日本のエネルギー危機 EUより深刻化する恐れも
ロシアによるウクライナ侵攻を機に日欧のエネルギー政策は
安全保障重視にシフト
ロシアのウクライナ侵攻を受け、世界のエネルギー情勢は大きく動揺した。
エネルギー価格は、ロシアのウクライナ侵攻前から、以下の事象により上昇していた。
- 各国の脱炭素政策が供給削減先行で需要削減を後回しにしたこと
- 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた大規模な金融緩和による
投機マネーが商品市場に流れ込んだこと
ロシアによるウクライナ侵攻後は、
- 西側諸国のロシアに対する経済制裁への報復措置として、ロシアが原油や
天然ガスの輸出を削減する
との見方から一段と上昇した。
その後、原油については、ロシア産原油が中国やインドに輸出され、世界的な原油需給が思ったほど逼迫しなかったことから値下がりした。
しかし、パイプラインを通じた相対取引が多い天然ガスについては、ロシアから欧州への天然ガス供給が削減され、価格上昇が続いている。
ロシアは西側諸国の経済制裁に対して、設備故障などの技術的理由、料金未払いなどの契約不履行、環境対策などの理由で、パイプラインを通じた天然ガスの供給を止めている。
ロシアのさじ加減で、エネルギー供給が途絶するリスクに対応して、EUはロシアからのエネルギー依存脱却を急いでいる。
EUのエネルギー政策は気候変動対策を最重要視するものだったが、エネルギー安全保障へ軸足が移っているようにみえる。
エネルギーが自給できている米国は別として、エネルギー自給率が低い日本のエネルギー政策もEU同様、エネルギーの安定確保に軸足が移っているようにみえる。
ただ、EUと日本のエネルギー政策はかなり違う。
EUの目標は省エネと再エネ重視 ロシア依存からの脱却を図るもの
EUは、ロシア依存脱却のため、8月にロシアからの石炭輸入を止め、年内にパイプライン供給を除く石油の輸入も止める予定だ。
天然ガスについては、今年中に3分の2減らし、27年に脱ロシア達成を目指す。EUは5月にロシア産エネルギーへの依存から脱却するための「リパワーEU」計画の詳細を発表した。
同計画の柱は以下の3点だ。
- エネルギーの効率化、省エネを推進…短期的にはガソリン価格高騰に対応した自発的な公共交通機関の利用などによる省エネ、中長期的にはエネルギー効率の良い機器や暖房システム導入促進などによる省エネを推進する
- エネルギー供給の多角化…米国からのLNG輸入を22年の150億立メートルから2030年に少なくとも500億立方メートルとし、ロシア産天然ガスに対する需要の3分の1弱を米国産LNGに置き換える
- 再生可能エネルギーへの移行の加速…太陽光発電とグリーン水素を重視し、2030年までに再生可能エネルギー比率目標を、従来の「少なくとも40%」から「少なくとも45%」に引き上げる
EUの基本的な政策目標は、省エネによりエネルギー需要を削減し、同時に、再生可能エネルギー重視を変えることによって、ロシア依存からの脱却を図ろうとするものだ。
ただ、エネルギー供給の多角化がこの冬の需要期に間に合わないことも懸念され、目先はエネルギーの安定的確保が最重要課題となっている。
このため、ドイツは4月に、2035年までに再エネによる発電100%を目指すエネルギー法案を発表していたが、5月には、この方針を転換し、脱炭素化の理念に逆行するはずの石炭火力発電を時限的に強化する方針を打ち出した。
さらに、年内に停止を予定していた原発3基のうち2基を2023年4月まで稼働できるよう準備を始めた。
これらは、あくまでも短期の対策だ。
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2022/10/03の「イーグルフライ」掲示板より抜粋しています。
続きを読みたい方は、「イーグルフライ」よりご覧ください。
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