尹錫悦政権で日韓関係は改善できるか
筆者は意識的に隣国の韓国との関係について言及を避けてきた。言うまでもなく、どの政権も執拗な反日的言行を重ね、およそ二国間外交や日米韓の安全保障体制には適合しない状況を続けてきたからである。
言及するだけ時間の無駄である。今も、この方針に何ら変化はないし、3月から発足した尹錫悦( ユン・ソギョル )政権も例外ではない。
何を伝えて来ようが、与党が議会少数派で、大統領自身の発足後の支持率が早くも30%以下となれば、スタート直後からの「レームダック政権」に等しい。
大統領政権としての“外交の権限”の範中でしかない。あたかもの「親日」的言行なんぞ、どうでもいいのである。日韓両国の歴史的認識問題の深刻さに対する理解のギャップは埋め難い。
ただ、尹氏個人としては久々のまともなリベラリストであり、この人物の言行から韓国政局の動向を読み取れる可能性があるだけに、その視点から分析しておく必要はあろう。
関係改善への動きは明らか
今年5月10日、韓国で尹政権が発足して以降、日本政府の対韓政策にも柔軟性が出てきたとされる。
それは新時代の幕開けではなく、ズタズタになった両国関係の修復の糸口が見え始めた程度ではあるが、尹政権側の一貫した積極的言行自体は評価されるべきだろう。
それほどまでに尹氏を突き動かす原動力は何か。その限界はあるのか。
日本政府側が主に国内政治との関係から、尹政権の積極姿勢に十分には呼応しにくい中、尹氏の意欲がどこまで継続するかが、今後の日韓関係に大きな影響力を及ぼす可能性をまだ払拭されていないのは確かだ。
大統領選前から日本との関係改善に意欲をみせてきた尹氏は、当選直後の3月11日、お祝いを伝えてきた岸田首相と電話で話した。
尹氏は北朝鮮問題を念頭に「韓日米の協力をさらに強化していきたい」と語ったほか、自ら歴史問題を切り出し、「懸案を合理的に、相互の利益に合致するように解決していくことが重要」と、強調した。
この電話協議自体も、前もっての双方の入念な準備を経て実現した。
大統領選終盤、韓国メディアが発する「尹氏圧勝」との事前予想が飛び交う中、五分の戦いになると踏んでいた日本政府は、尹氏が勝利した場合、どの程度まで祝意を示すべきかを慎重に検討した。
尹氏周辺の外交問題を担う諮問グループからは、首相による直接の祝意伝達を望むとの声が伝わっており、日本政府としてまずこの要望に応えた格好となった。
5月の就任式の演説で尹氏は、日本に言及しなかったものの、その日の午後には岸田首相の特使として派遣された林外相と会談し、首相からの親書を受け取った。
一部の韓国メディアなどでは、就任式の際の岸田首相訪韓を含めた期待も出たが、現役外相の訪韓は尹氏側として「満額回答」といって良い結末だった。
林外相訪韓は4月後半には内々に決まっていた。大統領選を制した尹氏陣営はまず、米国に向け、特使団にあたる政策協議団を送った。訪米団はいきなり望外の成果を得た。
東京で5月下旬に開かれる対面式の日米韓印(クアッド)首脳会合に先立ち、バイデン大統領が韓国を訪れることがほぼ確実になったのだ。
政権発足直後の米大統領訪韓という朗報に、尹氏側は沸き立った。これに対し、日本への政策協議団派遣は、中国の関係もあり、当初は就任後を想定していた。
しかし、日本政府側は新政権発足前、しかも4月後半からは黄金週間の連休が控えていただけに、それ以前の協議団の来日を強く要請し、尹氏側も急遽、日本への派遣を決めた。
両国間の最大の懸案である徴用工問題の解決方法など、具体的な協議にはならなかったが、就任式への林外相の出席を含め、双方が大きな手応えを感じるスタートとなった。
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(この記事は 2022年10月23日に書かれたものです)