために利下げを実施します。
しかし、ポズサー氏の主張のようにG7+オーストラリアとNZの西側諸国がBRICS+と対抗するための4つの政策、再軍備、再サプライチェーン構築、資源の在庫積み上げ、コストの高いESGを継続するならば、リセッションが起きたとしてもインフレが続き、利下げは起きません。結果はL字型の暴落となります。
ESGはEUがロイターにあるように2035年までのガソリン車禁止の撤廃を発表したように、進展は遅くなるでしょう。英国や欧州の中流階級は生活危機に陥っており、気候変動への関心は薄れているからです。
そしてウクライナ支援は欧州の問題なので東欧や北欧の要求で続けていますが、仏独西の首脳は中国詣でを続けており、台湾問題は関係ないというマクロン大統領の失言に繋がったのでしょう。タヒチやニューカレドニアなど、フランス領は太平洋にもあるのにも関わらずです!再軍備の速度も鈍る可能性があります。
しかしBRICS+諸国に新規に投資することは分断が明白となる中では困難であり、資源を握られているので、サプライチェーンの自国回帰と資源在庫の積み上げは続くでしょう。
年末のFF金利がFEDの主張のように5%にとどまるのか、市場予想の4%に下落するのか、判断はお任せいたします。いずれにしろ早ければ夏以降に、遅くとも来年には西原宏一さんの予測どおりに米ドルは大きく下落方向にすすむのではないでしょうか?そして松島社長の予想通り、金は上昇を続けていくのでしょう。
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