米国景気動向
非製造業ISM指数も50割れとなったがサービス業中心に景気は拡大基調
米国景気は先行きへの懸念を強めながらも拡大基調を続けている。
牽引役はサービス業だ。実質個人消費は11月に前年比2.0%増加した。うち消費全体の約3分の1を占めるモノへの消費は前年比0.7%減少したが、残りの3分の2を占めるサービス支出は同3.5%増加している。
サービス支出の伸びは前月比でみても0.3%程度と緩やかに増加しており、腰折れしている様子はない。
パンデミック初期の2020~21年頃にはロックダウンでサービス消費が抑制され、その分、モノへの消費が急増した。
しかし、経済再開により抑えられていたサービス支出が増加している。
ISM景気指数をみると、12月の景況感は悪化した。製造業は48.4と前月の49.0から低下した。景気判断の分かれ目である50を割り込むのは2か月連続だ。
現在同様、過去の景気後退入り局面でも、景気の動きに敏感な製造業が全体の景気に先行して落ち込むのが普通だ。
ISM製造業景気指数で言えば、46程度への低下がちょうど景気全体のリセッションに相当した。
48~49程度の数値は、今のところ、製造業景気の低下も緩やかであり、決定的なものにはなっていないことを示す。
やや意外だったのは非製造業指数も12月に49.6と50を下回って前月の56.5から急低下したことだ。
だが、非製造業指数の大幅低下は、厳しい寒波の影響で、年末時期の移動が混乱したことや広範な地域で停電が起きたことが影響した可能性が大きい。
後述する雇用関連指標の動きからみても、同指数の50割れは寒波などによる一時的なものと考えるのが自然だろう。
労働力人口の伸び悩みから労働需給は逼迫しやすい状況
12月の非農業雇用者数は前月比22.3万人増加し、10月26.3万人増、11月25.6万人増から若干増加ペースは鈍化したが、堅調な増加が続いている。
事業所調査ベースの非農業雇用者数に対し、昨年3月以降、ほとんど増加していなかった家計調査ベースの就業者数も12月は前月比71.7万人増加し、これが失業率低下(11月3.7%→12月3.5%)につながった。
非労働力人口は2020年後半以降、1億人程度でほとんど横這いのままだ(図1参照)。
コロナショックに伴う高齢者の早期退職が非労働力人口を増加させたとされるが、経済が再開されても早期退職した高齢者は労働市場に戻ってきていない。
こうした非労働力人口の高止まりに加え、移民を制限したトランプ前大統領同様、労働組合をバックに持つ民主党バイデン大統領も移民流入には否定的であり、労働力人口の伸びは緩やかだ。
昨年1年間での労働力人口増加幅は256万人(月平均21.3万人)、昨年後半の同増加幅は96万人(月平均16万人)と、より緩やかになった。
就業者あるいは雇用者数の増加幅が、12月雇用増並みの月22万人程度でも、失業者は減少し、労働需給は逼迫することになる。
労働力人口(=労働供給)の制約により、労働需給は今も逼迫しやすい状況にある。ただ、雇用(=労働需要)の先行指標をみると、まちまちで、必ずしも安泰ではない。
毎週発表される失業保険新規申請件数(4週移動平均)は9月末の207万人から12月初めに230万人まで増加していたが、直近12月末は214万人に減少した。
これは労働者にとって働き口が十分にあることを示している。また、求人件数は昨年11月時点で1,046万件とピークだった昨年3月の1,186件から減少したが、過去の景気のピーク時に比べて極めて高水準だ。
例えば、リーマンショック前のピーク時である2007年3月の求人件数は496万件だった。半面、不安な要素としては、雇用の先行指標である人材派遣業の雇用が減少している点がある。
人材派遣業の雇用は12月に3.5万人減と昨年8月以降減少に転じ、減少幅が徐々に拡大している。
企業の雇用活動が幾分後ろ向きになりだしていることを示す。
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2023/01/10の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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