米国のリセッション入り回避は難しい
米経済のリセッション入りが近づいている
10月の米雇用統計によれば非農業雇用者数は前月比26.1万人増と前月の31.5万人増から増加幅が鈍化した。
7~9月の月平均雇用増加ペースは38.1万人であり、26.1万人増という雇用増加幅は雇用増加幅が着実に鈍化していることを示す。
ただ、事前予想コンセンサス(ブルームバーグ調べ)は19万人程度であり、予想以上に雇用は堅調だったとも言われる。
一方、今回の雇用統計のなかで、家計調査による就業者数は前月比32.8万人「減少」した。非農業雇用者数の元になっている事業所調査に比べ、家計調査はサンプルが少なく、統計の信頼性は低いが、減少となったことは無視できない。
このために、家計調査によって計算される失業率は前月の3.5%から3.7%に上昇した。
失業率 = 失業者 ÷ 労働力人口 =( 労働力人口-就業者)÷ 労働力人口、
であり、就業者が減少すれば、失業率は上昇する。
確かに、家計調査はサンプルが少なく、統計の信頼性は低いが、就業者数の減少はサンプル数の少なさによる一時的な振れによるものではない。
就業者数は今年3月頃まで比較的順調に増加してきたが、その後はほとんど横ばい状態であり、10月は3月に比べ15万人しか増加していない(図1参照)。
定義上、「就業者」には、企業が労働者を雇う「雇用者」のほか、自営業も含まれる。そのため、仮に、最近の就業者の伸び悩みが自営業者の減少傾向を示している可能性もある。
だとすれば、今回の就業者数の減少は、単なる統計としての信頼性の低さを反映した一時的な振れによるものではなく、労働市場環境の悪化が自営業の減少という形で表れていると考えた方がいいだろう。
10月のISM製造業景気指数は50.2と前月の50.9から低下し、景気の上昇・下降の分かれ目である50に近づいた。
同指数の先行指標である新規受注指数は、49.2と50を下回っている。製造業景気はほとんと横ばいで、下向きに転じつつあるとみていい。
ドル高などの影響で製造業景気はすでに下向きつつあり、サービス業の良好さを背景に堅調だった労働市場にも陰りがみえ始めている。
これらの指標を総合すると、米国景気全体として、上向きのモメンタムが徐々に衰えつつあり、リセッション入りが近づいていると考えられる。
このところ、個別企業のレイオフのニュースも目立つ。雇用動向を見極めるため、毎週木曜日に発表される失業保険新規申請件数のデータに注目する必要がある。
労働需給逼迫を背景に賃金上昇ペースは高水準
一方、就業者数が伸び悩むなかにあっても、労働市場の需給逼迫は続いている。コロナウイルスの感染拡大を機に早期退職者が増加したことにより、非労働力人口が高止まったままだ。
そのために労働力人口は伸び悩んでいる。就業者数はほとんど横ばいだが、労働力人口が伸び悩み、つまり、労働供給が不足している。
このため、失業率が低水準にとどまり、労働需給が逼迫し続けている。
今回の雇用統計では、10月の全労働者の時間当たり賃金は前月比0.4%増加、前年比では4.7%増加した。
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2022/11/07の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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