中東産油国の最近の動向
9月5日、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなど主要非加盟国で構成される「OPECプラス」は、オンラインの閣僚級会合を開催し、10月の原油生産計画を協議した。その結果、日量10万バレルの減産での合意が発表された。
OPECプラスは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックからの世界経済の回復に合わせ、2021年から22年9月まで、小規模ながら毎月増産を行ってきた。
市場関係者の多くは、今回の会合では現状維持(9月で日量4395万5000バレル)になると分析していたが、予想に反し、OPECプラスは減産へと政策転換した。
その主な要因としては、以下の3つなどが挙げられる。
(1)世界的な景気後退
(2)米国のドライブシーズンの終了
(3)中国での新型コロナ感染症対策としてのロックダウンの実施
また、イラン核合意復帰協議の合意が近いとの見方が強まり、イラン産原油が市場に出回ることへの警戒感も働いたと考えられる。
こうしたOPECプラスの減産は、国際エネルギー機関(IAEA)の8月の月報から予想可能だったともいえる。
それは、同月報で、
(1)7~9月の原油需給は日量90万バレルの供給過剰であること
(2)ロシアの原油生産の低下が日量100万バレルとの予想に反し、
31万バレルにとどまっていること
(3)イランの原油生産余力が日量130万バレルあること
が指摘されていたからである。
以下では、原油・天然ガスの需給バランスに影響を与える要素のうち、中東産油国の最近の動向について検討する。そのことが、今後のエネルギー価格の動きを知るひとつの手掛かりになればと考える。
エネルギー調達の難しさ
9月5日のOPECプラスの減産合意の発表を受け、ホワイトハウスのジャンピール報道官は、バイデン政権が原油価格の低下に向けて、米国の石油生産を年末までに日量100万バレル以上増加させるとして、エネルギー価格の引き下げのために「必要なあらゆる手段を講じる」と述べた。
バイデン米大統領は今年7月、サウジを訪問し、自身が人権問題で厳しく批判したムハンマド皇太子と会い原油増産を要請した。
サウジは、米国の要請に対し、日量1300万バレルを超える生産はしないとの考えを示したと報じられている(なお、2022年6月の生産量は、日量約1064万バレル)。
その後、8月3日にはOPECプラス閣僚級会合で9月の原油生産量が決定されたが、日量10万バレルという小幅増にとどまった。
そして、冒頭に記したように、9月5日、OPECプラスは10月の減産を発表した。したがって、石油・天然ガスの生産余力がある国に増産を期待することは難しいといえる。
OPECプラスは、原油市場の価格決定の主導権を維持するために、構成国の団結を強調してきた。それは、構成国の中核であるロシア、サウジ、UAEの外交関係の良好さを意味している。
欧米諸国は、エネルギー危機への対応として生産量の引き上げに重点を置いているが、エネルギーの調達はロシア・ウクライナ戦争をめぐり政治問題化している。
中東の主要産油国がロシアとの良好な関係を維持しているなか、NATO諸国が武力によりロシア・ウクライナ戦争の解決を求める限り、エネルギー危機から脱することは難しいといえるだろう。
欧米諸国は、当面の危機の打開策として、サウジやUAEへの増産要請以外に、
(1)新たな油田やガス田の掘削
(2)新たなパイプラインの敷設
(3)原子力発電の再稼働
(4)液化天然ガス(LNG)ターミナルの増設
(5)風力発電機の設置
などを検討しているが、経済的合理性をめぐる議論や国内での意見対立という難問を抱えている。
また、この危機から国民生活を守るには緊急性が求められるが、上記(1)から(5)の実現には時間を要するため、「今ある危機」に対応することはできない。
では、中東地域のその他のエネルギー資源供給国に期待することは可能だろうか。
・・・
メルマガ&掲示板「イーグルフライ」より一部抜粋しています。
全文を読みたい方はイーグルフライをご覧ください。
(この記事は 2022年09月09日に書かれたものです)
関連記事
https://real-int.jp/articles/1769/
https://real-int.jp/articles/1752/
https://real-int.jp/articles/1718/