金融不安のなかでのFOMC会合の決定について
金融不安の影響度合いは不透明であるため、今はインフレ抑制に注力
金融不安が高まるなかでFEDがどういった金融政策対応をするかが注目された。
マーケットでは、金融不安を和らげるためFEDは金融政策を緩和するのではないかという期待が多かったようだが、期待外れに終わった感がある。
FF金利は0.25%引き上げられ、4.75~5.0%となった。FOMC声明の文言は幾分変わった。
今回の声明では、「 米国の銀行システムは健全で強靱だ。最近の動向は家計と企業の信用状況を引き締め、経済活動や雇用、インフレに影響を及ぼす公算が大きい。こうした影響の度合いは不確かだ。委員会は引き続き、インフレリスクに細心の注意を払っている 」との文言が追加された。
つまり、金融不安は景気や物価にも影響する可能性はあるが、影響度合いは不確かであるため、インフレ抑制に注力する、という姿勢が示された。
ただ、利上げ姿勢はさほど強いものにはならなかった。
前回2月会合の声明では、「 インフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するため 」の方策として、”ongoing increases in the target range will be appropriate”(「継続的な利上げが適切だろう」)と、強い調子で利上げ継続の構えをみせていた。
これに対し、今回の声明では、「 インフレ率を時間とともに2%に戻すべく十分に抑制的な金融政策スタンスを実現するため 」に、”some additional policy firming may be appropriate”(「いくらかの追加引き締めが適切となるかもしれない」)と、引き締め姿勢がやや和らぐかのような表現になった。
一方、FOMCメンバーのFF金利の見通しについては、シリコンバレー銀行の問題が起きる前までは、上方修正されるという見方だった。
最近の経済指標から景気や物価の加速がみてとれたため、ターミナルレート(最終着地点)が6%近くに引き上げるのではないかという見方もあった。
パウエルFRB議長も、3月7日の定例議会証言で、以下のように述べていた。
「 最新の経済データは予想より強く、金利の最終到達水準が従来想定を上回る可能性が高いことを示唆している 」
「 経済データが全体として、より速い引き締めを正当化するのであれば、利上げペースを加速させる用意があるだろう 」
しかし、今回の見通し(中央値)は、23年末5.125%、24年末4.25%、25年末3.125%、長期2.5%となり、前回12月見通しの23年末5.125%、24年末4.125%、25年末3.125%、長期2.5%とほとんど同じだった。
結局、FEDの金融政策姿勢は、
- インフレ抑制のために、利上げなどにより金融政策での引き締めは続ける
- 金融安定化のためには、流動性供給などで適時、対応は行うが、金融政策を
緩和することまではしない
というものだと考えられる。
これは、基本的には、0.5%の利上げを決めた3月16日のECB理事会での決定と同様だ。
ECBの決定について、ラガルド総裁は、3月20日、欧州議会で説明し、以下のように述べた。
「 物価安定と金融安定は別々の政策手段で対応可能 」
「 ECBは(物価安定のため)金利を活用している 」
「 金融の安定に関しては必要な手段は全て持っている。これらの手段は必要に応じて活用される 」
ただし、金融不安の動きが金融引き締め効果を持つようになる場合、金融引き締めをやめることも否定しなかった。
金融不安の動きが金融引き締め効果を持つ、というのは、例えば、信用リスクの拡大による社債利回りの上昇や銀行の貸し渋りによって、引き締め効果を持つということだろう。
ラガルド総裁は、以下のように述べた。
「 金融安定を巡る緊張が需要に影響し、そうでなければ金融政策で対応していた課題の一部を実際に片付けてしまう可能性はある 」
「 現時点でその影響は不確かだが、次回の経済予測を打ち出す際、さらに次回の分析や金融政策の動きを決定する際には考慮に入れなければならないだろう 」
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2023/03/23の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
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